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chapter2:『わたし』が『わたし』で在れる場所(アルカ/アデル視点)

………わたしには【勇者アデル】としての記憶がある。

そして、わたしこそが【勇者アデル】()()()と言う認識もある。

だけど、それと同時にわたしには【アルカ】だったとゆう記憶も認識も、ある。

それは前世の【アデル】だった時からあったもので、本当のわたしの記憶と心なの………















………【アデル】が最期、フェイに向かって言った…『勇者アデルは死ななければならなかった。』

その理由は沢山あるけれど、大きな理由が2つある。


先ず、"『勇者』は死ぬまで『勇者』である。"と言う事。

()()()()()()()()()()()()

だから、()()により色々と強要されていた。

その事に【アデル(わたし)】は苦しんでいた。

そんな彼にとって魔族が聞き分けの良い種族だったのは僥倖(ぎょうこう)だったわ。

むしろ、聞き分けの悪い人間……腐敗政治を行う貴族と戦う事の方が多かったし、その度に魔族達に助けられた位なのよ。

……王命は『国家の敵と戦う事』だったから、むしろ魔族は敵にはならなかったのよね。


アデル(わたし)自身、戦いの中で段々と王族に懐疑を抱いていく様になっていたわ。元々、アデル(わたし)は自分達王族の事しか考えない、自国の王族が嫌いだったし。

だから、そんな王族の為に大好きで大切な親友を殺す気なんか最初から全くなかった。

と言うか、わたし自身はどちらかと言えば魔族達と波長が合った。

今のわたしもそれは同じだわ。魔族の事は嫌いじゃない。それどころかフェイと結婚したいくらい大好きだ。


2つ目の理由がまさにそれだわ。

わたしは【アデル】の時からフェイを愛していた。

【わたし】はそもそもが【わたし】だったのだから。

【アデル】はそれこそ【勇者アデル】として造られた存在………わたしは、身体こそ男だったけど、生まれた時から自分は女の子だと思っていたわ。

だけれど、周囲はそんなわたしを認めてくれなかった。

【勇者】として、【男】として生まれたわたしは、【勇者】らしく、【男】らしく振る舞う事を強要された。

だけど、フェイだけは違ったのよ。

フェイだけは、わたしに「ありのままでいい」って、女の子で良いんだって、言ってくれた。

それに、わたしに【アルカ】って名前をくれた……!

それだけでなく、二人きりの時はわたしを女の子として扱ってくれたわ。

戦いの時はお互いに背中を預け合える仲だったし、強くて優しい彼の事が、わたしはあっという間に好きになった。

好きにならないはずがないじゃない…………!

彼もわたしを愛してくれたし……魔族は魂で惚れるのだから同性同士でも構わないって言ってくれたけど、やっぱり不安だったし、何より『勇者と魔王』のままでは大っぴらには付き合えなかった…………

だから、サフィーアさんの目論み通り"勇者では無い"身体に造り変えられて本当に良かった…………

だって、今のこの身体なら何のしがらみも無くフェイと付き合えるし、更に、偶然の産物とは言え女の子になった今のわたしなら彼の子供がつくれるのだから!!


わたしはフェイが大好きだ。それは、今も昔も変わらない。

それに、今のわたしは勇者じゃない。

だから、フェイの敵と戦うことが出来る。魔族の味方であれる………!その事が1番嬉しくて誇らしい。

だから今日もわたしはフェイに言うのだ。



「おはよう、フェイっ!」


「ん……ぅ……おはよ…アルカ………


「あーもー可愛いっ!大好きっ!!」


「………そぉか……あふ………


「ふふっ………♪」



ここでなら、わたしはわたしで在れる。わたしは今、幸せだ。




→→視点変更→→フェイ→→

実は僕にはアルカに言ってない秘密がある。

と言うのは、まだ彼女が【勇者アデル】だった時に僕は()()()()()アデルに命令をした事がある。

何せ、()()()()()()()()()()()()事を知っていたからだ。

だから、卑怯だと知りつつも彼女が寝ている時に1つの命令をした。

それは、『王族の命令には従うな』だ。

あの腐った王族は、勇者は自分達にとって都合の良い道具だと思っていた事だろう。

しかし、そうではない。

あくまで勇者は()()に逆らえないのだ。

つまり、それは他国の王族、そう、魔王族が相手でも逆らえないのだ。

それが嫌なら『他の王族の命令はきくな』と命令しておけばいいのだが、事実を知らないあの馬鹿共にそんな知恵はないだろうな。

だから、既にアルカは自由の身だったのだが…………失敗だった。まさかアルカが自爆に走るなんて……そして、そんな命令をしてしまったので『死ぬな』と命令出来なかった……………。

『キミは自由だ』と伝えられなかった……!

