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エスケープ、開始




突然だが、脱出ゲームというものをご存知だろうか。


簡単に言うと『密室の中で隠された謎を解いたりアイテムを用いて脱出する』ブラウザゲームのこと。

ゲームの流れとしては主人公が突如として建物や部屋に閉じ込められて、そこから脱出しなければという展開になるのが多かったりするものだ。

最近では携帯機やスマホでも手軽に楽しめるようになったり、ストーリー性を持たせたり著名な作品とコラボしたりと幅広い進展をみせるアドベンチャーゲームの一つ。



では、リアル型脱出ゲームというのは耳にしたことがあるだろうか。


ちまたでは型を抜いた呼称だったり謎解きゲームなんて呼び方をする所もあるみたいだけど、要は画面越しではなくて現実の世界で脱出ゲームに挑むという体感型のイベントだ。

テーマになぞらえた商業施設やイベントホールを舞台に、他の参加者と協力して謎を解き明かしたり、リアルでしか味わえない緊張感や演出を楽しんだりするのはエンターテイメントの一つといった所かな。




じゃあ、『リアル』に『脱出ゲーム』というのはいかがだろうか。

さっきと何が違うかって?


それは……今まさに私がリアルにある一室に閉じ込められて、予告もなしにその部屋の主に『脱出』を言い渡されてしまったからだ。






……あまりの有り得なさにちょっと現実逃避してみたけど、やっぱりもう一回状況を整理してみよう。

友人の家に遊びに来た私は話をしている内にいつの間にかウトウトして、確かそのままソファーで眠ってしまった筈。

そこから目が覚めたら、見覚えのない部屋の見覚えのあるソファーに横になっていたのだから、パニックを通り越して逆に冷静になってしまったほど。


そんな中、まだぼんやりとする視界で唯一認識出来た物体は、手の届く距離にあったガラステーブルと、そこに置かれた二枚のカードだった。

そしてそのカードの一枚に記されていたのは、件の友人からのメッセージ。



『突然一人にしてごめんね。

けど安心して。この部屋は俺の家の一室で、隣の部屋で自分は待機してるからもし何かあったらすぐに駆け付けるよ。

それで、本題。

君にはここから脱出して欲しいと思う。

いくら脱出ゲームが好きな君とはいえ急な話で驚いているだろうし、そんな気分になれないってことならすぐに中止するけど、君の為に作ったゲームだから是非とも挑戦して欲しいな。

もう一回言っておくけど、無理だと思ったり気分が悪くなったりしたらすぐに連絡して。

でも、そんなに難しくない筈だからヒントを求めて連絡されても答えないから、そこだけはよろしく。


じゃあ、楽しいひと時を、君に』



相変わらず、前置きが長くて仰々しいのに突拍子もないことを言い出す人だ。

けど、そういう所がアイツの短所であり長所でもあるんだけれど。

よし、そういうことなら受けて立ってやろう。

あのヤロー舐めくさりおって。わざわざ『難しくない』なんて強調するくらいイージーモードにしたことを後悔するぐらい、見事に脱出してぐうの音も出なくさせてやる。


私は心の中でほくそ笑んで、ぐるりと辺りを見渡した。

何故かフローリングに浴槽が直置きされていたり、やたらと星の飾りがキラキラしていたり、無性に気持ちの悪い時計が掛けてあったりするけど、その前に……。

って、いうか本当に妙に気色の悪い物体だなぁ、アレ。


気になることは他にもあるけれど、まずはもう一枚のカードを手に取った。


メッセージカードよりも厚みのあるプラスチック製で正方形のそのカードには、大きく『い』と書かれている。

くるりと裏返してみれば、反対側にはどこかで見たことのあるイラストが描かれていた。


オレンジ色のキーホルダーがついた、シンプルな鍵。


この鍵は、もしかして……。

そこで私はポケットを探ってシャラリとした感触のソレを取り出した。


イラストと瓜二つの、暖かみのある色彩をした太陽の飾りがついた鍵を。






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