65 15歳 at ラウンジ
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
「放って置けレジナルド。お前を放り出した父親だろう。何を思い悩む?」
「ヴォルフ…、言っとくけど僕は放り出されたんじゃない。何一つ不自然に思わせないよう細心の注意を払い緻密に計算したうえで自主的にここへ来たんだよ。父の事は浅はかだとは思うけど不幸になってもらいたいわけじゃない」
ゆりかごに揺られた赤ん坊の日、あの日の母の言葉を思い出す。
『ある意味旦那様も可哀そうなお方ね。彼は亡くなられた弟様と違って気の小さいお方なの』
ないがしろにされながらも決して父を恨まなかった強き母。才女である母には分かっていたのだ。父の弱さ、愚かさ、そういったもの全てが…
それらを受け入れ、最後の最後まで己のすべきことをし、僕のために肥沃の大地、ハミルトンを残してくれた母。
その母にとって父は憐れむべき相手だった。
子供の頃は魔力の発現に怯え、弟が継承者となってからは魔力の暴走に巻き込まれることを恐れ、弟が亡くなればまた再び発現に怯え、狂魔力に翻弄され続けた気の弱い男、それが父だ。
その父が今度はエバに翻弄されようとしている…
あの母が父を憐れんだのなら…
「やっぱり僕はお父様を助けてやりたい。みんな力を貸して欲しい…」
「さすがでございます、坊ちゃま」
「ジェイコブ…」
「このジェイコブ、その決断をされた坊ちゃまを誇りに思いますぞ」
「じゃぁここからもがっかりさせないよう気合入れないとね」
進むべき道が決まればあとは簡単。決定したのは今後の方針だ。
まずは誰を罪に問うのか、その線引きをする事。
例えば近隣当主、彼らは『クーザ』を買い求め使用したとは言え罪人と言えるだろうか?そして父は?
使用者に対し、初めの状況をはっきりさせる必要がある。
ノリノリで手を出したのか、それとも知らず知らず一服盛られたのか…。
同情の余地がある者には適切な治癒を施したうえ王立裁判所に寛刑の嘆願を提出するつもりだ。場合によってはこの僕が領の救済に手を貸してもいい。
そして肝腎な部分、僕はランカスター、特にエバには直接関わらずあくまで陰に徹するという事。動かぬ証拠を持って王様に訴え出て公明正大、万人の目の前で法を以て裁いてもらうのだ。
だって相手はあのエバ…。僕を前にしたらどんな言い掛かりをつけるか分からない。そしてエバは奸計が上手く加えて狂魔力の継承者に対し…
残念ながら世間にはまだまだ偏見が残っているのだ。
「なに、エバごときに坊ちゃまが力をふるう必要はございませぬ。あれはどこまでもみすぼらしく惨めな姿で騎士に引っ立てられるのが似合いでありましょう」
「クラウス…」
「ご安心ください。どう策を弄しようが極刑を免れぬところまで証拠を固めてみせましょうぞ!」
「ゴーディー…。うん、任せたよ」
因みに何故王立裁判所で王様なのかと言うと、この世界における法律とは領単位になっていて、通常領内の揉め事は領内で片付けるのが基本だからだ。
思えばシュバルツに法規作成を頼めたのは非常にラッキーだったのである。
その中において例外は当主が関わる事例の場合。
その場合はそこの領主よりも爵位の高い領主に裁いてもらうことになる。つまり領民が序列の高い他領の当主に直訴するってわけ。伯爵領ならどこかの侯爵に、侯爵領なら公爵に、そして公爵家なら…当然王様に…
ひとつ良い事もある。
貴族同士の場合、いくら訴えたところでその関係性によってはその直訴自体握りつぶされてしまう。が、相手が王様では一切の誤魔化しが通用しない。
逃がしはしない…エバ…
「では特別部隊を再度各領に潜入させ証人を揃えましょう」
「ですが坊ちゃま、貴族は醜聞を好みませぬ。簡単に口を開くかどうか…」
