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獣人辺境伯の心配は尽きない~白耳うさぎは黒狼を翻弄する~  作者: 朝比奈 呈
アーサーの苦労(>_<)
81/107

81話・可哀相なリズ


「か、カミーレ。お願い、アンネリース嬢を解放して」

「姉上?」

「お願いだから……」

「あいつもそう言ってるぞ」



 何があったのか分からないけど、この間まで気が強くわがままだった王女さまが、アーサーと目が合うとびくんと身をすくめ、ブルブル震えだした。



「お願いだから、アーサーに彼女を返してあげて……」 



 涙目になりながら懇願してくる。王女とは仲が良いカミーレのこと。当然、姉の願いを聞くだろうと思ったのに違った。



「嫌だよ。僕はリズが欲しいんだ。アーサーは姉上にあげるって約束しただろう? 駄目じゃないか。ちゃんとアーサーを捕まえておいてくれないと困るよ」



 話が見えてこないわたしの前で、アーサーが怒鳴る。



「カミーレっ。これはおまえが全て企んだことか?」


 企む? 訝るとカミーレと目があった。カミーレは悔しそうに言った。


「そうだよ。全部僕が考えたシナリオだ。姉上はアーサーを諦めきれないようだったから、アーサーの領地に乗り込んでアーサーを誘惑すれば良いと言った。その間にリズをこの館に招いて美味しく頂くつもりだったのに……」



 カミーレの言葉で何となく理解した。自分達はナナホシの好意でここに旅行に来たつもりでいたけれど、実際にはカミーレが全て用意したことだったのだ。どうしてアーサーとパメラ王女が一緒に姿を現わしたのかも分かった気がした。

 カミーレがパメラ王女を唆したのだ。それに素直に応じた王女も王女だけど、そのような尻軽な行動を取ったなら王女には醜聞にしかならない。


 それをカミーレは、あまりにも軽く考えているようで頭痛がしてきた。カミーレはこんなにも愚かしい真似をするだなんて信じたくなかった。



「カミーレ、どうしてそんなことを? 未婚前の女性がそのようなことをしたら、いくら王女さまだって社交界で悪く言われるわ。そしたらパメラ王女には不評にしかならないのよ。下手すれば修道院行きじゃないの」

「姉上は我がまま過ぎて皆に嫌われている。そんなのは今更だよ。それよりもお人よしのリズ。きみはもっと自分の心配をしたら?」

「あなたに言われなくとも……」



 カミーレから距離を取ろうとしたのに、先に腰に腕を回された。



「可哀相なリズ。アーサーとは今日を最後にもう二度と会えなくなるかもね」

「あなたおかしいわ。今までのカミーレはどこ行ったの?」

「きみに受け入れてもらえないと知った時から僕は少しづつ、歪んで行ったのかもね」

「カミーレ、リズを放せ。コイツがどうなってもいいのか?」



 アーサーはロリアンから離れ、パメラ王女のもとへと飛んだ。アーサーに牙を剥かれて「ひぃっ」と、悲鳴を上げる。


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