20話・リズはおまえにはやらん
「お姉さま、何食べる?」
「サンドイッチ食べるでしょう?」
「一個? 二個?」
「これ、わたしが作ったのよ」
「こっちはわたし」
五人の妹達がこっちも食べて。と、あれやこれやとお皿の上に乗せてくる。みんな良い子で気遣ってくれる。
「ありがとう。みんな。でもこれ以上、食べきれないからもういいわよ。後はあなた達の分を取ってお食べなさい」
「はあい」
と、返事をして黙々と食べ始めた妹達を見ていると、「それ食べないのか? 」と、脇から声が上がった。手に持ったサンドイッチをアーサーがパクッと口に咥えてしまった。
「アーサー、お行儀が悪いわよ」
「おまえも食べるか? ほら」
目の前に別のサンドイッチを差し出される。
「いいわよ。一人で食べれるから」
「遠慮するなって。ここにはシュネ達しかいないぞ」
いいえ、シュネたち以外にも、アザリアさまやカミーレ、パメラさま、孤児院の子供たち、シスターらがいる。皆の注目を浴びて恥ずかしく思うのにアーサーは平気そうだった。
だってこれは普段、わたしや彼の屋敷で見られる光景だったりする。妹達はそ知らぬ顔で食べ続けているけれど。頬いっぱい頬張っちゃって可愛い~。って現実逃避したくなったけど、彼は見逃してくれそうになかった。
「はい。あーんだ」
「もう、アーサーったら」
「食べないなら口に突っ込むぞ」
アーサーはわたしのことを何だと思っているのかしら? 子供扱いして。恥ずかしく思いながらもおずおずとサンドイッチに口をつけると、アーサーに穴が空きそうなほどじいっと見つめられた。
「おまえは食が薄いからな。心配だ。またこの間のように倒れられては困る」
「あれは──」
「ええっ? リズ。倒れたの?」
いつの間にかカミーレが側に来ていた。
「アーサーが構いすぎて神経が追い込まれているんじゃないの? 僕のとこ来る?」
「誰が行くか。リズはおまえにはやらん」
どこかで聞いたような、父親のようなセリフをアーサーは吐く。




