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広間から追い出された私と二宮さんは入り口付近で入学式の進行を見守る。
「ごめんなさい」
私は二宮さんに対して謝る。
「いえ、私のほうこそ思い出せなくて…」
二宮さんは本当に申し訳なさそうにこっちを見てくる。
「そのことなんだけど私達初対面です。からかってごめんなさい」
「えっ? でも何で私の名前を?」
「椅子のところに名前が書いてあって、ほらっこれ私の」
追い出される際に椅子からはぎっとた戦利品を見せる。
「木下恵美さん?」
「そう、よろしくね」
私はにっこり笑って手を出す。
「あっ、はい」
反射的に出された手を握ってくれ笑ってくれた。
追い出されてしまったが友達一人できたのだから結果としてOKだろう。
うん、OKだ。
「でも本当にびっくりした。誰も知っている人いないと思っていたからいきなり名前を呼ばれて」
二宮さん空いている左手で胸を押さえている。
少しこちらを伺うように首を傾げて見てくるのが何か可愛い。
「抱きしめたいぐらい…」
「えっ?」
ぼそりと思わず心の声がもれ出る。
誤魔化すように握手していた手をぶんぶん振って
「ともかくこれからよろしくね」
と私は言ったのだった。
私達が軽く自己紹介をしている間にも入学式は粛粛と進んでいた。
後ろから見ていると保護者や関係者のほうが人数が多い。
校長や来賓のお偉いさんなどの挨拶がおわり閉会の挨拶がなされた。
新入生はオリエンテーションを広間で行うのでその場に残るようにとお達しがあり保護者や関係者の人たちが外に出て行く。
出て行く際に視線を感じて居心地が悪いことこの上ない。
隣にいる二宮さんも居心地悪そうに俯いて視線をやり過ごしていた。
もしかしてあとで反省文でも書かされるのかしらと思っていると。
「そこの二人。」
受付にいた女の人に突然声をかけられる。
「私についてきてくれる」
「あのオリエンテーションは?」
二宮さんが広間のほうをちらりと見る。
「それはいいから」
私と二宮さんは顔を見合わせる。
「とにかくついてきなさい」
女の人はそういうと講堂の外へと出て行ってしまう。
どうしようと二宮さんがこっちを見てくる。
私も聞きたいぐらいだが、広間では説明が始まっており今さらそこに加われない。
「ついていくしかない…よね」
私達は女の人を追った。