【かんてらっ!】
月本市童子町の農業振興地域内に、どかんと建った私立柊学園。
尋常でない生徒数がひしめければ、その中に含まれる変人の数も多い。
おそらくその頂点に位置するだろうポジションに『かんてら屋』はある。
高町観照
筋骨隆々の大男。甘いものとゆるキャラグッズ集めが趣味。
見た目は怖いが、一言二言会話すれば、人のよさがにじみ出てくる好漢。
人を、強制的に安心させるという超能力『ぐらり』を使う。
友達も、そうでない者も、観照の名を読み替えて、かんてらと呼ぶ。
放課後の、購買横のテラス (生徒会が角材を調達し、物理的に作った)に集まる大男と、その友人達。誰が呼んだか『かんてら屋』。
彼らに相談すると、どんな変な悩みでも、なんとかしてくれるともっぱらの噂。
犬小屋のペンキ塗りから、寂れた山村の村おこし。
呪いのおまじないの調査から、空から落ちてきた宇宙人のミイラまで。
不思議なことが起きやすくなったこの町で、『あっち』と『こっち』その境界線上に立ってしまった少年少女の横にやってきて、一緒に馬鹿騒ぎをする。
この広い世界、そんな青春を送る人間が一人くらいいてもいいんじゃないのかな。
かんてらはそう言って、いつも笑う。
大体、事態は急展開を迎え、最終的に超能力バトルになるのだが。
まあ、この広い世界、そんな青春を送る人間が一人くらいいてもいいのかもしれない。
かんてらの使う『ぐらり』という力は、その他の異能者とは、また毛並みが違う。
魂と肉体を繋ぐ『生命』というエネルギーを流用して、こちらとあちらを繋ぐ『魔法』に対して、『ぐらり』は人の心の弱さを原動力としている。
心臓を介して魂より放たれる微量の波動を、ネガティブな心の揺らぎに乗せて体外に放出し、とても奇跡とは呼べぬ結果を起こす力。
人に触れられることを怖がる少女は、熱を操る術を覚え、誰も彼女に触れられぬようになった。
すべてにコンプレックスを持つ矮躯な少年は、人を転倒させる力を知り、すべてを見下ろすよになった。
自分の罪を認めることのできない彼女には、迷わせる眼が与えられ、誰も彼女にたどりつくことはできなくなった。
後ろ向きな気持ちから生まれた力のせいで、ネガティブ思考をなかなか抜け出せない三人だが、それでもかんてらのおかげでそれなりの日々を送れている。
放課後、テラスに集まってかんてら屋の活動を行えるくらいに。
基本は彼らを笑わせたいという気持ちから始まった。
かつて、世界を滅ぼそうとした魔女として蔑まれたあの人が大切にしていたように。
今も、人の魂を救おうと奮闘する夕焼けの魔法使いのように。
いつの日か【過日の魔王】として、終末を迎えるその日まで、楽しく生きたいと、少年は祈っている。




