表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

「…ところでレイゼルさん。こちらで雇ってもらえるって話は本当なんですか?」

机に飲みかけのカップを置き、リンドウは床に置いた鞄から一通の手紙を取り出した。手紙には丁寧な字で差出人『レイゼル・グリスト』、宛名『リンドウ・クロウズ様』と書かれている。

「なんでも使用人として住み込みで働けるのだとか…」

リンドウの言葉に、彼女…もといレイゼルは「もちろんですよ」と笑顔で頷いた。






「貴方とは昔からの付き合いですもの。困ったときはお互い様とよく言うでしょう?」

「っ…ありがとうございます」

レイゼルの言葉に胸がじぃんと熱くなり、リンドウは深々と頭を下げた。しかし、彼女は「いえいえ」と謙遜しカップを机に並べる。

 「そんなに頭を下げないでください。あ、そういえばリンドウさん。」

 「はい?」

 「制服の事なんですが、本当にあれでいいんですか?随分と変わったデザインを注文されていましたけど…」

 「ええ、あのままでお願いします。あの格好が1番動きやすいので」

 「そうですか…ふふっ」

 「どうかされましたか?」

 「いえ、そういう少し人と変わっているところ、貴方のお姉様…スイレンさんとそっくりね。なんだか昔を思い出します」

 

 「……!」


 



 『スイレン』

 その名前を聞いた途端、リンドウは肩を強張らせ、目を見開いた。膝で握り締めた拳が小刻みに震え、嫌な汗が頬を伝う。










 



 ―リンドウッ!


 えっ?















 …お姉ちゃん?


 う、そ…だよね……?


 ねぇ…そう、だよね?


 …なんで?

 ねぇってば……返事してよ……

 お姉ちゃ…っ!!










 どうして…

 何故だ?何故お前が生きているんだ…!?


 お前が…

 お前が死ねばよかったのに!!









 近寄らないで!

 アンタの顔なんか見たくない!!













 「……ドウさん、リンドウさん!」

 「……っ!!」

 「どうかされましたか?」

 

 顔を上げると、向かいでレイゼルが心配そうな顔でこちらを見ていた。



 (何してるんだ、しっかりしろ。こんなところで取り乱してどうする。

  もっと冷静にならないと…)

 深呼吸を繰り返し、どうにか平常心を取り戻す。

 「いえ、何でもありません。それよりこちらではいつから働かせて頂けるのでしょうか?」

 「ああ、それなら今日制服を渡しますから、明日からでいかがでしょう?今日はここに泊まっていって下さい」

 「…お願いします」

 「では、ここで少し待っていてくださいな。貴方の制服を取ってきます」







 



 そう言ってレイゼルが部屋を出て行った後。



 



 冷え切ったお茶を口にしながら、リンドウは一人、天窓から覗く太陽を眩しそうに見つめた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