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31 13歳 in 落盤現場

アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。


『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。


「『テレポート』っと。シャリムどう?」

「うん。すごく楽しい…」


「…そうじゃなくて…。落盤現場はどっち?分かる?」

「分かる…。もう近い。こっち…」


まったく…

でも闇の中のシャリムはなんだか生き生きして、闇は友達ってホントなんだな。さっきからずっと楽しそうだ。


「着いちゃった…」

「ありがとうシャリム。シャリムの夜目は本当にすごいんだね。また時々お散歩付いてっちゃおうかな」

「二人で行く…」


おや笑った?珍しいシャリムの姿も見れたことだし…、さぁ!今度はここだ!

目の前には岩々に塞がれた洞窟がある。入り口には散らばる屑魔石。


「やっぱりか…。どうするかな。さらに崩れてもヤバいし…シャリム!」

「何…」


「僕は一回中に行くよ。シャリムはどうする?ここで待ってる?」

「一緒に行く…」


だよねー。




「だめだ…。これだけ待っても物音一つしない…」

「俺たちは見捨てられたんだ!」

「じゃあここで終わりなのか…」


「いやだ!こんなところで死にたくない!」


「止めろ。…あまり声を出すな。酸素が無くなる」

「隊長…それじゃぁこのままここで死ねって言うんですか!」


「隊長を責めてどうするんだ!」

「ですが…」



難を逃れた狭い空間。そこから聞こえてくるのは死への恐怖に怯える男たちの声。

その中にあって一人、隊長と呼ばれたその男だけが酷く冷静な態度で男たちを抑えている。


隊長?ここは罪人の強制労働場じゃなかったのか?


困難を極める固い魔石の採掘。そのうえここは少しばかり離れたと言っても、あの魔獣があらわれた樹海からそれほど離れていない場所だ。

だからこそ死んでも困らない重罪人を労働させるってのが定石のはず…


「イソヒヨドリ…、彼らは奴隷に見えない…。身体も顔つきも…」

「ホントに?」


「肌が白い…ナバテアの人じゃない…」

「そっか…ナバテアはゲスマンと同じで少し浅黒いものね。」



さてどうする…。

う~ん。どう誤魔化しても僕がここに居る違和感は誤魔化しきれない。なら堂々と行くか。



「そこの人たち。僕は君たちを助けに来た。君たちは何者?事故について話してくれる?」


「うわぁぁぁ!」

「だ、誰だ!」

「ひぃぃぃ!」


いきなり暗闇から子供の声がしたらそりゃぁビビるよね。えーと、ごめんなさい。驚かすつもりじゃなかったんだけどな…


「私が代表者だ。いや、それより君はどうやって閉ざされた坑内にいきなり現れたのだ」


「お、お前はなんだ!」

「人に化けた魔物なのか!」


ひどい言い草だなぁ…、でもその言葉に怒りを示したのは僕でなくシャリムだ。


「お前…イソヒヨドリに何を言った…」

「ひいっ!」


「シャリム待って!良いから」

「でも…」

「慣れっこだから大丈夫。こんなの少しも気にならない。僕には君とウエストエンドがついてるもの」


シャリムの怒気にいっそう怯える洞窟の人々。彼らを後ろに下がらせ前に出たのはあの隊長と呼ばれた人物。


「ウエストエンド…?まさかクラレンス王国のあのウエストエンドか。では君はもしや…」


「ご存じなら話は早い!僕はクラレンス王国ハミルトンの現侯爵にしてランカスターの第一子。レジナルド・ハミルトンだ!またの名を狂魔力の継承者という。以後お見知りおきを。」



ザザザザザっという音と共に壁際にへばりつく彼ら。他国の方が尾ひれがついてたりするんだよね。

でもそんな中にあってさすがだね。隊長と呼ばれるその人だけは歩み出て僕に礼を取る。


「名乗りを感謝する。私はエトゥーリア共和国、侯爵位の末席に座するシュトヴァルツ・フォン・クーデンホーフ侯爵である。事の次第を説明しよう」


せっかくの自己紹介も真っ暗やみでは半減…


そこで僕は、土魔法と風魔法を駆使して土中の酸素濃度を上げると、その後、炎系の魔法で小さな灯りをともしてみせた。

シャリムは顔をしかめたけど、ゴメン、諦めて。


そうして確認できた彼らは、シャリムの言った通りだ。痩せてはいるけどしっかりした身体つき、そして精悍な顔つきの男たち、総数…6、70人くらい?が狭い空間に閉じ込められている。


