49 15歳 vs ローランド
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
「ランカスター殿」
「ローランド…様。いかがなさいましたか?」
「いや。今滝を眺めていたのだが…」
「ああ。確かローランド様のお部屋は…大きな岩の表面を幾筋もの水がなだらかに流れる、まるで清流のような滝でしたね。どうです?見事なものでしょう?」
「あ、ああ見事だ…。だがそうではなく、この地には山中でさえ大した水源は無いと思っていたのだが違っただろうか?道中、馬車道の中央を流れる川も澄んだ水が流れていたが…」
お?さすが知将。目の付け所がいいねぇ。
「勿論その通りです。ここは海も川も湖も持たず雨すら滅多に降らない不毛の荒野『ウエストエンド』。あれらの滝も馬車道の運河も、魔のベルト地帯にほど近い西山の水源から僕が湧き出させたものです。決して常人の魔力では到達できない地中奥深くの水源ですけどね」
「やはりそうか…」
おや?
称賛の声が上がるかと思いきや…あごにやられた手、寄せられた眉。思った反応と違うな…
「あの凶悪な力を己の私欲のためだけに使うなど…。見下げたものだ」
は?
「…見下げた?」
「そうだろう。君の持つその狂魔力が過去どれほどの被害を国に与えてきたか。そこで犠牲になった者がどれほど居ると思う?わ、私の先祖もその一人だ!その魔力が制御できるのであれば、何故それを国のために使おうとは思わない!」
次第に感情が溢れるローランド。どうもこの狂魔力は彼の地雷らしい。ゲームには出てこなかった設定だが。
「どれほど綺麗な顔をしていたところで所詮狂魔力の継承者などその程度だ!私はこのようにおぞましい力など…認めない!」
カッチーン!
い、いや待て。相手は客だ。それも太客。抑えろ、抑えるんだ…冷静に、冷静に…だが言うべきことは言うべし!
「…それと私と何の関係が?」
「なんだと…?」
「ではひっじょ~に優秀そうな侯爵家の御子息様にお訊ねしますね?いつどこでどのように私が国に被害を与え民衆に犠牲を出したか説明していただけますか?それって過去の、しかもまだ狂魔力が王家に受け継がれてた頃の話ですよね?」
「それは…」
風評被害も甚だしい!
「…ランカスターを庇うつもりはありませんが、僕の先祖ランカスターは王家のゴミ、ゴホン、狂魔力を押し付けられた被害者ですよ?」
「な、ふ、不敬だぞ!」
「事実を言ったまでです。いいですか?王家は名前だけの公爵位と引き換えに領地以外たいした財も寄越さなかった。その領地さえも空領地だ。なぜかわかりますか?」
「い、いや…」
「どうせ魔力が暴走するたび全てはパーになるからですよ。勿体ないでしょう?」
「あ…」
なんだその、「今気が付きました」みたいな顔。まあ言うて十五の中坊だ。世間を知らなくても無理ないが。
ハー「こういうの貧乏くじって言うんですよ。この私自身も含めてね。なのに私が悪いと?」
「だが君が内包するその狂魔力は人々を苦しめてきた災い!つまり君の存在は今後も災いになりうるということだろう!」
ブチィ!
「黙れ!!!」
「なっ!」
「あー、失礼。ですがたかが侯爵家の息子でありながら、公爵家の息子であり現侯爵である僕に舐めた口きく無礼者に礼を尽くす必要はないかと思いまして」
「な、何っ!」
もーいい!こんなクソガキに好き勝手言わせておけるか!すねっかじりの癖に…
中身大人を舐めんな!
「狂魔力の継承者であれば敬意など払う必要ないと思いましたか?その態度がすでに僕を舐めてるって言ってるんですよ。左大臣に何を聞いて来たのか知りませんけどね…、こちとら七歳になるまで自領から一歩も出られないうえ二十歳を超えたらまた軟禁される…、そんな重荷を既に背負わされてるんだよ!おまえら、王家と王家の議会による勝手な取り決めによってな!たった十数年足らずの自由…なのに狂魔力が制御出来たからってホイホイ尻尾振るとでも?」
頭お花畑かっ!
「く、口の利き方に気をつけたまえ!」
「お前がな!」
「うっ…!」
スーハー「…仮にも王家に仕え殿下の片腕を担っていくあなたがそんな偏った物の見方でどうします?それで弱き者に寄り添う治世が行えると?甚だ疑問ですね。現にあなたはここへ足を踏み入れても当施設の使用人に一瞥もくれなかった。使用人ごとき視界にも入りませんか?随分立派な紳士教育を受けてきたものですね。それこそ…「見下げたもの」ですよ。失礼!」
ムキィィィィ!許すまじローランド!!!
