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在らぬ者は名を持たない  作者: 紋 余白


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第四章『取沙汰』

明朝、ギルド。


呼び出しに応じて早くに来訪したものの、暫く待つよう告げられて以降、一向に呼ばれる気配がない。

行き交う冒険者や依頼に訪れる人々を何の気なしに眺めていると、視界の端から声を掛けられた。


「あ!お疲れ様でっす!ねぇねぇ、知ってますか?」


顔馴染みの職員だ。俺より少し歳下、くらいだろうか。何故かいつも気安く声を掛けてくる。


「…なにを?」


彼の方へ顔を向け、言葉短に返す。

食い付いた!とばかりにやたら瞳を輝かせながら、グイッと顔を寄せてきた。


「ここ最近、絶体絶命のピンチ〜ッ!って時に、謎の人物から助けてもらったって報告が増えてるんす!あ、でも『人物』なのかどうかも分からないらしいんすよ。誰もハッキリ見たことないっつってるとかで。でも介入の手口が〜……」


そんな都合のいい話があるものだろうか。どうにも胡散臭いが、そんなことを考えている間にも彼の口は止まらず回り続ける。


「で!有名なとこだと、王都での爆破事件とか〜…あと、修道女拉致事件とか!他にも大小あれど、多岐に渡って絡んでるじゃないか〜って噂で」


「拉致事件って、隣国が絡んでたって話の?」


聞き覚えのある単語に反応して首を傾げる。


「そう!事件関係者が謎の人物の関与を仄めかしてたらしいっすよ!そしてそして〜……それらしいのが昨日も出たって話で!ほら、猫探しに行ってた森!あそこの浅いとこでベアー系のモンスターから襲われた、ってパーティの証言なんすけど!」


(……あ、)


ベアー系、というと昨日のアレか?でもそれは俺がやったことだから、噂の人物?とやらは介入していない。


「アランさん!お待たせしました、こちらへどうぞ!」


突然呼ばれたことで思考が止まる。まだ話し足りなげな職員に軽く手を振り、窓口へと向かった。





その背を見送った職員は、その場で軽く背伸びをし……先程アランへ伝えた話を頭の中で反芻する。


「いや〜……何度聞いてもマジでカッケーよなぁ、『在らぬ者』!」

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