聞けば彼らはこの国の戦争相手、エトゥーリア共和国の兵士なんだとか。

戦乱のさなか戦争捕虜となり収容されていたところ、何故か犯罪奴隷としてこの山へ労役に連れて来られ、そして今日の昼中、事故に遭ったと。


「え?それおかしいよね?普通戦争捕虜は一定の待遇を受けられるはずでしょ?」

「ああ。実際当初はそうだった」


「隊長!だから言ったじゃないですか。我々は国に捨てられたんだ!」

「認めたくないが…、恐らくそうなのだろう。」


はっはーん、なるほどね。

捕虜であれば通常彼らは駆け引きの材料として利用される。時にそれは自国にとっては足手まといとなる訳で…、母国の中枢はそれを望まず彼らを戦死者として処理したのだ。


ナバテア側も焦っただろう。駆け引きを完全拒否のエトゥーリア。だが70人もの幽霊にタダ飯を食わせる理由などナバテアにはない。

そうして所属を失った彼らは使い捨ての犯罪奴隷としてこの山に連れて来られたのだ。


この山は魔のベルト地帯に面した危険な山。封印が緩み魔獣の出現するここは、いくら資源が豊富だからと言って無暗に入り込めば誰一人生きては戻れない。これは実質死刑宣告も同じ…


「でも呪印が刻まれてなかったのは幸いだったよ」


「だが代わりにこのアダマンタイトの首枷がある…。これは我々をこの採掘場から決して出さない為の枷だ。教えてやろう。この山には幾つもの亡骸がある。それは…逃げ出そうとした者の末路だ!くそっ!」


「枷か…、どれどれ…。あ、これなら物理でいける」

「それはどういう意味…、いや、それより助けに来たと言ったが本当だろうか」


「勿論本当だよ。でもあなたたちが戦争捕虜であった以上、助けるのにも条件がある」


他国の戦争にうっかり介入するわけにはいかないからね。安易に手や口を出してクラレンス、ましてやウエストエンドに飛び火でもしたら大事だ。


僕は彼らのおかれた状況を冷静に話して聞かせた。残念ながら彼らに僕以外の救援は現れないだろうっていう残酷な事実を。


彼らは母国に見捨てられ、そしてナバテア帝国からも捨てられ、奇跡的に戻れたところで母国は彼らを受け入れはしないだろう。むしろ口封じさえあり得るのだ。彼らにもう帰る場所など在りはしない。


そのうえこの山にはカトブレパスみたいな魔獣が普通に封印を超えてくるのだ。

誰が好き好んで助けになんてくるもんか。犯罪奴隷、もとい戦争捕虜なんかのために。


「でも良いこともある。誰も来ないって事はあっさり君たちを死人に出来るって事だよ。君たちはここで死んで、そしてウエストエンドで生き返る。まったくの別人としてね。だけどウエストエンドから出てはいけない」


「何故…?」


「君たちは正式ルートの移民じゃない。生きてるのがバレたら僕は脱走した罪人を匿った事になる」


当主たる僕が共犯の汚名はかぶれない。


「ならば…全てを捨てろという事か。名前も地位も、祖国に残してきた家族ですらも…」

「言っておくけどここに居たって万に一つも希望は無いよ。それでも信じて救助を待つって言うなら好きにしたらいい。強制はしない」

「それは…」


「政治のからむ国と国の話に何の義理も恩もない一私人を介入させるなら君たちにだって覚悟は必要だと思うけど?」


隊長はしばし逡巡、部下はその様子を固唾を飲んで見守っている。

そしてしばらくのち…


「どうせ死ぬなら最期の賭けに出るのも一興か…。皆、私は彼の条件をのむ。だが強いたりはすまい。各々自分で選ぶがいい」



誰だってこんなところで死ぬのは嫌だろう…。彼らは苦汁を飲んで、その坑道に名前も立場も、そして祖国も、全て置いて行くことを決めたのだ。






毎日更新を目指しています。

お星さまをぽちっとしていただけると大変大変嬉しいです。作者の励みでございます(;^ω^)


この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)

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