第1話 空飛ぶ(物理)飛行体Kの回想1
何番煎じかもわかんない異世界クラス転移ものです。
やっぱりなろうは副題無いとダメだね。
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ヒュゴォォォオオオッッ!!
鼓膜が破れそうになるほどの風切り音が耳に響く。
それもそうだろう、と自分の中で反芻する。
____だって俺は今多分ジェット機と同じかそれ以上の速度で吹っ飛ばされているのだから。
体は縦に横にもみくちゃに回転しながら宙を舞い、その飛距離をグングンと伸ばしていく。
自分のあまりにも悲惨な様子にまたも涙が溢れてくる。
視界は常に回転しており、空の青と眼下に広がる広大な砂漠の薄茶色が交互に目に入ってくる。
「Gyeeeee!!!!」
「Vraaaaaaa!!!!」
・・・そして、その薄茶色の中に今のような現状になった原因の巨大な二つの争っている影も見える。
そのうちの一つは全長百数十メートルはあるだろう超巨大な青色のサソリであり、そいつが少し動くだけで災害級の竜巻がいくつも発生し強固な盾兼強力な攻撃を成している。
・・・ちなみに飛ばされたのはあいつの発生させた竜巻が原因だ。
もう一つの影は、サソリに比べれば見劣りするがそれでも全長数十メートルの巨体を持つ象とモグラを混ぜたような巨大な茶色い生物だ。
そいつは、サソリのように動くたびに何かを発生させているわけではないがサソリが発生させる竜巻やその爪から繰り出される攻撃にびくともしない外皮を持っている。さらに、最も鋭いサソリの尻尾や針による攻撃には耐えられなかったようで見ただけで致命傷とわかる傷を刻まれるも、次の瞬間にはそこにもともと傷など無かったかのように完全にふさがっていた。
飛ばされている時に一瞬見えたはるか上空のの雲がズタズタに引き裂かれていた。
ここは確かに砂漠で、普通に上空を見上げても蒸発する水分が無いため雲など見えるわけもないが、はるか上空にはまばらながらも別の地域から流れてきた雲の欠片が浮いている。
そして、そんな高高度にある雲すらも引き裂かれていることからもこの戦いの激しさが伺える。
二体の巨体が動くだけで地は割れ、空は裂け、轟音が響き、あらゆるものが吹き飛ばされる。
そんな、笑えないほど気持ちが悪く、目を疑うほど奇妙な光景に───
「ぁぁぁあああああああああああああっ!!!ふっざけんなぁぁぁあああ!!ヘルプミーィィィィイ!!!!」
────ただ、情けなく叫び、なんでこんな目に遭うんだッ!俺が一体何をしたんだってんだよォ!?と己の身に降りかかる理不尽に嘆きながら涙を流し、飛ばされることしか出来なかった。
そこでふと気がつく。
あぁ...俺ってこの世界に来てから泣いてばっかりだな...と。
まだここに渡って数時間と経過していないのにたくさんの涙を流した。
気がついた瞬間どこともわからぬ砂漠で一人ぼっちの孤独感を味わいながら何も無いこの状況でどうやって生き残るかの不安とともに流した涙。
『案内人』に渡されたランダムのチートスキルがチートとは名ばかりのゴミスキルで、それら全てが非戦闘用だと知った時の絶望感。
スキルと一緒に出てきたSS級の超一級品の武器だが、人間が一生をかけてもとくことが出来ない封印をかけられているため錆び付いてただただ重いだけの全く使えない文字通りなまくらな鉄の塊である大剣と、たった2%の確率で魔法を無力化してくれるというクソみたいな、藁よりもチクチクした着心地最悪のローブをつけた時の理不尽に対する怒りに流した涙。
そしてそれらの感情を誰にも、何にもぶつけられない無気力感。
なぜ彼がこんな状況に陥っているのか。
状況は、約6時間前に遡る。
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「あつーい夏に、涼しい気分!そんなあなたにクールビズ!」
