64話・どうして馬車のドアに潰されていたの?
「お姉さま。凄いわぁ。物語に出てきそうな可愛い館」
「見てみて。お姉さま」
スノーや、ネージュに手を取られ、馬車の外に出て驚いた。その時も再び、ぐえっとカエルが潰れたような声がしたけどなんだろう? 蝶番が軋んだ音かしら?
後ろからニィーベや、ブランシュも跳ねて降りて来た。その時もぐえ、ぐえと音があがる。やっぱり蝶番がさび付いているのね。御者さんに一言、言っておかなくちゃ。
森林の中にひっそりと隠れるようにして立つ真っ白な可愛い館。ここが数日、お世話になる宿だ。ナナホシさんからは、知り合いから数日借り受けたので「ごゆっくりどうぞ」と、言われていた。
「素敵なところねぇ」
「どこかの貴族が持ち家にしていてもおかしくないほど綺麗だけど……」
「……り、リズ~」
どこからが聞いた事のあるような声がした。
「カミーレ? カミーレなの? あなたどこにいるの?」
「ここだよぉ、リズ……」
パタンっと馬車のドアが閉まり、ぺっちゃんこになったカミーレが現れた。
「ひぃっ。だ、だれ? 変態っ」
「ひどいよ。リズ。僕だよ。カミーレだよ」
「うそ。カミーレ? それにしては思い切りぺちゃんこだけど?」
原型はどうにか保ってはいるものの、顔面や体が平面になっている。でもよくよく見ればカミーレに違いなかった。
「どうしてあなたがここに?」
「ここは僕の持ち家だよ。普段宮殿で暮らしているからここに滅多に来ないし、ナナホシ一家にはお世話になっているから時々保養所として貸しているんだ」
「そうだったの。でも驚いたわ。どうして馬車のドアに潰されていたの?」
「酷いよ、リズ。出迎えようとしたらそっちがいきなりドアから飛び出してきたんじゃないか」
「ごめんなさい。あなたがいるなんて思っても見なかったから」
「「「「「ええっ。この館はカミーレのなの?」」」」」
うそぉ。と、五つ子達が驚く。




