【ダンドリアン】最終話
「だったら、シロネコが異界の扉を開けることも、仕組まれてたってことなのか?」
「アカシックレコードを書き換える力を持った『天使』ならば、シロネコさんにわざとそれを見せることくらいしたんだろうね」
「何のためにだ」
「人類を、ア・イデアに対抗できる存在にまで進化させるため。キュキと、その配下の天使達は、人類を極点の存在の原型と定めた。キュキの支配下にない、並行世界の別の地球の技術や異能を取り込んで、イデアの娘達と宇宙戦争ができるくらいにまで、激変させる」
「S・A。ファインドランダム、ハイドランダム、時の翁、車輪堂縫ゑ、ファイブ、デア・メルクヴルディヒ、テロメア、女帝陛下、永遠愚行。天使全員がこの町に降りてきたのも、そのためか」
「彼らは月本市を拠点として、運命を捻じ曲げる。種レベルの危機を、巻き起こし続けるだろう。そして、それをあらゆる手段を使って克服させることで、人類を強制的に成長させる」
「……。しかし、シロネコは自分が【世界を滅ぼす獣】になるという未来を予知して、そうならないように異界へ消えたのだろう? なぜ、あえて危機を回避する予知なんて許しあんだ?」
「彼らはわかっているんだよ。シロネコさんが、異界から戻ってくることを。だって、世界を滅ぼす獣が一匹しかいないなんて、誰も言ってないのだから。もし、別の誰かが代わりに【世界を滅ぼす獣】になれば、彼女は【過日の魔王】となってこの世界に戻ってくる。ただし、その時は魔王は負けて世界は滅びる」
「……、次郎、この町で一体これから何が起きる?」
「ここから先は、僕の想像だが。【過日の魔王】と【世界を滅ぼす獣】が戦って世界が滅ぶのなら、どちらかになる可能性のある候補が、複数存在していると考えるべきだ。もしかしたら、シロネコさんが開けた門から、これからやってくるのかもしれない。そして、来たる仮想平成30年の破壊前線の戦いに生き残った最後の2体が、それになるということだろう」
「キュキってのは、人間を作った神様なんだろ……。なのに、そこまでするのか」
「するんだよ。彼の目的は、宇宙戦争を生き抜く強い生命体の登場なのだから。そのためには、別の世界の扉を開く異能なんてとんでもない異能を生んだ人類は、まさにチャンスなのさ」
「次郎、お前はこれからどうする?」
「【過日の魔王】の候補者を探す。キュキの好きなようにはさせない。彼らを保護する」
「さすがだな、ダンドリアン。お前なら世界を救えるだろう」
「手伝ってくれないのか、カーゴ。なら、君は何をしようと思う?」
「【世界を滅ぼす獣】を探す。そして、片端から絶滅させる。シロネコみたいに、他人を導いてもやれないし、お前みたいに段取りよく準備もできない。敵と戦うしか能がないからな」
「それは違うよ、カーゴ、君はシロネコを失って、自暴自棄になってるだけだ。君は、僕と来るべきだ。僕を使って世界を守るのは、君なんだ」
「三銃士は解散だ。今までありがとう、俺も、シロネコも、君がいたから楽しかった」
「……」
「厳しい道を選ばずともよかろうに」
『一千億年平行協定』
ルール
1、地球神キュキの配下である十人の天使は、様々な危機を月本市に与える。
2、異界から流れ着いた力を用いて、人類は異能者になる。
3、その異能をどのように使うかは、人の心次第である。
3、全ての世界の危機を克服した日が、審判の日である。
4、天使は残酷な運命を与え、審判の日に、二人の異能者をその場に立たせる。
5、2体の内、人の存続を望む者を【過日の魔王】 人の滅亡を望む者を【世界を滅ぼす獣】とする。
6、2体が戦い、勝利した獣は、人類を滅ぼす。
追加ルール
7、その結末に不服がある場合、月影次郎は時間をさかのぼり、白川実子の消えた日からやり直すことができる。これは月影次郎の魂が敗北を認めるまで有効である。
8、誰が魔王となるか、誰が獣となるかは、不明である。天使長スカイウォーカー・アンサーズであろうとその項目の改竄は許されない。
9、滅びの運命を変えられた時、人はア・イデアと対面する。その瞬間を、『ア・イデアの晩餐会』と呼称する。




