34話・背中がまる見えだ
「おまえら」
「あなた達っ」
リズが慌てて部屋に踏み込んで来た。俺の無残な上着を見て顔が強張る。
「なんてことしたの!」
「そう怒ってやるな。リズ」
こいつ等はリズが大好きっ子なのだ。その姉に怒られることを非情に嫌う。そのことを知る俺は、こいつらも反省してるから許してやってくれとリズに言った。
「もうしないから~」
「アーサー、許して~」
「ぐすっ。怒んないでぇ。お姉さま」
「わざとじゃないのぉ」
「皆とアーサーの取り合いしてて……」
どうしたら取り合いになるのか俺には不明だったが、五つ子ならではの通じ合うものがあるらしい。リズは眉根を寄せていた。怒り顔も可愛いな。
「あなた達、アーサーに何か言うことあるでしょう?」
「「「「「ごめんなさいっ」」」」」
リズのいつも側にいる侍女が気を利かせてくれた。
「アーサーさま。上着を脱いで頂けますか? お袖はこちらの方で縫いつけておきますので」
「そうしてもらえると助かる。頼むよ」
「さあ、あなた達。お部屋に戻って大人しくしてなさい」
侍女に続き、リズに退室を促がされた五つ子達は「ごめんね」と、言いながらすごすごと耳を垂れて退出して行った。
リズが五つ子達を送り出す為に俺を背を向けたときに、背中が見えてドキリとした。よほど慌ててきたのだろう。ドレスの背中のチャックが開けっ放しだ。
「あのアーサー?」
「ドレスのチャックが開いてるぞ。背中がまる見えだ」
「……!」
背後に立つとリズが驚く。背中のチャックのことを教えてやると、顔を真っ赤にしていた。チャックを閉めてやるとぴくりと背中が反応する。
「ほらまた油断しすぎだぞ」




