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「ねぇ、お母さん。これでいいの?」
新しく袖を通した制服をきて私はたずねる。
「ばっちりよ」
母は太鼓判を押してくれたが一抹の不安をかかえて鏡に姿を映す。
新しい制服は着心地が悪くそわそわするのだ。
「大丈夫よ。そんなに心配しなくても、たかが高校の入学式でしょ」
「ひどい、お母さん知ってるくせに」
「まぁ、そうだけど。あまりのはしゃぎぶりにね」
朝早くからおきて鏡を占領する私にあきれるのも無理ないかもしれない。
でも今日は待ちに待った高校の入学式である。
私の夢に一歩近づくのだ。
今日から通う宇宙学園は宇宙に一番近い高校なのである。
立地的に?大気圏付近とか?
そうではなくて宇宙工学の専門の研究機関が併設されている珍しい高校なのだ。
ロケット開発に天体観測所に宇宙飛行士訓練施設までついている。
宇宙にかかわりたいと思えるならぜひここに行くべきであろう高校なのである。
実際に津々浦々から生徒が集まるらしい。
私の住んでいる市にあるので自宅から通うこともできる。すごい幸運を感じるし縁を感じることができたのだ。
「本当に大丈夫?」
「しつこい!早く行かないと遅刻するわよ」
「は~い」
「仕事で見にいけられないからあれを持って行っといて」
母は父と母と私と三人が写った写真たてを指差す。
「そうだね。お父さんも宇宙好きだからうちの高校見てみたいだろうしね」
私は新しい学生バッグの中に写真たてをいれる。
「そうよ。本当に宇宙のことばかりだったから…。頼むわね」
「いってくる」
私は心を躍らせて玄関のドアを開けた。