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58 15歳 at 下町

アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。


『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。


何だかんだで初めて見る王都の下町。

ここはウエストエンドのダウンタウンとはまた違う賑わいを見せている。


そこには所狭しと屋台が並び、それを縫って大小のテーブルがそこら中に置かれている。

客を呼び込む大声、女性の笑い声、ケンカの怒声に蹄の音、まるで蚤の市みたいに雑多な喧騒がそこにはあった。


そこから湾曲して入り組んだ石畳の小路を少し入ると現れるのは小さな民家。

ところどころ壁が禿げたり朽ちたりしている古い石作りの民家群。

それらはほとんどが同じ高さで壁の色だけが思い思いに塗られ個性を主張していたりする。


さらに小路を奥へ入ると、突き当り、そこにはポツン…と、古びた教会、そして修道院が存在した。


古くとも清潔に保たれた教会。週末の礼拝のみならず、洗礼、成人の儀、また結婚式から葬式までと、住人の暮らし密接した大切な場所。それがこの教会である。


因みにスラムのあった商業地区とはここでなく、倉庫や商会なんかがひしめく、分かりやすく言うと…、メーカーや卸売り業者が集まる場所のことだ。


王都は塀に囲まれた王城を中心にして、東西南北、四つの門から四つの道がのびている。


ひとつは東に。これはゲスマンの侵攻に備え、辺境伯と合流できるよう有事にだけ開放される門だ。

そして南。これは主にキャラバンや大商会の大きな荷馬車が使用する、いわゆる交易路だ。

この道の行きつく先こそが僕の切り開いた街道である。アレによってどれほど物流が短縮されたことか。僕はもっと感謝されても良いと思うんだけどね。


うって変わって北側へと伸びる道の先が魔法学院や官庁などの重要施設だ。そして西側に伸びる道の先が貴族街。北から西にかけてのここいら一帯は一つ一つが広大な敷地を持つ歴史ある建物だったり、豪華でデカイ貴族邸などの貴族専用の整えられた街が、それはもう美しく広がっている。


守衛により管理される貴族街の門。門を境に外側が市民街となるのだが、そこからは端に向かえば向かうほど庶民度が上がっていく。


手前はそこそこ裕福な人が住む住宅街。そして時には貴族も買い物に訪れる大店が並んだ商店街がある。


少し進むと店と家屋の規模はどんどん小さくなっていき下町とはこの辺りから先のことだ。

更に進んだ王都の端の西門近く、そのつつましい一帯の中にある古びた教会こそが聖女の居る教会である。


その西門から南門はそこそこ離れている。

荷馬車のチェックをする南門、つまり前世で言う税関近くがスラムの有った商業地区で、交易路こそが悪党どもに狙われていた危険な道って事だね。


同じ庶民街でも西サイドは平和と言える。みんな貧しくとも助け合って暮らしている。

捨て子だった聖女が教会ですくすくと育てられていたのがその証拠だ。なにせ乙女ゲーのスタート地点だからね、ここは。



あー…、それにしてもさっきの屋台、美味しそうなケバブだったな。

姿現して食べにいっちゃおっか…

そうだ!確かマジックバックにはイーサン先生の擬態ポーションが残ってたはず!


このポーションを使うのはエトゥーリアに次いで二度目である。

この擬態ポーション(改)は、レシピを奪われたオリジナルに比べ効果時間が倍になっている。とは言えほんの一時間。が、元が30分だったことを思えば大した進歩だけどね。


やっふぅ!一時間食い倒れだ!



「ウマウマ…。お腹いっぱい…。もう食べれない…」


やや細身な僕は少し子供に見えるのだろうか?どの屋台のおばちゃんも必ずと言っていいほどおまけをくれるもんだから残さず食べていたら満腹になってしまった。

どうしよう…、またジェイコブに叱られる…


それにしても何というか…、万国博覧会みたいな屋台群だ。

ドイツのヴルスト、トルコのケバブ、イタリアのフリットラ、そしてフランスのタルティフレット!

ゲームのシナリオライターはきっとお腹が空いてるときにここの描写を書き上げたに違いない!


