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開いた扉から入ってきたのは、リンドウがよく知っている人物だった。
「気に入った本でもありましたか?」
「……! いいえ。すみません、勝手に見てまわって」
「いいんですよ。貴方は昔から書物が好きですものね」
「………」
「ささ、立ち話でもなんだし早くおかけになって」
母親のような暖かい笑みを向けられ、リンドウは少し戸惑いながらも用意された椅子に腰掛けた。
「今、お茶を用意しますから」
「い、いえ。お構いなく」
「そんなこといわずに。このお茶香りがよくてとってもおいしいんですよ」
「はあ…」
彼女がカップへお茶を注ぐと、部屋は直ぐにハーブのよい香りで満たされた。天窓から差し込む光が揺ら揺らとゆれ、殺風景な一気に部屋が幻想的になる。
「はい、どうぞ。熱いから気をつけて」
「あ、ありがとうございます」
受け取ったカップには、蜂蜜色をした液体が湯気を立てながら入っていた。向かいの椅子で彼女がお茶を飲むのを確認し、恐る恐る口を付ける。
「あっ……おいしい」
「でしょう?」
リンドウの反応に満足したのか、彼女は昔と変らぬ眼差しで微笑んだ。