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もののけ三銃士・宇宙人魚邂逅編
宇宙は、とても広くて、とても遠くて、とても寒い。
そんな深い空を強く速く泳ぐために、彼女たちは心をつなぐ技術を手に入れた。
どんなに遠くまで流されても、どんなに険しい隔たりでも、決して仲間を見失わないように。
距離も、振動媒体もなくても、声を届ける技術。
近未来、いつか夢幻人形と幻想甲冑を開発する時代に、人類はその技術を手に入れて、『LRシステム』として兵器運用もされることになるのだが。
物語は未だそこまで進化していない。
今はただ、うっかりと、大気圏に落ちてしまった彼女の物語に過ぎない。
人類が宇宙に進出し、ステーションには単身赴任のサラリーマンがあふれ、出稼ぎ労働者が劣悪な装備で船外作業に従事する、生活圏が成層圏を超える時代まで、まだ少し。
うっかりと、あっけなく地球外知的生命体に出会うより、ずっと前。
うっかりと尾を滑らせて地球に落ちてきた宇宙人魚と、三人の頭の愉快な高校生の物語である。