よし!最後にあのベビーカステラをコリンとウィルへのお土産にしてサクッと帰、…帰っちゃダメだってば!もうちょっとで本題忘れるとこだったよ。



「おばちゃーん、そのベビーカステラ2袋くださーい」

「おばさん。ベビーカステラ1袋!」


ん?


隣から元気よく聞こえてきたのは赤ずきんちゃんみたいにすっぽりとフードを被った女の子。背は…、僕と変わらないから15~16?近所に住んでる子だろうか…?店主と親し気に世間話をしながら手にした新書サイズの本を時折指で撫でている。

その動作がまるでスマホを弄る女子高生みたいで…、なんか妹みたいで懐かしいな…なんて感傷的になってしまった…


「はい、こっちのキレイな坊やが100銅貨でニコは50銅貨ね。二人ともたくさんおまけしといたからね」

「いつもありがと、おばさん」

「ありがとうございます」


ニコ…、ふぅん…この子の名前か…。そういや聖女って何て名前になってんのかな…?

あれ。同じ方向に帰るんだ?何だろうこの感じ。どこはかとなく感じる既視感…どこかで…いつか…、あっ!


「危ないっ!」

「きゃぁ!」


暴走馬車!!!


ああ…これはあの時と同じだ!

し〇むらの帰り、僕と女性の前に突っ込んできた暴走トラック!


ここで死んだら僕はまたどこかに転生しちゃうの?ウエストエンドはどうなるの?くそっ!短い転生人生だった…無念…


…なんてね。


フルカンスト様がこれくらい避けられないはずがないでしょうがっ!って言うか、いざとなったらシールドもあるしっ!



「危ないところだったね。大丈夫だっ…た…⁉」


僕は悠々彼女を庇い軽々と身をひるがえした。そして驚くべきものを目にする。

僕の目の前に居たのは…


これぞまさしく訊ね人、外れたフードの中からは、ピンクの髪を一つにくくったデッカイ目に星を散らした女の子、『恋バト』の主人公が現れたのだ!


「あ…ありがと…う…?」


な、なんだろうか、この反応は…


驚いてるのはこっちだって言うのにむしろ彼女が驚いてるような…、いや、戸惑っているような?ちょちょ、そんなにガン見するの止めてよ!


「あっ!あなた何よその髪?色が変…、茶色から紫に…、ああっ!あなたランカスタ、もがっ!」

「ばっか!こんなとこでっ!」


し、しまった!擬態ポーションの効果が…っ!うっかり買い食いに時間をくったばかりに!


僕は心配して駆け寄る衆人を振り切り、ピンク髪の腕を引っ掴むと路地裏へと身を隠した。


彼女は驚きながらも僕をチラチラ見ながらされるがままになっている。おいおい大丈夫かこの子。無防備ですぎるだろ。僕が誘拐犯だったらどうするんだ?

そもそもよく分かったよな、僕がランカスターのレジナルドだって。


…あれ?でもよく考えたらおかしい。


いくら僕が狂魔力の継承者だからって、ランカスター領とウエストエンド以外どこへも出ないで社交界にも出向いてない僕を知る者なんか限られる。

ましてや庶民階級で僕を一目見てそうと分かるはずなんて…


ましてや僕の正体が分かったならなおのこと…、庶民が貴族を指さし絶叫しない!


「ここなら大丈夫か…。ちょっと君一体何者?ただの下町に住む女の子じゃないよね?」


「それはこっちのセリフよ!なんでランカスター公がここに居るのよ!?」


逆ギレとか!


「そもそもランカスター公がこんな澄んだ目してたらおかしいじゃない!ああもう!イメージ台無し!あの子はもっとこう…、あんた誰よ!」


「あんた誰って…お前が誰だよ!」



「あたし?あたしは男同士の過剰な友情を大いなる使命を持って陰から見守る愛の伝道師、笑子よ!」





毎日更新を目指しています。

お星さまをぽちっとしていただけると大変大変嬉しいです。作者の励みでございます(;^ω^)


この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)

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