第3話 空飛ぶ(物理)飛行体Kの回想3
クトゥルフTRPGって面白いよね(唐突)
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・・・てください!
ふぁぁ、よく寝たわ。昨日夜更かし酷かったもんな。
てか、なんか体揺らされて声掛けられてる?
・・・やべ、先生にバレた!?
「あ、ね、ねてましぇんねてましぇん。ちゃぁんとのーととってましたよぉ・・・。」
なんか噛んでしまったが仕方ない。上半身を起こすと、ぼやけた視界に先生が・・・
「はぁ、やっと起きてくれましたか。こんな明るい場所であれだけ何度も揺すって起きないって、あなたなにか特別な訓練でも受けてたんですか?」
・・・目の焦点が定まると、そこに立っていたのは先生ではなく、ましてや自分がいるのは教室ですらなかった。
なぜか、真っ白な空間の中で俺の前に美少女が立っていた。
「・・・う゛ぇ?」
変な声が出たのも仕方ない。
更に状況が一切理解出来ていないのも仕方がない。
まだ寝ぼけた眼と頭を必死に再起動させて、辺りを観察する。
今自分がいる空間は、白一色であったため上も横も果ては見えず、どこからが来る光に対して映るはずの自分の影すら存在しなかった。
それだけでも異常と言えるのだが、一番異常なのは目の前の美少女だ。
銀髪碧眼で顔はキリッとした顔立ちの中にどこか幼さを残していた。
スタイルは言わずもがなボンでキュッなボンである。
身長は160後半くらいだろうか、俺より少し低い。
「はぁ、一事はどうなることかと思いましたよ。このままあなたをあちらに送ったらどうなっていたか・・・」
「え、えっとぉ・・・すいません、イマイチというか全くもって状況が理解出来ていないのですが・・・」
そう言いながらいつの間にか地べたに寝ていた体を起こすと、少女は俺に対して説明を始めた。
「あ、そうですよね。あまりあなたをここに長居させることもできませんので、手短に話しましょう河南 優雅さん。私の名はミューリ、先程の方たちにも話したとおり、あなた方が《神》と呼ぶ存在です。」
・・・う゛ぇ?(2回目)
「そして、あなたにはこれからあなた方が《異世界》と呼んでいる場所に転移してもらいます。」
・・・・・・・う゛ェェエエ工ッ!?(3回目)
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「・・・と、こんな感じです。理解できましたか?」
「ま、まぁ、だいたいは・・・」
いや、正直理解が追いついていないところは多々ある。
いま、ミューリさんから聞いた話をまとめると、こうだ。
まず、自分たち2-1は異世界に召喚された。
この時点で意味がわからないのだが、その異世界には「魔法」というものがあり、方法や手段を多くの時間をかけて精密に編み出せば、《対価》を支払う代わりにどんな超常現象でも引き起こせるという。
魔法なんて眉唾物だと思ったが、その場でミューリさんが手から炎を出したためすぐに信じた。
トリックかとも思ったが、この空間自体が光があるのに影がないというある種、物理現象に反しているものなので信じざるを得なかった。
そして、自分達が召喚されるのは《シェルシャイト》と呼ばれる惑星だそうで、その世界には多くの知的生命体が住んでいるとのこと。
そして、俺達が召喚された理由は《魔王を倒して欲しい》という要求のためだ。
今、シェルシャイトにいる知的生命体の中で最も知能が高く繁栄している種族は3種あり、《魔族》と《人間族》、《亜人族》だそうだ。
そのうちの魔族と人間族が自分たちの生存圏を大きくするための、種としての生存競争に勝つために度々戦争を繰り返しているらしい。
だが、魔族には《魔王》と呼ばれる強大な力を持つ生命体がおり、今の魔族全てを支配している。
魔王の力は絶対で、ただの人間では何万人集まろうと手も足も出ない程だという。
その魔王の対抗策として言い伝えられていたのが《異世界からの勇者召喚》だ。
ずっと昔の人間族の大預言者が『後の世に巨悪現れる兆しあり。巨悪に対するは異界の勇者のみ。その者ら神より賜いし力使いて巨悪を退けん』と言ったそうだ。
ちなみに、この世界で言う予言とは地球で言われているようなインチキなものではなく魔法と同じで、術式を編み出し、世界に介入して未来を見るという《未来視》であるため、最優の預言者と呼ばれた大預言者の言葉はほぼ絶対であり、その時から来たる日に備えて過去の文献から何から全て読み漁り今に漕ぎ着けたらしい。
・・・なんだが、ベタなライトノベルを読んでいるようだと思ったが、事実なので受け入れる他ない。
・・・でも、自分の世界のことなんだから自分達で何とかしてくれよ・・・
理不尽と言えば理不尽である。
いきなり他人の事情で呼び出され、知性がある、ほぼ人間と変わらない生物を殺せ、つまり《大量殺人をしろ》と言われているようなものなのだから。
言い方を変えれば《兵器》となんら変わらない。
全くこちらの事情を理解していない上で、出せる報酬は自分の世界に帰れるという今までの当たり前のことであり、それすらも確定的に保障されるわけではない。
一体クラスメイトは何をどう解釈して嬉嬉として異世界に渡ったのだろうか...。
ちなみに、3番目の《亜人族》であるが、彼らは定住する種がほとんどおらず、大半が遊牧民か魔族、人間族のどちらかと共存関係を保っているため、戦争をするほど土地に困ってはいない。
そして、ここからが重要なのだが・・・いや、今までの話も確かに重要ではあったのだが、これが今の俺にとっては一番重要な話になる。
それは、異世界に行く者に与える能力だ。
今から行く異世界シェルシャイトには先程言った通り《魔法》があり、魔族や魔獣なんてのもいるらしい。
そいつらは人間に対して敵対的な行動を取るのでそれに対処するために《スキル》や《魔法》というものが必要になってくる。
しかし、純日本産高校生にそんな力は無いし、たとえ力があった所で温室育ちの自分たちでは直ぐに死んでしまう。
そこで、神様(ミューリ曰くただの案内人)が召喚される前に自分たちの元へ介入してシェルシャイトに渡っても生き延びられるような力を授けるらしい。
生半可な力では、恐怖や焦り、悲痛から来る判断力の低下によってすぐ死んでしまうためなるべく圧倒的な力を与えて、その世界に馴染みやすくしているそうだ。
で、早速俺もその能力をもらおうと思っていたのだが・・・
「・・・は?・・残ってない?」
「はい、本当に申し訳ないです・・・」
・・・ここで問題が発生した。
俺たちの戦いはこれからだ!
*パパになるのは十数話目位から
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