最低最悪な「恋」の感情。
前回の続きになります。拙い内容なのは相変わらずなのですが、
それでも宜しければお付き合いくださいませ。
真冬の公園・・・。
雪がしんしんと降る中で、陽ちゃんは
私を抱きしめている・・・。
体温が熱として肌で感じ取れる。
赤面することもなく、ただ・・・。
自分としては「愛情」の様な暖かいものを
心の中で連想していた・・・。
陽ちゃんはどう思ってるか知らないけど・・・。
このまま永遠に続けばいいのに・・・。
この瞬間瞬間を脳でなく心に刻み付けておきたい。
私の中のどす黒いけど・・・純粋な気持ちが
「欲」という形となって現れてくる・・・。
自分が気持ち悪いなとすら思えてくる・・・。
「・・・流石に寒くない?実梨ちゃん・・・。」
抱きしめながらもそう聞き返してくる・・・。
「・・・うん。寒いけど寒くない・・・。」
陽ちゃんは軽く眉間にしわを寄せながらこう言った。
「それかなりの矛盾。そんなに離れたくないわけ?
俺はもう昔の俺じゃないんだけど君は平気なの?
俺が女の子の立場だったら絶対こんな男に騙されないけど。」
「・・・・・・・・・・。」
無言でじっとしてる私に対して多少苛立ったのか、
するっと手を離す・・・。
「俺は今はありさちゃんと付き合ってるって言ったけどさ。
今少し揺れてる。気持ちが・・・。」
ぼうっとしながら彼の話を聞いていた・・・。
「実梨ちゃんがいなかったらあの子とは別れるつもりだった。
今までもずっとこんなだったしな。俺は・・・。
「女」なんて誰でもよかった。誰でも同じ。誰でも一緒。
ずっとそのつもりでいたよ・・・。でも・・・。」
笑顔どころか眉間にしわを寄せた苦々しい表情で
何かと葛藤してるのかというぐらい自分の髪の毛を
ぐしゃぐしゃ搔きむしっていた。
私の方を向いて、一瞬目をそらし、また私の方を向く。
「実梨ちゃんのこと・・・。大事に想うから俺はもう
ありさちゃんと付き合うことにするよ・・・。」
「・・・は・・・?!」
私は思わずなんとなくだらしのない声が出た・・・。
え。なに。どういうことそれ・・・???と思考を巡らせていると、
陽ちゃんは曇った目で何も見ないかの様な目線で淡々とこう言った。
「実梨ちゃんに対して好きだから敢えて嫌がらせをしてやろうかと
思ってるんだ。今凄く・・・。ぶっちゃけ、気を引きたい。
その為に嫌がらせの道具として「ありさちゃん」と付き合うよ。」
顔があんぐりとしてしまう・・・。
この男が何を言ってるのか何を考えてるのか全く分からない。
「何それ。理解できない・・・。何・・・?」
嫌がらせって何のつもりなのか・・・。意味が分からない。
「お前が友情と恋の感情との間で板挟みになる様を想像してる。
すんげー愉快な気持ちになる。お前が俺に対して「執着心」とか
あの子に対して「嫉妬心」とか剥き出しにして無茶苦茶な感情で
いっぱいになってる未来図を想像してしまうんだよ。ははは。」
無感情な感じに意地悪く笑う。というよりこれは「嗤う」というやつだ。
冷たく張り詰めた空気で降ってくる雪よりも冷たい言葉と態度。
その瞬間私は陽ちゃんの頬を平手打ちした。
「バチンッ!!!」
涙が寒さで凍り付きそうな感じがした・・・。
実際は「凍る」どころかとめどなく溢れてきてるけども。
「何のつもりか知らないけどっ!私と笹ちゃんの友情を
そんなに壊したいのっ?!大体何が可笑しいのよっ?!
悪いけど今の陽ちゃんは私にはさっぱり理解できないっ!!
何のつもりよっ!何のっ!何の・・・。っ・・・・・。」
ぽかんとした表情でその場に立ち尽くす彼を・・・。
もう見たくもないとさっきとは真逆の感情が押し寄せてきて
はらわたが煮えくり返りそうで・・・。
辛くて辛くてどうしようもなかった・・・。
涙をぐっと堪えて降り積もった雪でいっぱいになった
公園の地面に突き飛ばしてしまった・・・。
どさっ。
「もうあんたの顔も見たくないっ!さよなら!!」
そこから立ち去ってしまう私・・・。
実梨の姿が公園から見えなくなっても、
陽太はその場で寝転がった状態のままでいた。
「・・・あの子・・・。今でも本気で俺が好きなのか。
へえ?また泣かしてやろ・・・。おもしろ・・・。」
言葉とは裏腹に陽太の目から一滴だけ涙がつたって流れ落ちた。
「また逢えて嬉しいよ・・・。実梨・・・。」
そう一言呟き、そこから立ち上がった陽太。
「恋とか・・・そんなん只のゲームと一緒だよ。
本気になるゲーム・・・。楽しいからやめられないんじゃんね?
そこにゴールがあってクリアするのが快感なんじゃん。」
目を横に反らし、何かを誤魔化す様に口に出していた。
実梨は家路につき、カバンを放り投げて部屋に駆け込む。
「はーっはーっ・・・。」
完全に過呼吸の様に息が出来なくなりそうになっていた。
「う。吐きそ・・・。」
吐きはしなかったもののしばらくその場に崩れ落ち、
床の上でうずくまってしまう。
怒りなのか何なのかわからない感情でいっぱいで、
手が震える・・・。
「あんな奴あんな奴・・・!!陽ちゃんじゃないっ!!」
思わず声に出してしまう・・・。
思わずその場の勢いに任せてスマホを取り出し、
ラインで笹ちゃんに宛てて送る。
『笹ちゃん。お願いだからあの男と別れて!!』
暫くして返事が来た・・・。
『なに?どうかしたの?なんなの?!』
『あいつだけはやめて!笹ちゃん不幸になるよ?!』
それから何も返事は来なかった・・・。
「終わったかもしれない・・・。友情に亀裂入ったな・・・。」
自分の部屋でうずくまった体制からその場で横になり、
呆然としていた・・・。
もう涙すら出なかった・・・。
一方の陽太は雪の積もった公園から抜け出して、
自宅のマンションのエレベーター内で自分の頬を
撫でながら一言呟いていた・・・。
「いてぇ・・・。」
ぶたれた痛みか心の痛みか本人も理解できないでいた。
続。
今回のお話はシリアス一辺倒になってしまい、ギャグを入れる暇もなかったのが
残念でした。(作者的に)ただ、ここは誤魔化してはいけないと思い、
こういう重たい内容にしておきました。ブレブレですみません。(汗)