70 15歳 in 列車
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
「レジー様、ようやくレジー様と領外へご一緒できますね。僕嬉しいです」
「次はコリンも一緒にこよう。エヴァを無事に退治して安心が確立したらね」
ウキウキのウィルにとっては初めての旅だ。あ、ランカスターからウエストエンドへの移動はノーカンでお願いします。
移動の間もほとんどを仕事で過ごす社畜な僕の世話など大してないのがホントのとこだ。これはもうウィルにとっては慰安旅行と言ってもいいだろう。
『糸電話』を渡したばかりにひっきりなしにかかってくる電話。業務連絡とは言え…、オスカー…お前真面目に勉強しろよっ!
さて、こうして到着した王都にほど近い、整えられたステーションにはすでに一団が待ちかねている。
「ブラッドリー様、ようこそ馬車鉄道へ。さぁどうぞご乗車下さい」
「これはこれは、ご当主自らの出迎え痛み入る。それにしても…」
「いかがなさいましたか?」
「いや、噂に違わぬ美貌だと思ってね」
今なら僕にもわかっている。これはあれだ。
BLゲーの主人公補正ってやつだ。
僕の周りに居る♂は、まるで夜の街灯に吸い寄せられる羽虫のように僕に集まり、尚且つ彼らの眼に僕は五割増し…、いや七割増し位に映ってしまうのだ。
こんなインチキ臭い称賛なんかにいちいち一喜一憂していては身が持たない。話半分どころか4分の1で聞いておこうと思う。
さて…
「殿下が手をお上げだったところを無理を言って代わって頂いたのだ。『クーザ』が関わっているのならばこれは内密に話を聞くいい機会だと思ってね。今この列車には君の関係者しかいないのだろう?」
「ああやっぱり…。公安院に所属される右大臣のご嫡男様が試運転にお付き合いくださると聞いてそうじゃないかと思っていました」
「馬車鉄道が楽しみなのも本当だ。私は執務が多く長いこと自領へすら行けていなくてね。だがちょっとした休暇代わりのつもりが思いのほか楽しい旅になりそうだ。さあ、道中ゆっくり話を聞かせていただこう」
げ、社畜だ。社畜がここにもいた!
ともあれこうして始まった四日間の秘密会議。彼の従者や護衛に見えたのは全て宮廷から派遣された聖騎士だった。
「クラウス、報告書を」
「はっ!ブラッドリー殿、こちらが近隣領主に関しまとめたものでございます。」
そこには意に反して一服盛られた当主たちの名と、女ギツネの誘いにのり興味本位で手を出した迂闊な男爵二人の名、その詳細が時系列を追って分かりやすく記されていた。
その後協議の結果、伯爵と侯爵に関してはエバ告発への証人となる事で不問にすると彼は確約してくれた。もちろん彼は右大臣である父親からこの件に関しては一任されている。
僕はそれを材料にして当主を一刻も早く神殿内の療養所に入れるよう、家人への説得を隊員マクシミリアンに指示した。
魔鉱石で作られた『クーザ』の解毒は普通の解毒ポーションでは効果がない。中級クラスの『キュア』を何度かかける必要がある。
という事は僕の『キュア』でもいいわけだが…
僕はゲームの聖女を覚えている。
彼女は聖女認定を受けたあと、大神官からの「民人のためなれば…」という善意によって馬車馬のように酷使されたのだ。…その後王家の進言によってお仕事は大分減らされたけどね。
とにかく力は必要以上に知られない方がいい場合もある。
なので他領の領主に関して今回僕は、頼まれない限り手は貸さない、と方針は既に決まっているのだ。
「エバとの接触さえ遮断出来ればこれ以上の悪化は防げるだろう…、自ら顧客に成り下がった者はどうされるかブラッドリー殿」
「減刑に及ぶかどうか…それは協力如何にかかってくるね。それより問題は彼のお父上だ。団長」
「公爵閣下ですか…」
