65話・遠慮しなくていいよ
「母上が陛下の元に嫁ぐ時に、持参金の一つとして持ち込んだものの一つなんだ。母にはもう必要ないからって僕が受け継いだんだよ」
「へぇ」
不服そうな顔をする五つ子に対し、カミーレは挑戦的な笑みを浮かべていたが、わたしは気がつかなかった。
「リズ。馬車の移動で疲れただろう? 着替えておいで。食事にしよう」
「ありがとう、カミーレ。でも、なんだか悪いわ。あなたはナナホシさんと約束していたんじゃないの?」
「まあね。あ、でももう別にいいんだ。彼への用は済んだから」
「無理してない? ごめんなさいね。急遽、ナナホシさんは御用が出来て来れなくなったの。その代わりにって話だってけど、悪いからお暇するわ」
よく考えてみたら、ナナホシさんは都合がつかなくなったからと自分達に譲ってくれたのだけど、カミーレは出迎えに出て来るほど彼と会いたがっていたらしい。それを邪魔してしまったようで申し訳なく思う。
「そうよ。それがいいわ。お姉さま」
「ブランシュもそう思う?」
「うん。ここからならアーサーのいるお屋敷に近いんじゃない? なんならあちらに泊めてもらったら?」
「そうねぇ……でも、失礼にならないかしら?」
「な、何言ってるの? リズ。遠慮なんかしなくてもいいよ。きみと僕との仲じゃないか。それにアーサーはきみがこちらに来ることを知っているの? 先触れもなく訪れたらきっと向こうも困るんじゃないかなぁ?」
「どうして困るの? お姉さまはアーサーと許婚の仲なのに?」
「ニィーベ。カミーレの言う通りよ。今回アーサーには何も言ってないから……」
「バンタム家のおばさま達は皆、優しいよ。急に行っても追い出される事は無いと思うけど?」
「でも、ネージュ。今回はアーサーに何も伝えてなかったしね」
「じゃあ、今から連絡すればいいんじゃない? なんならわたし行こうか?」
「シュネ。いけません」
「どうして?」




