自宅にて。
行くか、やめるか。
既に暗くなった部屋で、二つしかない選択肢にいつまで経っても答えを出すことが出来ずにいた。
仕事を終えて1LDKの部屋に戻ってきたのは十九時過ぎ……それからずっと悩み続け、今ふとリビングテーブルの上に置いてあるデジタル時計を見れば既に二十一時を数分過ぎている。
行くか、やめるか。
再び自分に問いかけるものの、やはり答えは出ない。
随分時間を無駄にしてしまったけど、もう少し待てば帰宅ラッシュが落ち着いて、目的を果たしやすくなるかもしれない。
そう考えるとまた、『行く』の方に心が揺れ動き、そしてすぐさま『やめようか』と迷いだす。同じような考えをずっと繰り返してばかりだ。
心を鎮める様に、と多めに作ったコーヒーはもう空になっている。いつの間にそんなに飲んだのか、ちっとも覚えていなかった。
行くか、それともやめるか。
部屋で悩んでいても何も変わらないのはわかっている。それなのに、最後の決断をする勇気がどうしてもでない。
あと一押し、このうだうだ悩む情けない思考を蹴り飛ばしてやればカタが付くはずなのに、『やっぱりやめよう』と頭のどこかでもう一人の自分が囁きつづけ、僕の決意を鈍らせる。
いっその事、誰かが選んでくれれば楽なのに。
そんな事を考えながらふと時計を見れば、また三十分ほど無為に過ぎていた。そろそろ、本当に決めないとまずい。
行くなら今日が最後のチャンスになる。
用意と移動時間を考えれば、そろそろタイムリミットだ。
行くか、やめるか。
「よし、行こう」
誰も後押ししてくれないのだから、自分で決意を口にして尻を叩くしかない。自分で思ったよりずっと弱々しい決意表明になったけど、決定は決定だ。
もう決めた。出かけると、決めた。
支度が終わる頃には22時を過ぎそうだ。決断にここまで時間がかかるとは思わなかったけど、人通りが少なくなるなら好都合には違いない。
僕はせっかくなら、と先日受け取ったまま放置していた段ボールを手に取り、用意に取り掛かりだした。