67話・止めて、カミーレ
「カミーレ。こういうのは困るわ。わたし達はもう幼い頃とは違うのよ。それぞれ立場が違うわ」
「分かってる。でも僕の気持ちはあの頃から変わらない」
幼馴染で済まされる年ではなくなった。カミーレは次期王太子。ゆくゆくは国を背負って立つ国王になる。きっとその頃には彼の隣に相応しい高位貴族のご令嬢、もしくは他国の姫が並び立つことになる。
それをアーサーと二人で支えていくのだと思っていたのだけれど、そんな思いはカミーレには届いていなかったようだ。
「僕は金獅子王の娘なんて知らない。きみがいいんだ」
「わたしはアーサーの許婚よ。あなたの想いには応えられないわ」
「どうして? どうして僕では駄目なの? リズ」
五つ子達は何かを察したのか、わたしとカミーレの間に盾のように立ち塞がった。
「あなたにお姉さまはあげない」
「お姉さまに近付かないで」
「あなたなんて認めない」
「お姉さまはアーサーのものなの」
「お姉さま、帰りましょう」
ブランシュが率先してわたしの腕を引く。この場からさっさと退散した方がいいだろうと馬車に乗り込もうとしたら、カミーレが飛び掛ってきた。
「きゃあっ」
「「「「「お姉さまっ」」」」」
「行かせるものか」
カミーレは獣になった。美しい金色の毛が靡く虎に。わたしに襲いかかり、皆に怒鳴った。
「それ以上、近付くな。リズの喉をかき切るぞ。リズの命を助けたければ彼女から離れろっ」
「止めて。カミーレ。いけない。そんなことをしたらあなたは──」
「きみと一緒になれないのなら意味はない」
金虎の彼は、皆を威嚇しておきながら悲しそうな目で見つめてきた。




