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第2話 空飛ぶ(物理)飛行体Kの回想2




───────────────────


程なくして、担任の教師が教室に入ってきた。

その後、事務的連絡などをしてホームルームが終わり、またいつもの日常が幕を開けた。


1時間目の準備をしているとこちらに近づいてくる影がひとつ。


「おいおい優雅くぅ~ん、まーた遅刻でぃすか?」


・・・毎度毎度うざったい声で迫ってくるなぁこいつは・・・


「うぜぇ・・・んなねちねちした声出すなよ寺本。てか、まだ遅刻じゃねぇよ。」


振り返ると、そこには見慣れた顔の男子高校生がいた。寺本 詩音(てらもとしおん)という名のこいつは、俺の寂しい高校生活の中で退屈を紛らわしてくれる数少ない友達の1人だ。




・・・まぁ数少ないと言ってもこいつともう1人しかいないが・・・・・・



こいつは俺が入学する時に他県から越してきたせいで、友達と呼べる人が一人もおらずクラスに馴染むことが出来ずに孤立してしまった。


よくある話だ。


・・・まぁ、元からこの地で暮らしていながら幼馴染の1人以外友達がいない俺が言えたことじゃないが・・・


で、こいつとの馴れ初めだが簡単に言えば、2年に上がった時に教室に置きっぱにしてた俺のスマホを同じクラスになったこいつが持ってきてくれた時に、スマホに付いていたあるアニメのキャラクターのストラップを見て「お前もこれ好きなのか?」と聞いてきたので「あぁ」と自然と口から返したらそこから話が発展していき、こういう関係になっていた。


1年の頃の寺本はクラスになれなかったためか、それはもう最低限の会話しかしていなかったが、クラスでもこんな感じで明るく俺と話しているのを見てこいつに興味を持つ奴が増えていった。


多分、こいつは中学の時から元々明るい性格だったのだろう。

だが、知らない人間にいきなり馴れ馴れしく話しかけるのはなかなか難しい事だったから、そんな性格に蓋をしていただけなのだ。

それからあいつも元の性格に戻り始めて、今では変にいじられることもいじめられることも無く友達も多く持っている。


・・・まぁ羨ましい限りですなぁ・・・


「へっ、今日も寂しく1人で登校してきたんだろ?言ってくれりゃ俺も一緒に朝登校してやるのに。」


「野郎の顔を朝っぱらから見るくらいなら、俺は音楽聞きながら参考書読んどくわ」


「ひでぇ、俺別に野郎顔じゃねぇだろ?てかそれ参考書の内容頭に入ってないだろ。」


まぁ、こいつも言うようにこいつは自他共に認める童顔である。しかもこの年の男子にしては声も高いし、名前も女と言っても違和感無いし・・・


・・・ワンチャン女装すれば美少女って言ってもバレないんじゃないだろうか?


「でも中身がこれじゃぁなぁ・・・」


「おい、オマイはなんの話しをしてるんだ。」


それからまた1時間目の準備を再開すると、また隣から寺本が話しかけてきた。


「なぁなぁ、朝のあれ、聞いたのか?」

「ん?あぁ、Akashaさんの曲か?聞いた聞いた、いやぁ~あれはえがったぞ。」

ちなみに、寺本もAkashaさんのファンだ。俺がおすすめした。


「くぅ~うらやましっ!てか、お前それ聞いてたせいで遅れたんだろ!?・・・いや、まぁそれじゃねぇけどな。」


え?違うの?


「は?だったら何の話だよ?」


「照宮さん、今日遅刻だってよ。珍しいこともあるもんだよな、毎日朝いちばんに来てるのに。・・・お、噂をすれば。」


あぁ、テルか。

確かに、テルが遅刻するなんて珍しいな。


そんなふうに頭で思っていると、


・・・タッタッタッ!

ガラガラッ!!


そんな風に音を立てながら件の女子が入ってきた。


「・・・はぁ・・・はぁ・・お、おはよう!みんな遅刻しちゃってゴメンね?」


太陽の光を受け、まるで天然のブラックダイヤのように不思議な透明度を持った黒い長髪を胸部についた二つの大きく整った形の丘と共に揺らしながら教室内に入ってくる女子生徒。


