22話・とても許せそうにない
パメラ王女はつまらなそうな顔をしていたけれど、アザリア王妃が言った。
「特権階級にいるわたくし達は、自分で何かを作るなんて思いもしないものだけど、手作りっていいわね。その人の思いやりや気持ちが伝わってくるような気がするわ」
「そうだね。リズが作る物には優しさがある」
「金を幾らかけてもリズの作る菓子の美味しさには叶わないさ」
「二人とも褒めすぎよ。お世辞を言っても何も出ないわよ」
カミーレや、アーサーが褒めてくれる。皆で笑いあっていると、王女は憎々しげに睨んで来た。
その後、子供たちと再び鬼ごっこをしていて、またもや事件が起きた。
「きゃあっ。何してくれてるのよっ」
「わああっ」
パメラ王女は一緒に遊んでいた子供たちのうち一人の子が、洗った手をドレスで拭われたのに腹を立て、その子を突き飛ばしたが、その突き飛ばした場所が悪かった。
子供は切り株に後頭部を強く打ちつけ出血した。その子供を放置し、自分のドレスの汚れに気を取られていた。
「やだ。汚れが落ちないじゃない」
「痛いぃいい~」
「ハリー! まあ、大変」
「早くお医者さまをっ」
他の子供たちと手を繋ぎ、シスターと一緒にその近くで遊んでいたわたしは、丁度それを目撃した。シスターが慌てて医師を呼びに行き、わたしは転がるハリーの側に膝を付いて、ハンカチを出血する頭に当てた。
「ハリー。今シスターがお医者さまを連れて来るからね。頑張って」
「もう、嫌だわ。お気に入りのドレスだったのにぃ~」
痛いと泣き喚くハリーを宥めている脇で、パメラ王女は自分のドレスの心配しかしてなかった。わたしは呆れた。
「パメラさま。こんな時でもあなたさまはご自分のドレスの心配ですか?」
「それのどこが悪いの? この子はね、わたくしのドレスで手を拭いたのよ。汚い」
自分でも思ったよりも低い声が出たと思う。パメラ王女は不快そうな顔をして言い返してくる。
「汚いとはご自分のドレスが汚れたことに対してですか?」
「もちろんそれもあるけど、孤児なんて汚いじゃない? そんな子にわたくしのドレスに触れて欲しくないわ」
「パメラさま。あなたって最低ですね」
「わたくしを侮辱する気? たかが伯爵令嬢の身分で」
パメラ王女はこちらを見下してきた。その態度にわたしはこの人、嫌い。と、思う。王女の自分は特別な存在だから何をしても許されると思い込んでいる部分が許せそうになかった。相手は王族だけど言わずにはいられなかった。




