表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

Hello World

投稿が遅れました。今回もハッキングシーンはありませんが、次回から技術的な話題などを出していきたいと思います。

 「え?内村綾香!?」

 思わず小野田の言葉に驚き、淳一は自身の発した声を抑える。一旦、自身の声が聞こえてないかを周りを見る。話の内容を他人に聞かれるわけにはいかない。

 「なんで、そう思ったんだ?」

 再び周りに聞こえないよう小野田に小声で聞く。

 「そのサイトの画像に、内村綾香らしき顔が写ってて、それで内村綾香じゃないかって噂だ」

 内村綾香、彼女はクラスでは目立つ存在であり、学年中でも有名だ。見た目からして今風の女子高生といったような制服の格好をしており、目立つというからには教室では常にはしゃいでいる。元気な女の子と言ったがいい。

 彼女を見るか限り、特に落ち込んでるようには見えず、いつもなくうるさいぐらいに元気な様子で友達との会話を楽しんでいた。ここまで噂になるからには、彼女自身も自分のプライベート画像がサイトに漏れていることは友達から聞いて知っているだろう。淳一は自分が同じ立場なら、その日から学校に行くことすらためらうぐらい落ち込む。彼女が落ち込む様子を見せないのも、画像が漏れたのは自分ではないということだからだろうか。仮にそうだとしても根も葉もない噂を立てられるのは彼女にとって苦痛であろう。

 「誰がやったんだ?」

 「これも噂だが、学校の誰かだと言われている」

 確かに仮に彼女のスマフォにウイルスを仕掛けたしたら、それは学校の誰かとしか考えられない。わざわざサイトに画像を貼り付けるなんてことするぐらい、計画的なものと言ってよいところが見える。

 通常、ウイルスとは作成側が広範囲にばらまき、不特定多数の被害を狙う。特定の誰かを狙ってウイルスにひっかかせるというよりは、誰でもよいから一人でも多く不特定多数にウイルスをひっかかせると言った方が正しい。つまり作成側も誰がウイルスに感染したなんて知らなかったりするものであり、特定の誰かを狙おうと考える者も少ない。近年では、企業に向けて[標的型]と呼ばれる攻撃やウイルスも出てきていることも確かだが、それでも不特定多数を狙うウイルスよりは数はまだ少ない。わざわざ女子高生相手に標的型のウイルスを作ること自体、明らかに彼女を特定のターゲットとして狙っているとしか考えられない。仕掛けた側が彼女のスマフォがウイルスに感染したとわかった上で、スマフォから画像を抜き取り、サイト上に公開したのであろう。

 「学校の誰かか、ひどいことするもんだな」

 「まあ気の毒としか言えない、学校側も大事にはしたくないだろうな」

 小野田は椅子に背もたれよっかかりながら発した。

 ここまで噂が広がったとなれば、学校側も知るのも時間の問題である。サイトの対応をどうするかも教師陣も悩んでいるのではないだろうか。



 ホームルームを終え、小野田は陸上部の練習があるため教室で別れる。

 教室を出ると、一人見覚えのある男がいた。

 教室から少し離れた場所に立ち、入口から出る生徒一人一人を確認して誰かを探していた。周りにいる生徒も見知らぬ顔に「誰」という反応を見せている。

 「お、いたいた」

 男は淳一を見つけると、近づいてきた。

 「いや〜探したよ」

 淳一に話しかけてきた男は、一つ上の先輩である土森友貴(つちもり ゆうき)だった。小学校と中学校も同じであり、淳一とは古くから付き合いがある先輩である。家も比較的近所であり、小学校の頃は一緒に遊んだ記憶もある。

 「土森先輩どうしたんですか?」

 3年生である土森がわざわざ2年生の教室があるこの階に来るのも珍しいと淳一は思っていた。

 「悪いな、ちょっと淳一にお願いがあってな」

 「お願い?お願いってなんですか?」

 淳一はお願いと言われ、眉を寄せて首を少しかしげた。土森から何かを頼まれるのも珍しいと思っていた。

 「ここではなんだ、場所を移そう」

 土森はそう言うと、歩き始め教室を離れていく。淳一も土森に付いていく。

 案内されたのは生徒会室であった。土森は生徒会に所属しているため、普通に中に入っていくものの、淳一は生徒会室に来るのは始めてのせいか遠慮そうに中に入っていく。淳一にとって、普段この部屋は無縁ではあるものの、前々から気になっていた部屋のせいか、入った喜びを感じる。

 中を見渡すと、部屋は横に大きく教室二つ分の部屋であった。入口から目の前にはソファーが二つ、互いに向かい合うように並んであり、真ん中に机がある。生徒会長用の机はもちろんのこと、会議用の大きな机に椅子が並んでいた。

 中には誰もおらず、静かな部屋であった。土森が部屋の電気をつけると、「そこに座って」と言われ、淳一はソファーに腰をかける。

 「今日は生徒会の活動が無いから誰もいないんだ、まあここなら誰もいないから話せる」

 土森もソファーに腰をかけると、下を向き眉をひそめて深刻そうな表情を浮かべた。淳一は[誰もいないから]という言葉に引っかかる。この部屋に案内されたのも、周りに聞かれるわけにはいかないのだからと察する。

 「後一人、もう少しで来ると思うんだ」

 土森は顔を上げて、部屋の中の時計を見上げて言う。もう一人ということは、この部屋で3人で何かを話すらしく、土森の表情を見るからには、明るい世間話でも話すわけではないらしい。

 唐突に部屋の扉に弱々しいノック音が聞こえた。

 「どうぞ」

 土森が扉に向かって顔を向けて声をかけた。

 「し、失礼しまーす」

 聞き覚えのある女子の声。緊張しているのか、少し上ずった声であった。

 扉は最初に隙間のように少し開き、徐々に開いていく。そこから体を横に滑り込むかのように体を小さくして中に入ってきた。

 その女子生徒は部屋の中を探るように見渡す。

 (は…?)

