47話・俺のリズは人を貶めるようなことはしませんから
「あなたさまは年端も行かない子供に怪我をさせて平気なのですか? 王女だからなんでも許されるとお思いならお目出度いですね」
「無礼な。このわたくしに意見を申すなんて。お黙りなさい。牢に入れるわよ」
「いいえ、黙りません。あなたは酷い御方です。自分の思うように事が進まないと、誰でも牢に入れるのですか? それでは暴君でしかない」
「お黙りなさいっ」
────アイツ!
リズを叩こうというのか? 俺は慌てて二人の間に割り込み王女の手首を掴んだ。
「お放しなさい。アーサー」
「嫌です。私の許婚に何をする気ですか?」
「これは────、この子が悪いのよ。わたくしに逆らうから」
逆らうだと? リズが何をしたって言うんだ。王女は憤慨した様子で言う。
「これではわたくしの気が済まないわ。この子はわたくしを侮辱したのよ。不敬罪で訴えるわよ」
「どうぞ。そんなことをなさったなら我が黒狼一族は黙っていませんよ」
「な。なによ。アーサーはわたくしよりもそっちの女の言い分を信じるの?」
「当然だと思いますが? 俺のリズは人を貶めるようなことはしませんから」
俺はリズの無実を信じる。そこへ姉命の五つ子達もやってきた。
「そうよ。そうよ。アーサー、そんな女、やっちゃって」
「お姉さまはあなたが木の上からわざと突き落としても、何かあったのかしら? ぐらいにしか思わないお人よしなんだから」
「そうよ。あなたのついた嘘にころりと騙されてしまうほど純情なのよ」
「お腹の中が真っ黒のあなたとは違うの」
「お腹真っ白なんだから」
五つ子達は相変わらずだった。こいつらは可愛い顔して小悪魔な一面も持っている。敵と見なしたものには容赦がない。王女相手にも引かないな。