「閣下は私たちが領を出る時分には既に傀儡となっておられました。あの女は何があろうと閣下を手放しはしないでしょう」
元第一騎士団として父の側近く全てをつぶさに見てきた特別部隊のマクシミリアン。彼は気遣わしげにそう言った。
「じゃあ先ずはエバからだ。諸悪の根源エバを先に拘束する必要がある。父の保護はその後でいい」
「いいのですか坊ちゃま?」
「構わない。警戒されて好機を逸する方が嫌だ」
「では聖騎士の方々が売人との取引現場、そしてアジトを押さえるのと同時に我々ウエストエンド騎士団で屋敷を制圧致しましょう。あそこにはエバの手足、第三部隊がいる。新たに雇い入れたという使用人も」
「マクシミリアン、新顔の使用人も障害になると?」
「レジナルド様。悪人の元には悪人が集うのです。あのエバが目利きし雇い入れた者が誠実なものであるとでも?いいえ。誰一人逃さないよう一網打尽にするのが得策かと」
悪の連鎖か…
「…分かったそうして。それではヴォルフからの報告をまとめた書類、これをブラッドリー様にお渡ししておきます。売人たちの潜伏先、帳簿の隠し場所もすべてがここに。あと問題は売人の持つ姿を消す魔道具。エバとの取引時は常にそれで姿を消すのだとか。それゆえ決定的な現場を押さえきれずにいるのです」
「ではどうされるおつもりか」
「僕が狂魔力で魔道具を粉砕します」
「どうやって近づかれる?」
「僕はすが」
おっと、姿を消せる…、これは言わないほうがいいやつだ。
「…僕は遠隔で魔力をコントロール出来るので」
「それは凄いな。それも狂魔力の力か…」
「まあ…」
嘘も方便…ってね。
ヴォルフの報告を聞いて確信した事がある。
姿を消す魔道具、それほど稀有な道具を一介の売人ごときが用意できると思えない。
それはつまり、ゲスマン、トラキア、もしくはナバテア、辺りの裏組織が関わってるってことだ。
何故なら魔法使いの生まれる国は魔道具の開発にそれほど積極的ではない。
魔法使いの生まれない国において魔法の代わりとなる魔石はハイリスクでもハイリターンをもたらす。
だが魔法使いが存在する国においては俄然リスクの方が大きい。とくにベルト地帯を持つこのクラレンス王国では。
クラレンスはいくつかの魔法国の中で最もその育成と進化に力を注いできた国だ。その歴史は古く建国時にまで遡る。
そのため他国とは比較にならないくらい生まれてくる魔法使いの力が強い。尤も…
その過程で狂魔力が生まれてしまったのはちょっとした誤算だったんだけどね。
強力な魔物の瘴気を長い年月浴びることで自然発生する魔石。そのほとんどはトラキアやナバテアの山中の様にベルト地帯に近い危険な場所で採掘される。ここだけの話…実はウエストエンドの西山に面した樹海にも当然あった。なのに放置されていたのは危険を冒してまで採掘する必要性を感じ無かったからだ。
以前も言ったが魔道具は時と場合によって魔法使いをも上回る。だがしかし。
フルカンスト様にとっては所詮大人と赤ちゃんである。何で姿を消そうがそんなもの…毛ほども問題にならないっての!
こうして往路四日間の列車の旅は着々と計画を煮詰めながら無事試運転を終えた。
馬車鉄道の問題点など駅の周辺に少し出店が欲しいと言われたことくらいだが、え…?それもうちですか?と思わないでもない。
街道近くの領主、もしくは王家がすればいいじゃん。上手くやれば益になるんだしと、それはもう丁寧な言葉で丸投げしておいた。
これ以上はキャパオーバーだよ。
そうしてブラッドリー氏は丸一日ヴィラに滞在し命の洗濯をした後「帰路をご一緒出来ないのが残念だ…」と社交辞令を残して帰っていった。
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




