83話・非難します!
「姉上の母君は今、表向き地方に静養に行かれていることになっているけど、あれはね陛下の怒りを買って監獄に送られたんだ。もう二度と出ては来れないよ。母上は姉上が真相を知ったら悲しむと思ってかん口令を敷いたのさ」
姉上もその監獄に送られるかどうかは今後の態度によるね。と、カミーレはせせら笑う。それを聞いてパメラ王女は魂が抜けたような顔をしていた。
「さあ、どうする? アーサー。そんな王女が一人殺されたぐらいで僕の気持ちは揺るがないよ。殺したいなら殺せばいい。姉上が死んでも病死扱いされるだけさ。僕ときみ達の立場は違う。よく考えた方がいいよ」
カミーレの言葉に傲慢さが感じらえる。カミーレは、自分は生まれながらの王族で、貴族育ちのきみ達は違うと言ってのけたのだ。自分は特別な身の上だから何でも許されるのだと。それが癪に障った。
今まで素直で可愛いと思っていた存在が、子憎たらしい存在へと変わるのにそう時間はかからなかった。ショックだった。カミーレが心の中では見下しながら、へりくだった態度をとってきたのはこうして自分達を馬鹿にするためだったの?
「カミーレ!」
「ちょうどいい。相手になるよ。アーサー」
カミーレが金虎の姿へと変化した。金虎と黒狼が向かい合う。ぐるるると唸りながら二匹とも一歩も引かなかった。
とんでもないことになってしまったと嘆いていると、それまで黙って様子を窺っていたロリアンからここから非難した方がいいと促がされる。パメラ王女も連れ出し、部屋の外へ出ようとした時だった。
「リズ! どこ行くの?」
「おまえ、リズをどこへ連れ出そうとしている?」
目ざとく金虎のカミーレと、黒狼のアーサーに見つかる。二匹とも互いをけん制しながらこちらに突進してきた。
身の危険を感じると、「危ない、リズ!」と、ロリアンに腕を引かれたと思ったら、その背に乗せられていた。
「……!」
ロリアンも獣化していた。その背中は金色の毛で覆われていて手足が長く、体が引き締まっていた。カミーレや、アーサーとも違う姿で美しい獣だった。
「行くよ。リズ。しっかり捕まっていてっ」
「きゃっ」
いきなり駆け出したロリアンの背に伏せると、美しい獣は風のように駆けだした。