「じゃぁこう言って。包み隠さず証言するなら一応判事に報告はするけど一切表には出さないって。証拠があるならなお良しだ」
「説得に応じるでしょうか?」
「痛み分けだよ。僕だって生家の醜聞を晒すわけだし。議会に報告しないとエバを叩きのめすことが出来ない。それが嫌なら好きにしろって言って。その代わり証言しないなら僕は自力で証拠を集めるから何をどう暴かれても文句は言うなって」
「分かりました」
これはいわゆる司法取引。捜査に協力するなら不起訴にしてやるってやつ。僕の狙いはただ一人だ。
「ふん。なら俺は売人を捕まえてお前の前にがん首並べてやる。好きなだけあの女との関りを証言させるがいい」
「ヴォルフ…、奴らは必ず帳簿とか…いつ誰にどれだけ売ったか残してあるはず、万が一の保身のために。それを手に入れて」
「いいだろう、俺とシャリムに任せておけ」
何て頼もしい僕のチーム。
だからと言って今日の明日、と言う話で無し。
証拠を固めて議会に提出して、数か月はかかるだろう。あとはみんなを信じて待つだけだ。
「坊ちゃま。ここに殿下、そして左大臣の御子息、近衛隊長の御子息がおられるのは僥倖でしたぞ。先んじて耳に入れておかれるがいい、場合によっては手を貸してくれるやもしれませぬ」
「すぐ行こう。…クラウス、供を頼む」
「はっ」
ヴィラへと向かう途中、元気にダンジョンへ向かおうとしたオスカー発見。大変申し訳ないが今日ばかりはヴィラへUターンだ。
彼のお父さんである近衛隊長からは騎士団に話しをしてもらう必要がある。
「レジーお前さ、悪いと思うなら今夜はアレに招待しろよ。この間は参加しそびれたからな」
「アレ?」
「ほら、獣人たちと宴みたいなのしてただろ。ここにいられるのもあと数日。な、いいだろ?俺も獣人たちと話したい」
その申し出は歓迎すべきものだ。
それに許可を求める姿勢に確かな成長が感じられる。まるで親鳥みたいに温かい気持ちで僕は今夜の宴会を快諾した。
その時後ろを偶然通りがかったハリネズミ獣人のソニックがすごい勢いで走っていったからそのお知らせはあっという間に行き渡ることだろう。
ああそうそう。彼はハリモグラ獣人のナックルと二人、髪の毛をツンツンに逆立てていつもブイブイ言わしているパンキッシュな兄ちゃんだ。シルバーアクセでも売ってそうに見せかけて土にまみれる農民というのがまたなんとも。
さすがにモフモフは出来ないがいつかスチームパンク風衣装を着せたいと言うのが密かな野望である。
所変わってエントランスホールのラウンジ。
「なるほど。話は分かった。父、いや、陛下には私から耳に入れておこう。」
「父上にはいつでも騎士団を出せるよう準備してもらったほうがいいな…」
「オスカーありがとう。殿下…お願いします」
「レジナルド、その件には確かに他領も関わってくるのだな」
「不本意ながらね」
「では左大臣である父の口から議会を通じ正式に箝口令を敷いてもらうとしよう。これは社交界全体にとって繊細な問題だ」
「そうしてもらえると助かるよ」
「だが…」
「アルバート、何か気になるの?」
「いや、君にとっては生家の醜聞だろう?いいのかい?」
「全然」
「そう。覚悟は出来ているんだね。分かったよ。大丈夫だ、何があろうと君には私が付いている」ススス…
サッ「お心だけ頂いておきますね」
全然平気だって言ってるのにアルバートは何を考えてるかイマイチ分かりにくくって…
僕にはこっちのほうが…恐怖だよ!
毎日更新を目指しています。
お星さまをぽちっとしていただけると大変大変嬉しいです。作者の励みでございます(;^ω^)
この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