こちらを向いた顔には2つの大きく柔らかな目つきの黒目に整った鼻、ぷっくりとした桜色の唇がついており、その姿はある種の侵しがたい神聖さすら伴っていた。

こいつがアイドルにでもなった日には、芸能界が震撼するんじゃないだろうか?と俺も毎回思っているこの女子は、


この学校のマドンナこと照宮 (てるみや)奏音(かのん)だ。


・・・そして、俺の《幼馴染》である・・・


「今日どうしたのー?」「なんかあったのー?」と彼女を心配するクラスのみんなに挨拶をしながら自分の席に荷物を置いた彼女はこちらの席に向かって来る。


「おはようゆー君!」

そして、こちらに向けて挨拶をしてきた。

「お、おはようテル・・」

ちなみに、テルと言うのは俺が昔から呼んでいる彼女のあだ名だ。


俺はクラスのやつらにあまりよく思われてないので学校でも随一の美少女であり人気者の彼女をこんな風に馴れ馴れしく呼びたくはないのだが、苗字で呼んだ瞬間彼女にみっちり怒られ、学校でもあだ名で呼ぶことを強要されている。


「ねぇねぇ、今日のAkashaさんの曲聞いたよね?どうだった!?」


ちなみにAkashaさんのことを紹介した幼馴染とはこいつのことである。


「あ、あぁ今日の曲もとってもいい曲だったぞ、また帰って聞くのが楽しみだ・・・」


俺が思ったことをそのまま言うと、彼女はその顔一面に見惚れるような笑顔が花開いた。


「そ、そっか!うん、そうだよね!私も帰って聞くのが楽しみだなぁ・・あ、一時間目の準備しなきゃ!」

そう言うと、また自分の席に戻って行った。


彼女が席に戻ると


「いいよなぁ、優は。容姿端麗、成績優秀、美辞麗句書き連ねたような照宮さんと幼馴染であんなに距離が近いなんて、死ねばいいのに。」


照宮さんが来た瞬間、何故か俺の後ろに隠れていた寺本が俺の耳元でボソボソとささやく。


「お前なぁ・・・はぁ、言っとくがあんなのいいことの一つもないからな。ほら、窓際見てみ。」


俺は見ないがな。

まぁ、毎度のことだから見なくても分かるけどな。


「チッ!」

・・・ほんと、何であぁも飽きずに毎回俺に舌打ち出来るんだろ?


「うっわ、柴山のやつ、思いっきりこっちみて舌打ちしてるな。・・てかお前、あいつの方見てないのによく分かったな?ありゃ相当恨まれてるぞ、何したんだ?」


丁度寺本が向いた時に舌打ちしたのだろう、顔を顰めながら聞いてきた。


「前からあんまよく思われてなかったんだけどな、テルのやつが学校でもあだ名読みしろって強要してから、更に酷くなったよ。全く、俺は好き好んで目ぇ付けられたくないっての。」


俺とテルが仲良くしているのはあまり他の連中にとっては面白くないらしい。

まぁ、それはあいつがモテるからというのもあるが、俺自身があまりできた生徒じゃないから、俺がテルの足を引っ張っているという風に映るらしい。

まぁ、成績優秀者に話しかけて()()()()()()()()それを無下にして適当な受け答えをしているというふうに見えれば、「お前何様のつもり?」となるのは必然であろう。


俺としては別にあいつといることに関してはどうでもいいし、Akashaさんを紹介してくれたのには感謝しているが、こちらが辟易するくらいのマシンガントークをかましてくるときもあるのでいい迷惑である。


・・・まぁ、逆にいじめやいじりが無いのはこいつがいてくれるおかげだが。

たぶん、こいつがいなかったら1年の頃からこいつに色々言われてたために今頃俺に対するいじめやいじりが多発してただろう。

その点についても感謝はしている。


・・・だが別に、幼馴染だからっていつまでも俺にくっつかなくたって友達なんていくらでも作れるだろ。


まぁ、もうあちらを見なくても俺に対して嫌悪感むき出しな態度を取っていることをわかる程度にはもう慣れていた。



「やっぱりお前ら幼馴染なんだから恋愛感情なんかもあったりすんの?」


横から寺本が変なことを聞いてくる。


「は?あるわけないだろ、なんだその短絡的な考え。」


確かに、昔はあったかもしれないが、それは周りにテル以外の女の子がいなかったからだ。

今では手間のかかる妹みたいなものにしか見えない。

いい加減幼馴染離れして欲しい。


俺は別に、目立ったり特別になりたい訳では無いのだ。




「そうか、じゃあ・・・」




キーンコーンカーンコーン───



「お?1時間目始まるぞ?はよ席つけよー」


「お、おぅ・・・」


ん?あいつ何言おうとしてたんだろ。


────────────────────────


1時間目の英語の授業が始まる。


開始から20分経たずで俺はだんだんと眠くなってきた。


・・・・昨日、あのラジオのこと考えてて眠れなかったせいか?



ふぁぁ・・・眠いなぁ。


徐々に前傾姿勢になっていく体と、断続的に襲ってくる睡魔に抗うつもりも気力もなく、俺は意識を落とした。



・・・前傾姿勢になったため見えた床に映った幾何学的な光を視界の端に収めて・・・


日常終了。


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