表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

RE:亡霊

作者: 時計
掲載日:2011/09/13

 もう限界だ。

 暗い部屋で膝を抱いたまま切実にそう感じた。

 このままでは二つ残酷な道が待ち受けているのは俺にとっては明白なことだった。

 俺は、このまま歩いていなければこの坂道を転げ落ちて死んでしまうだろう。

 殺人か自殺か。

 このまま真っ直ぐ行ってしまえば俺はそのどちらかを犯すことになるだろう。

 そうなる前にどうにか手を打たねばならない。

 それは至極簡単なこと。

 アイツとの関係を永遠に断ち切ること。

 これからはアイツに電話もメールも何もせず触れないことが条件だ。

 俺とアイツ、Sは中学の同級生だった。

 中学の頃のSとははっきり言って思い出なんかない。それは決して彼への印象が薄かったのではなく俺とSが接することが少なかったからだ。Sは俺の友達の友達にあたる人物だった。

 そういえば何度かカラオケに言った覚えがある。歌うアーティストが俺とよく似ていたのを覚えている。

 だが、それだけ。話したことが無い訳ではないが俺とSは仲良くなんてなかった。

 中学を卒業し、Sと会うことももうないだろう。なんて感慨さえ浮かばないほどの関係だった。

 しかし、案外あっさりとSと俺は再会した。

 大したことじゃない、高校一年生の夏休みの頃、カラオケに誘ってみただけ。

 その後も俺は何度もカラオケの会を主催した。

 最初は六人、七人なかなか賑やかな会だったが。回を重ねると次第に四人、三人と減っていき、ついには二人きりになってしまった。

 皆、メールや電話しても何かと理由をつけ来れないの一点張りだった。

 考えてみれば、皆せっかく高校に入ったのだから高校の友達と遊んでいるのだろう。

  少しだけ羨ましい、そう思った。

 中学の頃はうまくいっていた。高校に入学した。友達ができた。友達だと思っていた。

 俺が原因だったのだろう、そう割り切ることが俺にはできなかった。

 周りからの風当たりも一層強くなった。

 そして今も一人また一人離れていく。

 Sをカラオケに誘った、二つ返事で了承した。

 買い物、ボーリング、ゴルフ。Sは嫌な顔一つせずついてきてくれた。

 しかし、距離が縮まるほど求めるもの、気になることは増えるものだった。

 俺が誘った誘いに遅れてきた。たかが五分、しかし俺はその五分間地獄にいるようだった。

 カラオケで自分の歌を聴いた感想を聞いた。不評だった、落ち込んだ、また当たり散らす。

 それからは不満ばかりがつのり、Sへ不満をぶつけ続けた。

 それでも、俺はSといると楽しかった。

 しかし、俺の中で別の感情が芽生えていた。

 それに気づいたのは春休みに入った三月頃の話。

 その日、俺はSを夜の散歩に誘った。

 俺は、少しだけその感情を言葉に込めてSへ届けた。

 急に取り乱し、話をそらされ続けた。Sとはその晩そのまま別れた。

 

 自分に素直になった結末がこれだ。

 なんて気持ちを俺は抱いてしまったんだ。

 どうすればいい

 俺は離れてほしくない。だけどSは俺からどんどん遠ざかっていく。

 原因は俺にあるので、誰に相談することもできない。

 かといってこのままにしておけば俺の頭が狂ってしまう。

 Sと離れたくはない。

 つなぎ止めたい。

 思えばSには苦労ばかりかけていました。

 俺の身勝手に付き合わせて挙句の果てにはけ口にされたのだから。 こんな書き方をしてしまうと、まるで俺がSと付き合っていて挙句の果てに肉体関係まであるような気持ち悪い文章になってしまっているが、俺とSは男同士で、この関係がこの先進展する可能性は0に近い。

 翌日、電話をした。出なかった。メールを送っておいた。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話をした。

 電話を…………………………………………。 暗い部屋で、携帯の画面を覗き込み

 メールを送った。

 メールを送った。

 メールを送った。

 メールを送った。

 メールを送った。

 メールを送った。

 メールを送った。

 メールを送った。

 メールを送った。

 メールを送った。

 メールを送った。

 メールを送った。

 メールを……………………………………。

 外が暗くなり、夜の闇が部屋に浸食しだした頃。

 その暗さに、さみしさに、押しつぶされそうになり。

 Sに助けてほしかった。

 Sの部屋をノックするようにただメールを送り続けた。

 

 電話をかけた。

 ―――お客様の電話は―……。

 

 ドアが一つ砕けてしまった。

 ドアを叩いた。

 次第に強く。

 次第に早く。

 

 ドアは決して開くことはなかった。

 夜の暗闇が、寂しさから逃れる術は二つしかない。

 俺はその一つの可能性にすがり続けた。

 もう限界だ。

 この最後のメール。

 これを送って……。

 もう夜の闇は足元へ、寂しさは背後まで迫ってきていた。

 それから逃れる術は二つしかない。

 すがり続けた可能性はやはり0で、どんなにすがりつき。泣き喚いても

 その数字が覆ることはなかった。

 不思議と憑きものがとれたような気持ちだった。

 俺がSのためにできること。そんなかっこいいことは言わない。

 俺がその現実から逃れるためにすること。

 そして俺は――。

 

 

  

 ドアが開いた音がした。

 でも今の俺にはそれを確認する目も体もなかった。

 

 ―――夜の闇と寂しさが肩を叩いた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