ポッテの独白、2
「なぁ、アンタが『在らぬ者』なんだろ?」
殆ど確信を持って告げた言葉に対してどんな反応をしてくる?狼狽えるか、それとも尊大になるか?そんなオレの予想を裏切り、ただ微妙に訝しげな視線だけを返してきた。は?なんだその反応。
返事をするでもなく掲示板に視線を戻したアランは、依頼の紙を取って窓口へ向かって行っちまった。逃がすまいと肩に回した腕は、振り払われるでもなくストンと落ちた。オイオイオイ、コイツ感情がねぇのか??普通もうちょっと何か、何かあるだろって。
「ちょ、ちょい待てって!少しは反応しろよ!」
思わず声を掛けたものの、無反応。人をここまで綺麗に無視する奴が居るとは、この歳まで知らなかった。
そのままギルドを出ていくアランの背中を追う。もうすっごい声掛けまくってんのに全部無視。なんなのマジで、ビックリし過ぎていつもみたく言葉が出てこねぇ。
しかし、なんとかかんとか捻り出した。
「お前、あの街道での事件に絡んでんだろ!?知ってるぜ、その左腕……えらい怪我してたもんなぁ?!」
アランがピタリと足を止める。オレはお前が隠してることを知ってんだ。それが分かれば、そんな態度取ってらんねーだろ?ほら、何とか言えよ。「そうです、自分が『在らぬ者』です」とか言い出すんだろーが。
そんな想像をしていると、こちらを振り返ったアランが口を開いて
「ああ、それは俺だ。だから『在らぬ者』じゃない。残念だったな」
…………?????
意味が飲み込めず固まったオレを尻目に、アランはとっとと森の中へ入って行っちまった。…うん?え?どういうことだ?
どうにも思い込みが強過ぎたらしい、オレがアランの言葉を理解するまでに何人ここを通り過ぎたことか。
とりあえず落ち着こうと飯屋で飯を食う。ようするにだ、アイツは『在らぬ者』とは無関係である、と。ただ何故か姿を見せずに首を突っ込んだ事件が『在らぬ者』の手柄であるかのように語られてるだけ…っつーことか?そもそも何でアイツは姿を見せずに介入してるんだ…?
考えれば考えるほど意味が分からねぇ。飯の味も分からねぇ。街道の事件に関わってんなら、それなりの報酬が貰えそうなもんだろ。あんな怪我までしてたじゃねぇか、何で黙ってんだ?馬鹿なのか?
気にし始めると、もうダメだった。アイツは危うい。あんなこと続けてたら、いつか死ぬんじゃねぇのか。
その日から、オレには日課が増えた。アイツが今日も生きてるか確認するっつー日課。自分でもなんでこんなことしてんのか分かんねぇけどさ。




