4章‥白いアンノウン
目の前には全身を白装束で纏った者達が3人。
バイルは目の前の者達が纏っている白装束を見て黒装束を纏ったアンノウンを思い出し身震いがした。
女の子を背負って逃げ切るのは無理だ…。
『万事休すか…。』
その時突然身が軽くなると同時に背負っていたはずの女の子が目の前にいる白装束を纏った者達へと走りだした。
白装束の者達は女の子と暫らく話した後物凄いスピードで目の前から去っていった。
何なんだ‥?あの子は白装束の仲間なのか?
『あの‥助けて頂いて有難うございました。』
女の子はバイルに近づき礼を言った、不思議な事に傷だらけだった女の子の体から傷は完全に消えていた。
『体は痛くないのかい?』
『はい、もう何とも無いみたいです』
バイルはこの時初めてこの女の子もアンノウンだということを理解した。
女の子の驚異的な自然治癒力にバイルは驚きを隠せなかった。
『ついさっき黒装束を纏った者に襲撃されて仲間達とはぐれてしまった。』
『そうですか…よくご無事で‥それにあなたが殺されていたら私も生きてはいなかったでしょう。これも何かの縁ですね私達の里へご案内します。
あ、まだ自己紹介が未だでしたね。私はヒユリと言います』
女の子は年の割には礼儀正しかった。
『俺はバイルだ。』
『ではバイルさん行きましょうか』
バイルは暫らく深い森の中を歩き続けた。
ようやく里に着いた頃にはバイルは歩き疲れて足が棒のようになっていた。
ヒユリに連れられ里の中へと入って行く。
里の中は石で作られた家が多くその中でも一際目を引いたのは神殿のような豪華な建物だった。
ヒユリは神殿の扉の前で立ち止まり扉に手をかざしたすると大きな扉が音を立てて開いた。
バイルは度胆を抜かれた。石造りの家に神殿…手をかざすと開く扉…。
この扉は間違いなく高度な科学の力が働いている。
ヒユリは神殿の中に入っていった。
バイルは神殿の中を見渡したがこれといって不思議な物は何も無かった。
ただ中央にある円卓のテーブルが印象的だった。
その円卓のテーブルには数人の人達が座っている。
遠くて顔は見えない。
ヒユリはその人達と話している。
その時バイルの背後から誰かが話し掛けてきた。
『お前人間だよな?黒装束の奴らに襲われてどうやって逃げ切ったんだ?』
話し掛けてきたのは二十歳前後の両肩に不思議な文様の入れ墨が入っている男だった。
『運が良かっただけだ。
その時仲間とはぐれてしまった…。』
『そうか…残念だが期待はしない方がいいぞ。
奴らは容赦ないからな。
お前が助かったのも奇跡みたいなもんだ。』
『……。』
『ヒエン兄さん!!』
バイルの背後から声が聞こえた。
『ヒエン兄さん、この人が私の命を救ってくれたバイルさんです。』
『礼がまだだったな、妹を救ってくれて感謝する』
『礼なんていいさ、倒れていたこの子を放っておく訳にもいかないからな』
『ところでバイルと言ったか?ここ数世紀の間アンノウンと戦い続けている人間達がいるらしいがお前達もその者達の一人なのか?』何と答えたらいいものなのか…とりあえず‥。
『いいや、俺達が住んでいた国が滅ぼされてな…。』
『そうか…このままでは黒装束の奴らに人間を絶滅させられるだろうな。』
バイルは絶滅という言葉を聞いて唖然とした…。
地球は全く違った歴史を歩んでいる…これは一体どう言う事なのか。
アンノウンの起源について知る必要がある…。
『ヒエン、君達の起源について色々と知りたいんだが』
『俺達の起源?神話の話か?神が俺達を創ったて言うやつ??その話なら爺さんが詳しいな、案内するから俺の家にこい』
バイルはヒエンに連れられヒエンの家へと向かった。
ヒエンの家も石造りで入り口にはまたしても手をかざすと開く扉。
バイルは中に入った。
中央にはガラスのようなテーブルがあり椅子はゴムのような素材で作られている暖炉のような物は無いが部屋全体が暖かかった。
