表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/46

メルヴィッツ生体波動は、魂と魂を引き寄せる性質を持ち、その人間の性質に沿うモノを世界より引き寄せる。

高校一年生、十五歳の彼にとっての現在。


『先生』と思う特別な人は三人いる。



  一人は、両親共働きのため、いつも食事を用意してくれた祖母。彼は「ばあちゃんの飯」を食ってここまで育ったと言っても、過言ではない。そして、両親ともに阿呆みたいに残業の多い仕事をしているため、少年はばあちゃんの家で宿題をして、ばあちゃんの家でテレビ見て、ばあちゃんの家の風呂掃除をしていた。所謂、情操教育からしつけに至るまで、その人間としての芯を作ったのは、彼女だと、彼自身は思っている。人生最初の恩師と、思いはしなくとも、心の刻まれている。


  二人目は、中学一年生の時の担任の先生である。今年から赴任してきた、音楽教師である彼女は、とかく熱のこもった教育をしていた人で、美人だけれど怒鳴り声が怖いので有名で、素行不良な生徒から問題を抱えた子供まで生徒指導に走りまわり、自分の顧問を受け持つことになった吹奏楽部を全国大会に導いて、その先生が来てからは、音楽の授業中に音楽室から聞こえてくる歌声が、大きくなった。少年は音楽系の部活に入っていたわけでもないし、とかく教師の手を煩わせるタイプの中学生でもなかったから、特別な接点なんてなかった。ただ、妙に気が合って、たまにおしゃべりをした。いろんなことを話した。恋愛相談をしたのは、この先生が初めてだった。一度だけ、叱られた。その時の言葉は、いまだに彼の中にある。


  彼の尊敬を集める最後の人は、中学二年生の時に会った、女の子であった。彼女のことはよく覚えていない。けれど、あの夕焼けの綺麗な場所で、彼女は教えてくれた。「鬼灯君。自分のことを嫌いだなんて言っちゃいけないよ。自分のことを嫌いだなんて言ったら、鬼灯君のことを好きでいてくれる人のことまで嫌いって言うことなんだから」ものすごく偉そうに、自信満々の笑みでそう語った彼女の言葉は、彼の心を救ってくれた。


 祖母は、もう亡き人である。けれど、彼女が育んでくれた強い体は確かにある。

 温かい食事が、心を温かくすることを教えてくれた。



 あの先生は、今はもういない。何があったのかわからないが、県内の別の問題を抱えている中学に異動してしまい、連絡先も知らないでいた。けれど、彼女が教えてくれた情熱は、少年の精神に宿っている。

 素直に人と接することを、教えてくれた。


 

 少年が恋した少女は、二度と会えないところに行ってしまった。けれど、彼女がくれた夕焼けのあの日は、確かに今も彼の魂の中にある。

 笑うということは、人に前向きな力を与えることを、教えてくれた。



 鬼灯ほおずきほのおは、このような巡り合わせの中で「善」に傾いた男となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