3
リンドウは天高く聳え立つ城の前で仁王立ちをし、睨みつけていた。
城の周りは鬱蒼とした森が広がり、辺りは静寂に包まれている。
「……行くか」
目の前のドアを見据え、リンドウは深呼吸をした。何度か繰り返し落ち着かせると、ドアを二、三度ノックする。
「はい、何か御用でしょうか?」
暫くすると、茶色のスカートと白のブラウスを身に着けた使用人らしき若い女性が顔を出した。まだ働くようになって間もないのだろう。リンドウの事を知らないらしい。訝しげにこちらを見る女性に、リンドウはあくまでも毅然とした態度で話した。
「今日からここで働くことになっている『リンドウ・クロウズ』という者です。『レイゼル・グリスト』という方にお会いしたいのですが」
すると女性はパッと顔を綻ばせ、リンドウを中へと招き入れた。
「その話は存じております。では、こちらへ」
女性に案内され、たどり着いた先は焦げ茶色の扉の前だった。リンドウは女性に礼を言い、少し色のくすんだドアノブを回した。
「…失礼します」
扉の中は少し殺風景な世界が広がっていた。
床に敷かれた濃い赤色の絨毯。壁の本棚にぎっしり詰まった多種多様な本。部屋を照らす少し暗めのランプ。
…何故だろうか?個々をみているとそうでもないのだが、部屋全体を眺めるとやはりどこか物悲しく感じる。
辺りを見回してみたが、どうやら人はまだいないようだ。仕方がないので、暇つぶしに本棚の本を覗いてみる。
本は薄いものや厚いもの、古いものや新しいものがごちゃ混ぜになっていたが、すべてピシッと綺麗に隙間なく並べてあった。それら一つ一つの背表紙をなぞりながら、舐めるようにして見ていると、ふと目に留まった本が一冊あった。
「これは……絵本?」
その本は他の書物に比べ一際古く、また同時に丁寧に管理されいて外傷が少なかった。背表紙には薄くはがれかけた赤色で『国の始まり』と書かれている。
「どうしてこんなところに、絵本が…?」
本に吸い寄せられるように手を伸ばしたとき、リンドウの背後でドアが開く音がした。
感想・評価頂けると嬉しいです