29話・甘いお仕置き
カミーレを見送るリズに面白くないものを感じる。彼女を自分の中に留めておきたくてその気持ちで胸の中がいっぱいになった。彼女が締めたドアに手を延ばし、腕の中に彼女を閉じ込める。
リズに聞いてみたくて仕方なかった。
「おまえの許婚はだれだ?」
「アーサーよ」
「それならいくらカミーレ相手でも、異性と容易に二人きりになるなよ」
小さな肩が愛おしかった。柔肌から甘い香りがしてくる。いい香りだ。何の香りだろう?
石鹸か? リズに似合う小さな小花の様な香りがする。鼻を寄せるとリズはくすぐったそ
うにしていた。
「妬いてるの? 相手はカミーレよ」
「だから心配なんだ」
「なにをそんなに不安がっているの?」
「きみのその鈍感なところが実に不安だ」
「もう、失礼ね。きゃっ」
まだ彼女は気がつかない。カミーレが異性として特別な目で見ていることに。このままだったらアイツのことだ、今度会うときにはリズにキスしてきそうだ。何だか許せなくて首に唇を寄せて甘噛みしてしまった。
「痛い。なにするの? アーサー」
「お仕置きだ」
酷い。アーサーと、上目遣いで非難する目にそそられて頭が真っ白になったと思ったら、顎を取って唇を奪っていた。一度唇を重ねてしまうと止まらなかった。リズが拒まないことを良い事に、何度も貪るように唇を重ねた。