一昔前の広告用音楽に、無理やり最近のクールビズファッションの宣伝をねじ込んだクソダサいラジオのCMをイヤホンで聞きながら自転車のペダルをこいで国道沿いを走っている。
まぁ、ホントはイヤホンを付けながらの自転車の運転は法律上やっては行けないことなのだが、周りはみんなやってるし警察の人達も見て見ぬふりでわざわざ止めるようなことはしないことがほとんどなのでそこまで気にしてはいない。
さて、そろそろかな?とイヤホンから流れてくる音に意識を集中させる。
『さぁ!本日もやってきました、《エキサイトミュージック》の時間だぁ!!』
「お、きたきた!」
イヤホンから聞こえてきた司会者の声に、外だと言うのに興奮して思わず声を出してしまう。
今聞いているのは《エキサイトミュージック》などというこちらもさっきのクソダサCMに負けず劣らず時代遅れなネーミングのラジオ番組だ。
なにもこんなもの___と言ってはなんだが、この番組をいつも聞いているも言う訳では無い。
というか、イヤホンでラジオを聞くのだってこれが初めてだ。
昨日調べたが、このラジオは一定数のリスナーはいるがそこまで話題に上がるほど有名と言うほどではなく、数あるラジオ番組の中の1つという位置づけだ。
ならばなぜ、今日俺がこんなラジオを聞こうとしているのかと言うと・・・・
『じゃあ最初の1曲目だ。てか、ぶっちゃけ今来てる人のほとんどこれが聞きたくて来たんだろぉ!?時間もねぇから早速どうぞっ!「Akasha」待望の新曲ブライトマーク!!』
そう、俺が最近ハマっている歌手である「Akasha」が、急遽この番組で新曲を発表すると言ったのだ!!
いやぁー、昨日はまじでビビったですよ!
「Akasha」さんは最近話題のYouTubeの歌手で顔出しなし、MVだけの動画を上げている人で、デビュー曲は昨日見た時点で3000万回再生を超えていた。
元々ボーカロイドなどの単調で意味深な曲が好きだったのだが、俺の幼馴染に紹介されたこの「Akasha」さんは意味深な歌詞をボカロ調とJ-POPを足して2で割った位の歌を歌う。それを聞いた瞬間、「あ、好きぃ・・・」と耳が即堕ちしてしまったのだっ・・!!
いつの間にかノリの良いDJの声も聞こえなくなり、前奏が始まっていた。
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「いやー、えがったえがった。」
なんかちょっと田舎のおじいさんっぽいイントネーションになってしまったが、いやーいい曲だった。
曲が終わると同時に駐輪場に着いたのでそのまま学校へと向かう。
駐輪場には自転車はたくさん止まっているが人は1人もいない。
・・・・・ちょっと遅くなってしまったようだ。
学校の下駄箱に着くと「おはよー」というまばらな声が聞こえてきた。
朝のホームルーム2分前というギリギリのラインのため今更下駄箱にいる生徒は少ない。
下駄箱で靴を履き替え、少し憂鬱な気分になりながらも朝聞いた歌を思い出して自分の教室へと足を運ぶ。
────ガラガラ、
教室に着くと、既にみんな席に座って自習をしており空いている席は俺のだけだ。
幸い、俺の席は窓際の一番後ろだ。わざわざみんなの机の合間を縫って変な視線を送られながら進むことは無い。
そのまま、席に座るとみんなと同じように自習を始める・・・フリをして、ノートに今日聞いた曲の歌詞を書き始める。
今日は朝から小テストなんてものは無いし、課題も既に終わっているため真面目に勉強する必要もなく、ただ暇つぶしとばかりに俺はシャープペンシルを進めた。
今度はどんなMVを見せてくれるのだろう。
また、動画がアップロードされたら見よう。と決めながら。
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