64 15歳 at アッパーエリア
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
それにしてもどうしたものか。せっかく持ち直したのにさっきから会話が全然弾まない…
ローランドってば饒舌じゃないし、僕も調子に乗って口を開くとまた墓穴を掘りそうで…思わずお口チャック。
き、気まずい…。この後どうしようか…、そうだ!
「パーヴェル、こちらローランド。王国左大臣の息子で侯爵子息ね。ローランド、彼はうちの裁判官の大事な弟で裁判官秘書の仕事をしてる。歳は…三つくらいパーヴェルが上かな?兄弟そろってとても真面目で優秀なんだよ。今日は彼が案内してくれるから何でも聞いて」
「何?連れてきておいて君はどこかへ行くと言うのか?」
「ちょっと神殿建造の打ち合わせに。すぐ戻るから。パーヴェル頼んだよ」
「えっ?あっ、はい」
よし!丸投げ完了。
さてと…、今からアーニーのとこに行って神殿の打ち合わせをして、それが済んだらローランドを迎えに戻って、シュバルツに紹介してお昼御馳走したら帰せばいいか。
そうだ!神殿の設計に関してはニコの希望も聞いとかなくっちゃ。えーと、それから…やることが多くて混乱しそうだな…
「レジー、今からどこへいくんだい?」
アーニーのいるアッパーエリア増設部へと急ぐ僕に、優雅な声を掛けてきたのはすっかり友人になったセザールだ。
神殿の打ち合わせに行くと言う僕に付いてくると言う彼。まあ…三人寄れば文殊の知恵って言うしね。僕は二つ返事で了承した。
「アーニーお待たせ!」
「良いけどよ。なんだよ今度は」
「公共区域に神殿を建てることになったから。豪華なの。あ、納期は半年ね」
「おっ!お前!次から次へと…いい加減にしろ!」
「ご、ごめ…、神殿に関しては僕も手伝うから…」
「いくらポーションがあっても足りねぇよ。お前の飽くなき野望を叶えるにはいくら野郎を犠牲にしても人手が足りねぇ!」
「人を魔王みたいに言わないでよ…、分かった。その件は考えとく」
「ふふ。仲がいいんだね」
おっと。すっかりセザールの紹介を忘れてた。
セザールの優雅さに一瞬引いたアーニー。けど、そこはコミュ力の高いセザール。あのアーニーですら戸惑いながらも何だかんだですぐに打ち解けた。
三人でワイワイと設計の概要を話し合うのはなかなかに楽しい。
セザールの視点は機能性からはかけ離れた一見無駄と思わせるような装飾部分で…、けど神殿にはこういう訪れた者を崇高な気分にさせる演出も必要なんだろうな、と改めて気付かされる。
「レジー、アーニー、今僕はとても楽しい。このままここに居られたらいいのに…。あと少しで帰らなければならないなんて…、とても残念だよ」
「あ、じゃぁ卒業したらここにおいでよ。セザールなら大歓迎だ」
「その前にここへ休みの度に来れたらいいのにね。片道二週は長い…」
「確かに…」
もう少しアーニーと話したいと言うセザールを置いて裁判所に戻る道中、僕は降ってわいた課題について悶々と考えていた。
セザールによって気付かされた視点…。これぞ多角的なモノの見方ってやつだ。
『ワープゲート』のある僕と違ってこの最果てへ来るハードルはかなり高い。ターゲットは高位貴族だと言うのにそういった者ほど王都の近くに領を持つ。つまり…遠い。
今回彼らはこのウエストエンドの視察、という目的ありきで二か月の夏休みをほぼ丸丸使ってやってきたわけだが…
輸送の問題を解決しないといくら富裕層とは言えリピーターにはならないだろう。
さて、ここで考えるべきは二週間の移動をどうするか、だ。
現状ここへ来るには五カ所ほど他領で宿泊する必要がある。そのたびに結構なロスタイムが発生するわけだ。
脇道に逸れるたびにかかる無駄な手間、距離、それらが今後も無駄な時間になるだろう事は否めない。
早馬単騎で駆けぬければ今だってホントは片道一週間ぐらいには短縮できるんだから。
とは言え、いくら馬用ポーションがあるって言っても可愛いお馬さんの休憩時間は少しだって減らせない。なら可愛くない人間の休憩を減らすしかない。
苦情が出るだろうか…?いいや。移動をもっと快適なものにすれば問題なしだ。
でもでも!
今だって路面を平らに整備してかなり馬車の振動とか負担は減らしてあるんだよ?この国初って言うくらい!
初めてウエストエンドを目指した時の、あのトルネードで切り拓いただけのガタガタ道を思えば、これでももうマジで天国なんだから…
いいや!まだやれることはあるはずだ!唸れ!僕の脳細胞!
ポクポクポク…チーン!閃いた!
オリエント急行!北斗七星号と言ってもいい!つまり…寝台特急!
だからと言っていきなり電車とか…汽車とか…、この世界の文明じゃ無理ゲー!
なら何かって言ったら…街造りの資料で集めた電車の資料、その中にあった鉄道の前身、そう、馬車鉄道だ!
地下倉庫になんか磁石っぽい魔鉄があったはず…、あれでレール敷いて、で、客車、寝台車、食堂車、貨物車、車両にも同じ魔石を埋め込んだらどうだろう…?リニアモーターカーみたいに浮かないだろうか…
馬は何頭必要かな…?でも、上手くいけば乗客の負担が激減したうえ馬の速度もアップするはず。途中宿泊一か所くらいに減らせれば移動日数四~五日くらいにはならないだろうか…?
…イケル気がする…。よし!善は急げだ!
「ふっざけんな!バカ飼い主!」
そのことを伝えに戻った僕はアーニーから魂の罵倒を受け、逆にセザールからは期待された。
それでもめげずにクラウスとゴーディの元へと相談に走り…
「なかなか画期的な話ではありますが…、資源と加工、そして設置はどうします?」
「資源なら…ある!大量に!」
「…坊っちゃま、メタルダンジョンにも行かれていたのですな…?」
フイッ「…ま、まぁそんなことはどうでもいいとして、加工も僕がする。騎士には設置だけお願いしたい。車両のハードも僕が作る。ソフトだけ誰かにお願い出来ないかな?」
「ハード?ソフト?」
「それより坊っちゃま。ヴォルフから例の話は聞いておりますか?」
「へっ?例の話?」
「ランカスターの話ですが、屋敷で下位貴族家の後継に関わらない次男以降に大量の使用人を募集しているとか…」
えっ?それって…
「上級使用人たちがどんどん辞めていってるってことか…」
「そうでしょうな。慢性的に人手不足のあの屋敷で自ら辞めさせるとは考えにくい…」
ましてや忠義の高い上級使用人が辞めるなんて…末期じゃん。
「そう…。後でヴォルフから詳しく聞いてみるよ。ありがとう」
…縁を切ったはずの父親、捨てたはずのランカスター公爵領。
それでも…どうでもいいなんて、感情までは切り捨てられない。
シリアスに浸ろうとした瞬間、ふ、と何かを忘れていたことに気が付いた。
あ…
迎えに行ったローランドはパーヴェルと静かに午後のお茶を飲んでいた。お昼まで既にご馳走になった後なのだとか…
「構わない。彼と過ごす時間は有意義だった」
意外にも平静なローランド。けど一言嫌味は忘れないのがローランドと言う男だ。
「多角的にものが見えすぎるのも問題だと言う事がよく分かった。今日は色々学べたよ。感謝する」
ぐ…ぐうの音も出ない…
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