あいつなんで入領出来たんだろう?うーん、でも左大臣も入領出来てるもんな。
あっ、…『狂魔力の継承者』限定の悪感情だからウエストエンドに害意は無いって判定?なるほど。ピンポイントで嫌われてる、と。
…ふ、ふんだ!お互い様だっつーの!あいつは僕のNGリストに殿堂入りだ!
けど支配人としてお客様に暴言を放ったのは頂けなかったな…
失敗失敗。まだまだ僕も子供って事だね。
そりゃぁね、言うても前世だってただの大学生だったし?悟りを開くにはまだまだ。
いいんだ。失敗は明日の成功につながる大事なチャンスだって言うし、この反省を明日に生かして進化を…、あ…、シュバルツに言ったセリフまんまじゃん。
よぉーし!今日のモフモフ祭りにはキツネのジルさんにも来てもらおう。冬毛じゃないのが少し残念だけどあの尻尾は称賛に値する!
大至急連絡だ!
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「あーあー、すっかりやり込められてんじゃないか」
「オスカー…聞いてたのか…」
「聞こえてきたんだよ、あんな大声出してりゃ聞こえるだろ、そりゃ」
オスカーに聞こえたなら殿下の耳にも入ってしまっただろうか…。失態だ…、情けない…
「俺とお前は子供の頃からの幼馴染だからハッキリ言うが今のはお前が悪い」
「だ、だが…」
「お前の親父さんは…あーその、少し拗らせてるよな」
「何だと?」
「親父さんはな、もしもあの傑物と謳われたご先祖が狂魔力の犠牲にさえならなきゃカニンガム侯爵家が右大臣に任命されてたはずだって、その想いが強すぎんだよ。まぁ親父さんもそのまた祖父さんもそう言われて育ったんだろうがな」
…王をお支えする左右の大臣。だが立場は右大臣の方が格段上にあたる。そして父がそのことを時折苦しげに零されていることは確かだ。
我がカニンガム家は序列一位の侯爵家。なのに序列三位のオルグレン家に右の座を許し、我がカニンガム家は左の座に甘んじ続けている…
「四代前の当主を狂魔力の暴走によって失いさえしなければ…狂魔力によって我が家門の名誉は奪われたのだ…」私はそれを父の無念と共に常々心に刻みながら育ってきたのだ。
「けど本当にそうか?右になれないのはあいつの言った「偏った物の見方」ってやつのせいじゃないのか?」
オスカーの言い分に思考を巡らす。
悔しいが、現右大臣のオルグレン侯は公平かつ冷静な視野をお持ちだ。
この狂魔力に対してさえも、もちろん警戒はしているが不要に牙を剥いたりはなさらない。時折ランカスターへの謝意さえ感じさせる…
父の意見に同調するばかりで一度として考えたことも無かった。力を受け継ぐ継承者の事情など。
私と同じ年のあの美しい彼が、その美貌を社交界で披露する事さえ出来ず、制限された環境の中でどんな想いをしているのか、などと言う事は一度たりとも…
「子供のお前にまでそんな考えを押し付けるのはどうかと思ってたぜ俺は。いい加減認めろよ。ランカスターが狂魔力を引き受けてくれたおかげで王都は発展を遂げたんだってな。それに比べてランカスターは狂魔力が暴れるたびに何もかも失って…あそこはハミルトンが支えなきゃとうに潰れてる。お綺麗なあいつの言う通り、ランカスターは貧乏くじを引いたんだ」
否定出来るだろうか…?
そうだ。冷静にランカスターの歴史を鑑みれば全ては明白。かの地では永続的に豊かさを享受することは出来ず、また継承者自身、そしてその連れ合いまでもが狂魔力によって皆若い命を散らしている。
ハミルトンから嫁いだという、狂魔力に関わりの無かった彼の母親までも…
…王都で会った彼の父親、ランカスター公爵ですら息子の名を口にするとき顔を歪めた。
レジナルド、彼は一体どんな想いでこのウエストエンドへと自身の身を封じたのか…
「後で謝って来いよ。俺は楽しく休暇を過ごしたいんだ!」
毎日更新を目指しています。
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




