蓑笠童子
月本市の田園地域のど真ん中。
どうやって開発の許可がおりたのか裏を見るのが怖い怖い、大きな敷地の私立柊学園。
昼休み。空には分厚い雲が漂い、薄暗い冬間を演出している。
高等部普通科棟三階東から六番目の部屋。
二年一組教室。
二年生女子が二人、向かい合わせに座りおしゃべりをしていた。
「今日は、雨降るかしら」
コーカソイドの父親の赤毛が遺伝したのか、少し色素の薄い髪を無造作に束ねた娘が、対面者に言った。
「天気予報では50%と言っていた。当たらぬも八卦、というやつだろうかね」
おかっぱ髪の、小柄な少女が適当に答えた。
「雨が降るのがわかる『童子』とかいないのかしら?」
「聞いたことはあるさ。<蓑笠童子> レインコートに身を包み、隠れた顔の先から、ちょっとだけ青い角が見える童子だ」
「雨が降るときに現れるとか?」
「あれらは、消えたり現れたり、というのはしないよ。雨雲の少し先を歩く習性があるのだと言う。つまり、それを見たならば、雨が追ってやってくるのだね」
「便利ね」
「ただし、目撃情報が極端に少ない。私の知り合いの『安綱』には、見た者はいないそうだよ。天気予報には使えないね」
「それなのに、姿形は詳しく残っているなんて『童子図鑑』でもあったりするの?」
「そんなのがあれば便利だけれど」
おかっぱの少女は、口元だけ嗤う。
「SNSサイトの安綱コミュニティで回ってきた情報なんだ、なかなか信憑性に疑問ありだ」
「そんなのがあるの……」
雨が降ってきた。
「降ってきたわ」
「私は置き傘があるから少しも問題ないよ」
「ずるいわ」
「先見の明、だ」
「あぁ、じいやに迎えに来てもらわないと」
「……ずるい」




