表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

いや~、投稿するのにムチャクチャ時間掛かりましたw


この時期って結構、忙しいですよね

深き闇に包まれた夜、とある少女は城内を食事が入った盆を持ち、ある場所を目指していた。城の廊下を進み、幾重にも重なった薄暗い階段を下ったその先には、大きな鉄の扉が佇んでおり、他の扉とは明らかに造りが異なるその扉の前には、全身黒ずくめの男が仁王立ちで立っていた。


 少女は中身を零さぬよう、慎重に男に盆を差し出した。

 「あの、お食事です」

 「………」

 「え、えっと、今日は何時も来る人が風邪を引いてしまったみたいで……私が代理できました」

 「………」


 黒ずくめの男は少女にねぎらいの言葉ひとつ掛けず、無言で盆を受け取り、そのまま鉄の扉の中に消えた。


 少女は男が消えた後も、暫くその場に立ち鉄の扉を眺めた。鈍い色を放ち、威圧感を漂わせながら佇む扉は、見るだけで、城から切り離されたような錯覚を覚えた。

 

 この扉の先に何があるのか。

 それをこの時、少女が知っていれば、あのようなことは起こらなかっただろう。




 しかし、


 何も知らない無邪気な少女は、扉の中の世界に好奇心を燻られ、そっと扉に手を当てた。

 「扉を開けてみたい」という欲望に駆られ、更に扉を強く押したとき


 ギギギッ


 「えっ?」


 金属の擦れる音がして鉄の扉が勢いよく開いた。少女は避けるまもなく扉の中に投げ出される。

 「うわぁぁあ!」

 手を付こうとしたが間に合わず、勢いよく顔を床に打ちつけた。


 「いたた……」

 痛さのあまり鼻をさすっていると背後で、又もや勢いよく扉が閉まる音がした。慌てて駆け寄って思いっきり引いてみるが、扉はびくともしない。唸りながらも粘ってみたが、開く気配は一向に無く、何とかさっきの男に開けてもらおうと思い、奥へと進んだ。

 





 廊下は明かりが無いため暗く、全体が石造りなので壁を触るとどれもひんやりと冷たい。螺旋状に連なった長い階段を進むとそこは大きな部屋のような空間になっていた。空間は今までより一層暗さが増しており、強い鉄の匂いが漂っている。

「あの…誰かいませんか?」


 呼びかけて見たが、声が虚しく反響するだけで、返事はない。

 しかし、暫く壁沿いに進んでいると、前方から何かを引きずるような音が微かに聞こえた。

「あ、誰かいらっしゃるんですね。では、少しそこで待っていて……」

 少女は顔を上げ、言いかけていた言葉を呑んだ。そして闇に浮き上がったそれを凝視した。




 少女の見たもの、それは闇夜にゆらゆらと浮かぶ灯火ともしびのような、二つの緋色の目だった。鮮やかな緋の目は、逸らすことなく少女を見つめ続けていた。


 その瞳に吸い寄せられるように、少女は口を開いた。


「あ、あの……」

「………」

「あなたは、さっき扉の前でお会いした方ですか?」

「………」

「その目……」

「………!!」

 少女のこの言葉に人影は酷く動揺した。決して、逸らす事のなかった瞳を見開き、一歩後ずさった反動でこちらに何かを転がした。何かはそのまま転がり続け、やがて少女の足元で動きを止めた。


 少女には最初、人影ばかりを見ていたため、転がってきたものが何か分からなかった。が、それが何かを理解した瞬間、声にならない悲鳴を上げ、その場に座り込んだ。



 何故なら転がってきたものは、

 






 目を見開き、恐怖で顔を歪めた


 ――男の生首だったからだ








 初めて見る、人の「死体」に冷や汗が頬を伝い、全身がガタガタと震えた。そしてこの男を殺したのは誰なのか、それを本能で直感した。


 「い、いや……」

 少女は緋の目を見つめたまま、ゆっくりと後退した。


 ここに居たら自分も殺される。

 そんな気がしたからだ。

 

 「いや……」


 しかし、緋の目は少女が離れるごとに、距離を詰めていった。物を引きずるような音を響かせながら、徐々に、徐々に、まるで獲物を狙う獣のように、緋の目は少女の方へと近づいて来るのだ。


 ズリッ……ズリッ…


 「来ないで…」


 ズリッ…


 「いやっ」


 不意に背中に何かが当たった。

 恐る恐る振り返ると、そこにはぐにゃりと左右に捻じ曲げられた鉄格子があった。鉄格子の中は、さっき少女が運んだ盆と水の入った皿があり、壁には幾つもの傷が入っている。

 「な、何これ……」

 思わずそう、呟いた瞬間、






 少女の耳元で、抑揚のない声が響いた。

 「動くな……」

 「ひぃっ」


 


 声の主は少女の体に覆いかぶさり、喉元に何かを当てた。

 ―こ、殺される


 死を覚悟した少女は目を見開き、震える体を腕で支えた。

 

 ―誰か…助けて……



 しかしそんな小女に対し、声の主は少女の肩に手を置き、鋭く尖る爪を食い込ませながらこう囁いた。






 「俺の存在を……誰にも明かすな」



 


 その刹那、




 少女の視界は、赤一色に染まりあがった。




















 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