第一章§《全ての始まり》
悪魔……。
逃げ惑う人々の首が次から次へと吹き飛んだ。
黒装束を纏った悪魔は人形を破壊するかの如く軽々と人間の身体を破壊していく。
この世に存在する筈の無い悪魔が目の前に存在していた。
規則的な振動が身体に伝わる、いつの間にか眠ってしまっていた。
もうどれくらいの時が経ったのだろうか……。
懐中時計の時代測定値は何度見ても1453と表示されている。
誤作動か。
全く冗談にしては笑えないな、こんな時代で死ぬなんて御免だ。
太古の時代に向かった筈なのに、こんな時代に辿り着いてしまうとは。
それにしてもあの化け物は一体何なんだ……。
人間の姿形をしてはいたがあれは違う。
人間の首を素手で吹っ飛ばし、数メートルも跳び跳ねる……。
そんな人間が存在する筈は無い……人間もどきの化け物め。
奴ら、一緒に転移してきた人達を次から次へと殺しやがった。
ダルフィンまで……。
だけどあの時、騎士達が通りかからなかったら間違いなく俺達は殺されていた。
バイルもユンゲも恐怖のあまり黙り込んでいる。
『君達は運が良かった、アンノウンに襲われたら死は免れない』
運が良かった……?
冗談ではないぞ。こんな訳の分からない時代に転移してしまった挙げ句、あんな化け物まで出てくるなんて……。
夢なら覚めてくれ。
『君達は何者なんだ?変わった服装をしているが、アンノウンを知らないと言っていたが本当なのか?』
未来から来たと言っても理解されないだろう。
『俺達は祖国はアンノウンに滅ぼされ、遥々逃げてきたんだが』
『そうか……我々の国に来るといい歓迎する』
『助かる、感謝の言葉も浮かばない』
『なぁに、気にする事は無い。私の名はジル・ド・レだジルと呼んでくれ』
騎士は兜を脱ぎ笑顔でそう答えた。
ん?ジル・ド・レ……??どこかで聞いた名前だな……どこだったかな。
ジル・ド・レの後ろにいた騎士も兜を脱ぎ握手を求めてきた。
『コレ・デゥ・ヴィエンヌだ、仲間にはコレと呼ばれてる、よろしく。』
コレ・デゥ・ヴィエンヌ?どこかで聞いた名前だな。
それにしてもジルといいコレといい何て眼力をしているんだ……。
アンノウンから助けてもらった時の凄まじい迫力が忘れられない。
その時俺達の背後で岩が崩れる様な大きな物音がした……。
そしてそれは襲ってきた。