平行協定編・根本の話
アカシックレコードと意識を接続する異能を持った少女、白川実子。
彼女は高校二年生の時に、自分の手で世界が滅びるという未来を予知してしまう。
彼女が大人になった時代に、このうみねこ町で【過日の魔王】と【世界を滅ぼす獣】が戦い、後者の勝利により世界が滅びる。
そして、実子は、その『どちらか』になる。
この未来を成就させないために、実子は異世界につなぐ門を作り出し、自らの魂を肉体ごとどこかへ飛ばそうと画策する。
仮想平成30年、うみねこ町に、魔王と獣が揃いさえしなければ、つまり実子がこの世からいなくなれば、この未来には決してたどりつけないから。
星の運命を管理し、世界が滅びようが関係なく未来を遂行する任務を持つ地獄の住人。彼と彼女達はきっと、実子を探しだすだろう。その追跡を振り切るには、彼らの異能でさえ届かない場所に隠れなければならない。
だから、少しでもごまかせるように、入口をたくさん作った。
神話の世界。パラレルワールド。外宇宙。
無限の行く先のどれかを選び、そのどこかへと、消えた。
魔術師であり、県議会議員でもあった父とその仲間達。そして、恋人に後を任せて。
残された者達は、白川実子が消えた世界で、彼女の想いを継ぐために、門を閉じて回った。
白川実子なんて、最初からいなかった世界にするために。
特に、実父白川某が率先して。
そして、それが気に入らなくて仕方ない男がいた。
実子の恋人。加領郷歯車。
絶対に納得のいかない男は、残された扉を守るために、恋人の想いを受け継いだ人間達と争いを繰り広げ、門を、開きっぱなしにしてしまう。
次々と流入する異界生物と異能技術。
その制御のために、この世界に元々あった異能、かつて、別の誰かが開いた門から流れ着いた、人に味方する異人。その力を受け継ぐ特殊能力者達による果てしない戦いがあり、事態は一年の歳月を経て、小康状態に落ち着く。
うみねこ町民と、異界人の中で、事態を理解し、対策を考える者達は、協定を結んだ。
あるべきものを
あるべき形で
あるべき場所へ
流出した異物は、その世界のものが決着をつける。そのための、異界の通行許可を与える。
平行協定が作られるのと同時に、最強の結界能力者・『女帝陛下』の持つ【茨の異能】によって、扉は不安定ながらも閉じることに成功する。
そして、女帝陛下はその見返りとして、少女を一人求めた。
この協定は、空間を抉じ開け外界より友を呼ぶ者がいて、初めて起動する。私ではなく、この町の人間の中に、それが可能な者がいなければならない。この世界の裏になる私の郷。そこにある世界樹の枝の破片を体内に取り込んだものは、私と同じ異能を得るだろう。災いの枝、それを用いる私の巫女を用意して欲しい。
この町に生まれ、偶然帰省中に戦いに巻き込まれ、生き残っている。検査の結果、異界汚染に対する免疫が非常に高い。何より、この戦いの中で、異界の剣士や怪物と相対し、その怒りを沈め、友達となった娘。
女郎屋敷小夜子は、余りにも、その条件にあてはまったのだ。
彼女の左薬指に、小さな人間には見えない棘が刺さっている。
それは、彼女の覚悟に反応して、茨となり、空間に巻きつき、無理やり捻じ曲げ、異界との入口を作る。
それは、かつてこの世界を滅ぼしかけた白川実子が持つ力を同じもの。
その危険性を忘れないために、その力には【災いの枝】という公称が付けられる。




