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48 15歳 vs アルバート

アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。


『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。


「では殿下はこの部屋をお使いください。この部屋の特徴は苔むした岩肌が厳かな風情を感じさせる、段階的に落ちてくる滝の風情です。岩を叩く水音がまるで神を讃えるメロディのようではありませんか?滝つぼの水温は魔石管理により一年中適温となっております。どうぞ身体を浸してお楽しみください」


「君は?」

「と言いますと?」


「一緒に水遊びはしないのかい?」


「…私は支配人ですので。この領の当主でもあります。何かと取り込んでおりまして…申し訳ございませんが」

「殿下、この方は御年こそ同じですがすでに継承式を済ませた現侯爵であられます。ご学友方と同じように思われてはなりません」


予想だにしない提案に開いた口が塞がらなくなるところを…ナイスだ従者!


「ああそうだったね。だが彼が支配人なら客の要望に応えるのもまた大切なのではないのかな?ねぇいいだろう?せっかく王都を離れたのだ。こう見えて王太子である私には自由が少なくてね。正直ここへは羽を伸ばしに来たのだよ。レジナルド、君の手伝いが必要だ」


とか言いながら腰にまわされる腕。距離が近い…フレンドリーだな…

確かヒロインの聖女ともこんな感じだったっけ?


フー…「…各種遊戯も取り揃えておりますので順次ご案内いたしましょう」

「そう良かった。楽しみだな。君と知り合えただけでもここに来たかいがあったというものだよ」


「…長旅随分お疲れでしょう。その腰にまわした腕を放して一刻も早く身体を休ませては?」

「ああすまない。そこにいる従者のポールにいつも叱られるのだ。王族があまり気安くてはいけないとね。だが私の立場でこんなことが出来るのも学院と言う治外法権に居られるうちだけだ。そうは思わないかい?」


イラ「…ここは学院内ではございませんので…お・放・し・く・だ・さ・い」

「要望があれば君に言えばいいのかな?話し相手が欲しいと言ったら来てくれる?」


「…この部屋には専用の執事と専用のメイドが付いております。何かあればベルをお鳴らし下さい。では私はこれで」

「ああ待って」


「…何でしょう?」

「ほらこれを持って」


カチン


「乾杯。君との出会いに」

「…完敗。殿下との出会いに」


バタン


だぁぁぁぁ!なんだあれ!うっとおしい!


なんだって僕が観光案内なんかしなきゃならないんだ!子供じゃないんだから一人で行けよ!ましてや話し相手だと?コンパニオンでも無いっての!

お付きの従者も言ってるでしょうがっ!ご学友と一緒にするなって!


こちとら領主だっての!ましてや支配人だよ?超絶忙しい毎日だっつーの!

そのうえ真夜中にはレベル上げもしてるからねっ!慢性的に寝不足だよっ!


大体王家の庇護下に居る王子様の何が不自由だ!色々優遇もされてるんだからそれぐらい我慢しろよ!

本物の不自由を教えてやろうか?羽を伸ばしたいだと?僕が知らないとでも思ってんのか。時々従者も護衛も振り切って学院抜けだして王都の商店街でストレス解消してるくせに!ゲームのエピで知ってんだからな!

だいたい聖女と出会うのだって下町じゃないかっ!


…って言うのを大声で言えたらな…


ああー!ストレス半端ない。早く帰ってヴォルフにモフらせてもらおう。

…いや、今日ばかりは趣向を凝らしてウサギのピーターさんに耳でペチペチしてもらうってのはどうだ…?

…有りだな。名案だ!


よし今夜はフェレットのセーブルさんにも来てもらってモフモフの祭典だ!



----------


「ポール、見たかいあの美貌。まさに噂どおりの、いや、噂以上の美しさじゃないか」

「そうでございますね」


我がクラレンス王国に代々伝わる狂魔力。それは時に国の根幹を揺るがす脅威でもある。

古には何度も王都が壊滅的な打撃を受けたのだと、王家の歴史書にはそう記されていた。


それを引き受けたのだ二代前のランカスター領主。それを以て、かの地は侯爵領から公爵領へと爵位を上げた。

僻地の侯爵領はとくに有用な資源も採れない山側へと領地を増やし、また第四王女には不毛の荒野『ウエストエンド』が持参金と共に受け渡された。

が、あれは狂魔力の暴走被害を封じ込めるだけの実り無き地…

こうして大した権力は与えず降嫁の体裁を形だけ整えたのだから、我が先祖も人が悪い。


当時のランカスター侯が何故そのように分の悪い申し出を受けたのか。

名前だけとは言え侯爵から公爵への陞爵に目がくらんだのか、それともただ単に王家の申し出を断れなかったのか…


なんにせよ、以来ランカスターでは常に狂魔力の継承者が出現する。

そしてその継承者は例外なく必ず不遇な最期を迎えるのだ。


「あれほど美しい彼が狂魔力の継承者だとは信じられない…。だが制御出来ているのだし問題とは言えないのではないか…」

「あくまで今のところは、で、ございます」


「そう。だがあの驚異的な力を制御出来ていればこそ、このウエストエンドは現状どこより安全な場所である訳だろう?だからこそ王も今回私に許可をくだされたのだ」


「王はあの狂魔力が本当に制御出来ているなら王家に取り戻したいのでございますよ」


「身勝手な事だ。歳の近い私であれば彼も胸襟を開くとお考えなのだろう」

「随分警戒されておいででしたが」


このウエストエンドの噂が王都に流れ出したのは二年前。大臣はすぐさまランカスターへ使いを出したが、かの公爵は「あれは皆の脅威にならぬよう自ら幽棲した」と言うばかり。

ハミルトン伯爵に至っては何も聞いておりませぬと嘯いた。


だが籠った先が魔のベルト地帯に隣接していては、大臣、そして神官すら安全性の確信も無く魔力の確認へ出向くことは出来なかった。


狂魔力の継承者が荒廃地区の悪党どもを一網打尽にしたとの報告を受け、王命により騎士の一団が聴取に出向いたこともあった。

だが彼らは誰一人として、『審判の門』と呼ばれる、あのウエストエンドの領門を超える事は出来なかったのだ。


後日知った事だが、あの領門はウエストエンドに害意を持つものを拒否するのだとか。それも尋常ならざる驚異的な力を以て。


「あの領門に埋め込まれた封鎖石。あれに込められた魔力こそが恐らくは狂魔力なのだろう。恐るべし力だ」

「全くでございます」


「狂魔力の継承者…。これまでランカスターの地に、そしてこのウエストエンドに封じられてきたのだ。様々な想いがあるのであろう。この立派な街、だがどれほど整えられ活気に満ちようと実質ここは彼にとって封印の地だ。見るがいい。この地の領民を」


「はぐれ者ばかりでございますね」


「それが全てを物語っているではないか。社交界にデビューすることも叶わず、ランカスター、そしてハミルトンの本領を継ぐことも出来ず…、こうして寄せ集めの領民を慰めに当主の真似事など…、気の毒なことだ。私は力になれると思わないか、ポール」

「殿下…、相手はどれほど美しかろうが継承者…。自重なさいませ」


「分かっている。だが私と言葉を交わす度に歪められる憂いを含んだ横顔…。あの憂いに秘められたものが哀しみであるなら…救ってやりたい。私のこの立場と力を以て…」




毎日更新を目指しています。

お星さまをぽちっとしていただけると大変大変嬉しいです。作者の励みでございます(;^ω^)


この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)

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