 淳一は思わず心の中で呟く。淳一はその女子生徒を知っている。向こうも同じく淳一を知っている。聞き覚えのあったその声は頭の中にイメージしていた人物と一致していたのだ。

 その女子生徒は淳一と目が合うと、小さく悲鳴を上げた。

 「え…ええええ!」

 女子生徒は小さな悲鳴を上げながら、第一声がそれであった。

 

 ※


 「ごめ~ん、先生に呼び出されたからこの後職員室に行かなくちゃいけなくて」

 ホームルームを終え、帰りの支度をしてバックを取り出す。友人の遥佳(はるか)が内村綾香の席に来る。遥佳は綾香の帰りの用意が終わるのを待っている。いつもなら、綾香は放課後に遥佳と寄り道しながら帰るものの、今日はどうしても外せない用事があったのだ。

 「え、綾香何かしたの?なら終わるまで待つよ」

 「いいよ~時間結構かかっちゃって悪いだろうから先帰ってて」

 職員室に先生に呼び出されたなんていうのは嘘であった。それでも遥佳は意地でも綾香に「待つよ」と言う。しかし、今日はどうしても一人で行かなければならない所があり、先に帰ってほしかったと綾香は思っていた。

 綾香は「本当に悪いよ」、「もしかしたら夜まで残されるかもしれないし」とあらゆる言い訳や嘘を述べて先に帰ってもらうように伝える。もちろん綾香は遥佳が嫌いだから一緒に帰りたくないわけでは無い。

 遥佳は気を使ってくれているのか、今日は”あの事”は話題には出してこなかった。しかし、一部の人が”あの事に”ついて噂話をしている所を綾香は聞いてしまった。

 それでも遥佳は無理にでも気を使って明るい話題を出してくる様子を見る限り、遥佳も”あの事”を知っているだなと綾香はわかったのだ。

 「それじゃあまた明日ね」

 なんとか嘘を述べて遥佳と別れた綾香は、周りには気づかれないように、さりげない歩きで職員室では無く呼び出された生徒会室へと向かう。どうしても行きたい場所は、生徒会室である。

 ”あの事”を解決してくれる人がいる言われ、綾香は今日の放課後に生徒会室に行くように言われたのであった。

 歩きながらスマフォ恐る恐るをポケットから取り出す。中身を確認すると一件のメールを受信している。またあの見知らぬメールアドレスからだ。

 あの時の突然知らないアドレスからメールが来たとき、中身を見てそのアドレスの拒否設定を行ったものの、それとは別な知らないメールアドレスからまたメールが来たのだ。内容は前の知らないアドレスと同じく、ただURLが貼ってあっただけであった。どう考えても差出人は同じ人しか考えられず、メールの拒否設定をしても無駄だと言われているかのように感じてしまう。

 生徒会室に近づくにつれて、歩幅のペースがゆっくりになる。

 部屋は電気が付いているもの、物静かな様子である。誰か一人としても一人や二人ぐらいではないだろうか。

 綾香は扉の前に立つと、誰かに見られるのを嫌うかのように周囲を見渡し、最初に深呼吸をする。

 手を上げて扉を叩いてノックすると、「どうぞ」の声がかかる。

 「し、失礼しまーす」

 ここに来て緊張してしまい、上ずった声になってしまう。

 扉をゆっくりと軽く開け、徐々に扉を開いて、横に滑り込ませるようにして綾香は中に入った。

 周囲を見渡すと、教室二つ分の横に大きな部屋。扉から目の前には二つソファーがあり、二人の男子生徒がいる。

 向かい側のソファーに座っている男子生徒を見ると、綾香の知っている顔であった。

 その男子生徒と目があってしまい、綾香は目を丸くする。

 「え…ええええ!」

 綾香は戸惑いを隠せず、小さな悲鳴を上げてしまう。

 向こうの男子生徒も同じような反応を表情に見せていた。

 「な、なんで古谷がいるの!?」

 「内村綾香!?なんでお前こそ、ここにいるんだよ」

用語解説

:URL

http://などから始まるウェブサイトのアドレス(住所)のこと。

例えばこのページのURLはhttp://ncode.syosetu.com/n6662cm/3/である。


:Hello World

プログラミングの入門書では、この文字を出力するプログラムをを作ることを最初の例題としている場合が多い。ほとんどプログラミング言語を習得する際に最初に作るのがこのプログラムである。そのため、「世界一有名なプログラム」と呼ばれることもある。

この話のサブタイトルでもありますが、特に意味はありません。


:標的型

「特定の情報」を狙って行われるサイバー攻撃の一種。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