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狩人  作者: Houston
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第四章

第四章

清羅が起きたときはもう夜明けだった。目をこすり昨日の出来事を思い出そうとベットに座り目をつぶる。脳の回転速度が増すにつれて記憶が少しづつ戻ってくる。そうして思い出さなきゃ良かったと、後悔する。もう一度寝ようかな、そう思って二度寝しようとしたときドンドンと階段を駆け上るあわただしい足音が聞こえた。そして、清羅のドアまで来たとき「ドン!」と言う鈍い衝突音が聞こえた。数秒の沈黙の後、「とんとん」と静かなノックが聞こえた。清羅はベットから起きロックをはずした。

「朝からやかましいぞ、リュウ」清羅は額を押さえているリュウに冷たく言い放った。昨日こいつに心を乱した情けない自分の姿が見られたと思うと自然と声が冷たくなってしまう。だが、機嫌の悪い子供のような行動をとっている自分に気が付き、そこで彼はリュウにあたり散らすのはやめようと思った。                   

「清羅。予言が出た」

「何だって!」

眠気が吹っ飛ぶ。そしてリュウの顔は死人もように血の気がなく、雪のごとく白いことに気が付く。

「いったい何を見たんだ!」

「清羅、人に質問をするときは自分が先に訪ねられた質問を答えるのが礼儀ってもんだぜ。」

リュウの声はいつものように落ち着いているように聞こえたが、少し震えていた。いったい何を見たのだろうかと清羅は少しいぶかった。

「んで、昨日のことだが...」

「もう、分かった。それに昨日謝っただろ。うん、俺考えたんだ。もし俺が逆の立場だとどう感じるかってさ。マジで、どんなに俺が悪かった分かったから。それに...」

リュウが片手を挙げて清羅のながったらい謝罪をさえぎった。         

「お前が反省したのなら俺はいいんだ。それより、もう一つ俺が知りたいのはどうやって今回の獲物の正確な居場所が分かったんだ。」

もっともな質問である。清羅は心の中でそう思った。

「リュウ、今回の「狩」の前、俺が暴力団とちょっとした喧嘩をしていたのを覚えているか。」

清羅はふと自分の言ったと「ちょっとの喧嘩」とやらは、人を気絶させるほど凄まじいものなのか疑問に感じたが、そういう小さいことは気にせず会話を進めることだけに集中することにした。

「俺は、この地域の暴力団なら多かれ少なかれ全国レベルの犯罪者と何かのつながりがあると踏んだんだ。そして記憶をスキャンしてみたらどんぴしゃり、俺の思ったとおり奴は谷光の知り合いで住んでいる場所を知っていた。」

息が苦しくなってきたので、清羅はそこでまず一息ついた。

「んで、他の不審に思った点ってのは?」

「お前はまだ俺の質問に答えていない!」

リュウの声に苛立ちがこもる。びっくりしている清羅をまっすぐに見つめる青い目には炎がめらめらと燃えている。

「清羅、お前は昨日番号を追う必要さえないのだからと言ったな。あれはどういう意味だ!」

「お前だって知っているだろ!俺がターゲットを決めるとそのものの声が遠く離れていても聞こえることぐらい。」

「そこなんだ!清羅。そこなんだよ。お前のその追尾能力の条件はその人間の声を知らなければならない。俺が集めた谷についての情報には音声の情報はない。これをどう説明する。」

重々しい沈黙が流れる。最初に口を開きその沈黙を破ったのは清羅だった。

「俺は、俺は谷を知っている、いや、知っていた。」

「やはり、お前は谷を知っていたんだな。」

リュウは別に驚いたような様子もなく独り言のように呟いた。追尾能力を使わない限り谷の居場所をああも早くつかむことはできない。そして追尾能力を谷に対して使う場合彼の声を知らなければならない。その場合、彼は谷の声の記録または谷との接触のいずれかが必要である。声の記録などどこを探しても、違うコンピューターにハッキングさえしてもリュウは見つけることができなかった。ならば残る方法は一つ、谷と清羅の過去の接触である。そして、過去の接触を持つということは、知り合いを「狩った」こととなる。

「なあ、清羅。今回の狩、お前いつもみたいに賞金目当てだったか。」

清羅がビクッとする。そしてかすれた声でリュウにすがった。

「いや、分かってくれ。俺は別に興味本意じゃ…」

「お前は、自分を知りたかったんだろ。忘れるな。自分がわからないのはお前だけではないんだ。」

清羅はしばらくの間黙っていてリュウも黙っていた。清羅は自分から破らなければいけない沈黙を知っていたし、またリュウも自分から破ってはならない沈黙というものを知っていた。そして、清羅はリュウの助け無しでも沈黙を破るほどの力があることをリュウは知っていた。長いため息を吐いてから清羅は重い口を開いた。

「俺は知り合いを「狩る」ことで自分の心のおく深くに封印されてある感情がよみがえるかと思ったんだ。ほら、谷は俺がまだ普通のときに知り合った奴だから。あいつを狩ることでその報酬に昔の俺が手にはいるかと思ったんだ。馬鹿な話だろ。笑いたかったら笑ってもいいんだぜ。どうせ、あの惨劇で受けた傷は癒されるわけないんだ!あの惨劇が俺たちから奪ったものが還ってくるわけないんだ!どうせ…」

「もういい。その話はやめてくれ。」

リュウが清羅をさえぎった。リュウは清羅の苦しみを痛いほど理解できた。それでも、彼はあの事件のことは思い出したくない。あれを思うといまだに背筋がぞっとする。清羅は頭を抱えてぶつぶつ何か呪文のようなものを呟いていた。そして、それが幾分かそれがおさまるといつもの落ち着いた声で言った。

「それじゃあ...次はリュウが俺の質問に答える番だ。」

「そうか、んじゃあ話すぜ。後悔するなよ。そして真剣に聞けよ。」

リュウの声は震えていた。一体全体リュウをこれほどまでに怖がらせるなんて、どんな予言が出たのだろう?


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