そんな愚かな僕だけど―――



「おはよう、フェイっ!」


「ん……ぅ……おはよ…アルカ………


「あーもー可愛いっ!大好きっ!!」


「………そぉか……あふ………


「ふふっ………♪」


「…僕も、大好きだよ。アルカ……


「~~~~~っ!」



アルカの事を、世界で1番愛してる。

今度は失敗しない。

この、可愛くて暴走しがちな嫁を僕は守りきってみせる。



→→視点変更→→アルカ→→



「…僕も、大好きだよ。アルカ……


「~~~~~っ!」



もう!もうもうもうっ!!なんなのフェイ!

前から思っていたけどフェイってば、たまにこっちが恥ずかしくなる事を平気で言ってくるよねっ!?

しかもなにそのとろけるような笑顔!?



「………。」



……ってあれ?

なんか、急に顔が厳しく………



「そうだアルカ。

思い出したら段々腹が立ってきたから言わせてもらうけどさ。」


「えーっと……はい………?わっ、わたし何かした!?」


「うん。僕はとっても怒ってるよ。

あのさアルカ、何でキミは安易に死を選んだんだい?

まさかとは思うけど、こうなる事を知っていたなんて莫迦な事は言わないよね?」


「うぇっ!?あの、えと、さ、サフィーアさんからそう聞いてたから………そ、そう………なんだけど……?」


「……はぁぁぁぁ………………



えー………

何でそんなわざとらしい深いため息を………?

大体、フェイはサフィーアさんから何も聞いてないのかな………?

そう思いながら困惑しつつフェイを見つめていたんだけど、眼光を鋭くしたフェイはいい笑顔を浮べながらわたしに迫って来た………!

普段なら嬉しいけど今はなんか怖いよ!?



「あのさ、いくら魔法も奇跡も神もあるとは言え、精霊神にそう告げられたとは言え、何で僕になんの相談も無しにいきなり実行した訳?

遺されたこっちは勇者で無くなって復活するなんて知らなかったから、か な り 精神的に辛い思いをしたんだけど?」


「いや……だって……そのぅ…………



あ、なんか逆にわたしもイラッときた。



「………だって、言ったらフェイは絶対止めるじゃん!

それに、サプライズがしたかったのっ!!復活に数年かかるなんて予想外だったんだよっ!」


「はぁぁ!?サプライズだぁ!?そんなサプライズ心臓に悪過ぎるわっ!!もちろん嬉しかったけどね!?

大体キミはいつもそうだ!!下げて上げるのがうまいよね全く!

そんなんだからキミからは目を離せないんだ!嫁になってくれて心底ホッとしてるわっ!!」


「あの時は勇者だったから仕方ないでしょ!?

だから勇者じゃなくなる為に死んだんだよっ!!

なんか結果的に女の子になれてフェイの嫁になれたから逆サプライズ受けた感じになったけどね!?

だったらトコトンわたしを見ててよ旦那様!?」


「ああイイとも!もちろんだ!

もう二度と!アルカを手放してやるものか!!

覚悟しててよアルカ!大好きだよ!!」


「わたしも大好きに決まってるでしょ!

だから女の子になれて本当に嬉しかったんだよっ!!

女の子になれたからには絶対フェイの子供産むからね!?

フェイの事を手放してなんてあげないんだから!!

一生わたしと子供を養わせてやるわよ!!

だけど疲れたら癒してあげるから頼りなさいっ!!」


「ああ望むところだそれでこそアルカだね!

この魔王フェンネルの嫁となったからにはしっかり次代の魔王を育てさせるからな!?

もちろんその為の協力は惜しまずしよう!!そっちこそ疲れたら僕を頼るんだぞ!?もうキミ1人の身体じゃないんだっ!

キミは僕と未来の子供のものなんだからねっ!!」


「ああもう本当になんなのフェイは!?

わたしをこれ以上きゅんきゅんさせてどうするつもり!?」


「堂 々 と イ チ ャ イ チ ャ し た い ん だ よ !」


「なら堂々と愛でなさいよわたしの旦那様ぁぁぁっ!!」


「勿論だ覚悟しとけよ僕の嫁ぇぇぇっ!!」


「「愛してるぞこのやろーっ!!」」






「「~~~~~~~~っ!」」←冷静になったら恥ずかしくなった





わたしはきっと、これからもこの優しい魔王様に恋をする。



オマケ


アルカ「わたし達の力は!」


ユーキ「剣と!」


サフィーア「まほーと!」


フェイ「愛っ!!」


アルカ&ユーキ「恥ずかしげもなく!?」

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