『何故火も炊いていないのにこんなに部屋が暖かいんだ??』
『部屋で火を炊くだって?そんな事しなくてもこの石があれば自然と温度を調節してくれる』
そう言いながらヒエンは家の壁をコツンと叩いた。
『この里の家はみんなこの石で出来ている。
ちなみに俺達が羽織っている白装束も同じような性質があるんだ』
どうやらこの里には未知の技術で造られている物が多々あるみたいだな…。
『爺さん、ヒユリの命の恩人を連れてきたぞ。』
『ヒユリを助けて頂き何とお礼を言ったら良いのか』
バイルは爺さんと呼ばれた人の顔を見たが爺さんと呼ばれるには未だ早い、外見的にはまだ30代半ばといった様子だ。
『爺さん、俺達の起源について詳しく知りたいんだってよ』
『起源か…我々はもともとは普通の人間だったらしいが神の手によって造り直されこのような存在になったらしい。
まぁ神話だからな、私の考えでは人間とは違った進化をしたのだと考えているんだが。』
『人間とは違った進化ですか…。』
全く変わってしまった歴史の中で誕生したアンノウン…時空間を移動するとこういった事態を引き起こしてしまうものなのか。
文明をやり直すどころか
文明そのものを破壊しかねない…何という恐ろしいものを造ってしまったんだ。
この事を太古の地球に向かった人々に伝える手段は存在しない…。
ただこの事に気が付いてくれる事を祈るのみだ。
その時慌ただしい様子でヒユリが家に入ってきた。
『ヒエン兄さん、神殿に来て!!』
ヒエンとヒユリは神殿へと走っていった。
暫らくしてヒエンとヒユリが戻ってきた。
『我らの里の回りを警戒していた守備隊からの連絡が途絶えた。何が起こってるのか分からないが黒装束の奴らからの襲撃に備えて女子供は神殿の中に非難しろとのことだ。』
バイルは戦力にはならない為ヒユリと共に神殿へ非難した。
神殿の中には大勢の人達が集まっている。
『こんな事初めて…どうなっちゃうんだろう。』
ヒユリは不安な表情をしながら俯いていた。
『大丈夫だ、ヒエン達がなんとかしてくれるさ兄を信じろ』
『うん…。』
どれくらいの時間が経ったんだろうか…。
辺りは完全に暗くなり神殿の中は月明かりで辛うじて照らされていた。
バイルは薄暗い神殿の中で睡魔に襲われ次第に眠りに堕ちていった。
辺りに警報が鳴り響いている…。
真っ赤に染まった白衣を着た男は001と書かれた部屋の扉に手をかざした。
扉は音もなく開き男は部屋の中へと入っていった。
部屋の中には人間が入れるくらいの大きさのポットが複数設置されていた。
男は背中に背負っている髪の長い女を床にゆっくりと寝かせた、女も真っ赤に染まった白衣を着ていた。
男はゆっくりとコントロールパネルの様な物に近付きパネルを操作した後パネルに手をかざすとポットの扉が音を立てて開いた。
床に寝そべっている女を抱え上げ開いたポットへとゆっくりと歩いていく。
女をポットの中へとゆっくりと寝かせると男は傷だらけの女を見つめ、ゆっくりと口を開いた。
『我々はパンドラの箱を開けてしまった…慢れる人間に神の裁きとはこの事か』
男はゆっくりとコントロールパネルへと歩いていきパネルに手をかざした。
女の寝ているポットが音を立てて閉まった。
男は女の入っている隣のポットの中へと入りポットの中にあるパネルに手をかざしゆっくりと目を閉じた。
悪魔を生み出してしまった我々に未来はあるのだろうか…。
バイルは眠りから覚めた。辺りはまだ薄暗い。
どうやらまだ夜は明けてないらしい。
隣にいるヒユリは眠っている様だ。
その時外が騒がしくなった
『奴らが来たぞー!!
黒装束の奴らだ!!』
男の声が聞こえたと同時に外が一層騒がしくなった。
何かがぶつかる音や男達の悲鳴が絶え間なく聞こえる
しばらくして音が止みそして神殿の扉が開いた。