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新連載始めました!!
こういう書き方はあまりしたことがないので、不自然にならないよう頑張ります!
月の光が差す事のない新月の晩。
この辺りで一番の勢力を誇る王族、ゼイレスト家に今まさに新しい命が誕生しようとしていた。
「はぁっ…ふぅ、ふぅ…」
「奥様!後もう少しです!!」
「くっ…!はぁはぁ…」
使用人の声を聞きながら、かれこれ三十時間近く戦いを続けている皇后、セレンはぐったりとした様子で頭を垂れた。難産のためか体力は限界に近づき、髪は乱れ、虚ろな目で明日の方向をボンヤリと見つめている。最早意識があるのかも定かではない。
朦朧としたセレンの様子に居ても立っても居られなくなった国王、グラジオスは、セレンの手を取り励ましの言葉を掛けた。
「頼む。もう少しだ、もう少しだけ頑張っておくれ。」
グラジオスはセレンの額を優しく撫でながら、言葉を掛け続けた。その目は慈愛に満ちており、行動一つ一つに相手を愛しんでいるのがよく分かる。
そんなグラジオスの想いが届いたのか、セレンは虚ろだった目の焦点をグラジオに定め弱々しく微笑みながら、手を握り返した。
「あなた…はぁはぁ……うっ!」
「セレン!」
「奥様!」
「うぁっ!ああああっ!!」
皇后の悲鳴に近い声と共に、部屋中に元気な泣き声が響いた。
「あぁ!セレン!!」
グラジオスは喜びの余りセレンを強く抱きしめた。その腕は微かに震えており、セレンもそれに答えるかのように力なく抱き返す。
「よく頑張ったな!セレン!!今日から私達は父親と母親だ!」
「ええ……それより、あなた……赤ちゃんを早く……」
「あ、ああ!そうだな!!」
グラジオスは滲んだ涙を拭い、我が子を見るため急いで使用人たちの元に向かった。が、なにやら使用人たちの様子がおかしい。皆一様に動揺して赤ん坊から目を背けている。
「なんだ?何かあったのか?」
「へ、陛下!」
使用人の一人の声を掛けると、その使用人は困ったように視線を横へ逸らした。
「我が子がどうかしたのか!?」
「いや…それが」
「どけ!見せろ!!」
グラジオスは使用人たちを押しのけ、念願の我が子との初対面を果たした。
しかし、その表情は歓喜にではなく、恐怖へと染まっていく。
「何ということだ……あの伝説は真であったか…」
そう声を振り絞りながら、グラジオスは赤ん坊を抱きかかえることなく、凝視した。
紅く鮮やかな色をした瞳に少しだけ生えた紫紺の髪。
手先の方から徐々に人間の姿から別の『何か』へ変化していく様子はおぞましく、この赤ん坊が普通の子供ではないということは誰の目にも明らかだった。
その余りの姿にグラジオスは言葉を無くしていたが、後ろから聞こえたセレンの声にハッとした。
「あなた…?赤ちゃんがどうかしたの?」
心配そうな声で尋ねるセレンは、まさか自分の腹から出てきた子供が『呪われし者』だとは夢にも思っていないだろう。
ここでセレンに真実を話してはいけない。話せばセレンはきっとこれから先、悲しみに打ちひしがれるに違いない。
そう考えたグラジオスは、無理やり顔に笑みを浮かべセレンに「大丈夫だ」と答えた。
そして、周りにいる使用人たちに向かってこう命じた。
「皇后には赤ん坊は死んだと伝え、絶対に真実を伝えてはならぬ。そしてこの赤ん坊は一ヶ月間だけ皇后の目に付かぬよう世話をし、後は地下の牢屋に入れておけ」
こうして孤独な『異形』はこの世に生を受けた。