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30 13歳 in ナバテアの山中

アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。


『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。


「で?秘策ってのはなんだ。こんな時間に山中で一体何をする」

「その前にヴォルフは獣化して。そっちの方が強いんでしょ?」

「これでいいか。それでどうする?」


「えーとね、こうするんだy」

「イソヒヨドリ。こんなところで何してるの…」


あっちゃぁ…しまった。見つかった…

今まさにナバテアを目指さんとしていた僕とヴォルフ。その目の前に現れたのは、暗闇散歩を楽しんでいたシャリムだった。


「シャリム…。あの~、え~と、その…」

「どこかへ行くの…?僕も行く…。連れて行って…」

「あのね、遊びに行くわけじゃないんだ。僕達が行こうとしてるのは凄く危険な場所で」

「…いやだ…行く…」


かいつまんで要点を説明したけどシャリムは納得しない。むしろ「自分は夜目が効くから役に立つ」と言い出す始末だ。

比較的仲のいいヴォルフが言っても全然だめ…


う~ん…でもこのままじゃ埒が明かない。知られた以上、日を改めても同じことだろうな…しょうがない。


「分かった。その代わりじっとしてて、って言ったらじっとしてて。いい?約束できる?」

「出来る…」

「OK。じゃぁ今度こそ行こうか。『ディグジアース!』」


『ディグジアース』とは本来地中に穴を掘って敵を土中に埋める魔法なのだが、僕のフルカンスト、また200の魔力量を持ってすれば…、そこに現れたのは深い深い地中にどこまでも続く長ーーーい一本道。



「相変わらず普通じゃ無いな…。これがナバテアまで続いてるのか?」

「そうそう」

「だからって一夜じゃとても行けないだろう?」


「だから次はこれ。『ワープゲート』。さ、シャリム僕に捕まって」

「うん…」ギュゥゥ…


「ぐ、ぐえ…」


次の瞬間、僕とシャリムを乗せたヴォルフは一瞬にしてナバテアの山中、いや、その土中へと到着した。

とは言え、二人は土中だからここがナバテアとは気付いてないけ…おや?気が付いている…だと?


「瘴気が濃い。ウエストエンドとは空気が違う」

「闇の中に血の匂いがする…」


あー、そうですか。


「じゃぁその嗅覚で獣人の居場所を特定してよ。特にヴォルフはドンキーさんの匂いとか…覚えてるでしょ?」


スン…スン…


ちょ、ヴォルフ…ぐっかわ…


「駄目だ、瘴気が強すぎる。くそっ!」


「見つけた…、こっちだよ…」

「えっ!なんでシャリムが先に見つけてん⁉」


「闇の中に獣の気配がする…でも…魔獣もいる…」

「い、急ごう!」



そこからの移動は『テレポーター』だ。短距離ならこっちの方が小回りが利く。

因みに何故地中で移動をしたか…。それはまさにこんな事態、転移した先に魔獣が居たら不味いからだ。それに見つけた獣人たちを隠す場所も必要だし。


それにしても…、シャリムの夜目は…夜目であって夜目ではないのかも知れない。

ゲスマンの特殊能力…?聞いたこと無いなぁ?なんだろ。でも今は目の前に集中あるのみ!



濃い瘴気の中、そこに居たのは一人のバイソン!いやバッファロー?どっちだ!

そんなこたぁどうでもいい。彼は今まさに大型の魔獣と対峙している。

そしてその魔獣とは…カトブレパス…!上位種じゃないか!


「目を見ちゃダメだ!カトブレパスの邪視は石化する!

「なに!」

「ダメだ間に合わない!『ストーンウォール!』」


ズズ…ン!ゴッ!ガッ!


間一髪で奴の邪視は石の壁によって遮られる。けれど物理の力までは遮れない!

遅かれ早かれか!


「ヴォルフ!もう一体他のが居る!彼とシャリムを守って!そっちは任せた!」

「よし!」

「カトブレパス!お前の相手は僕だ!『シャイニング!』」


小さな光の球体は奴の身体で爆発する。でもそれだけじゃない。この光は視を奪う!これで奴は邪視を放てない!


…待てよ…?カトブレパスってヌーみたいな魔獣じゃなかったっけ?


魔獣は種別によっては十分食料になる。ただこれほどの高位魔獣は簡単に捕まえられないってだけで。ヌー…、ウシ科だよねあれ…。美味しいのかな…?


「よーし!物理攻撃だ!出でよ!ハルバード!」


なーんちゃってね。マジックバックからズズッと引き出すんだけど。スイマセン、言って見たかっただけです…



数分後…


フルカンストフルスキルの前に魔獣は無力だ…。奴はあっさりと明日の食材へとなり果てた。


「そっちはどう?倒せたみたいだね」


「まぁな。ティンダロスの小さい個体だ。あれくらいならお前のシールドで護られた俺の敵じゃない」

「小さいったってティンダロスでしょ?恐ろしい猟犬型の魔獣じゃない。ケガはない?」


「無い。それよりカトブレパスを相手によくも…相変わらず滅茶苦茶だな、お前は」

「あー、ほらだって僕、狂魔力の継承者だから。えへ☆」


「凄い…、とても美しい戦いだった…特にハルバードを出した時…」

「…あ、うん…」


そこは言わなくていいから…


その時、状況を把握したバイソンがようやくヴォルフに気付いたようだ。


「お前は…ヴォルフ!ヴォルフなのか!一体どうやってここに来た!」

「助けに来たんだお前たちを。さあ案内しろ。残りの仲間はどこだ」



闇の中で息をのむ獣人たち。それが仲間のバイソンだと分かり安堵の息を漏らす。


そこに居たのは前キングのゴリラに妙にマッチョなカンガルー、それから…その耳!そのエイひれみたいな耳は…象さんだな!


おいおい…、採掘させる気満々じゃないか。パワー系ばかりを集めたのか。

確かに魔石はとても硬くて、重機もないこの世界じゃ普通の人力じゃ簡単に掘り起こしたり出来ないけど。


「ここに居るのが全員?」

「あ、ああ」

「とにかく地下に潜ろう。また別の魔獣が現れても面倒だ」


薄暗い地下道。だがここは今の彼らにとって久々に力の抜ける安息の地だ。


聞けば連れてこられた獣人は当初八人居たんだそうだ。けど、ポーションすら間に合わない致命傷を負い、一人づつその頭数は減っていったって…。もっと早く来れてれば…くそっ!


「そんな顔するな。こうして来てくれただけで十分だ」

「そうだとも。我々はまさか助けが来るなどと考えたことも無かったんだぞ」


「そうだね。過ぎたことを悔やんでも仕方ない。さぁ解呪をしよう!」



隷属で縛られた彼らが定刻に戻らなければ奴らは魔獣に殺られたとそう思うだろう。どうせただの人間である帝国軍人がこんな魔獣のでる樹海に捜索なんか来ないんだから。


今日も聖乙女は彼らを憐れんでいっぱい涙を流してくれた。いつも泣かせちゃって…ごめんね。



「イソヒヨドリ…」

「どうしたのシャリム?」


「何処かの闇で人が蠢いてる…。大勢…」

「それって…、まさか軍隊?」

「知らない…。地中に居る。違う、地中じゃない。けど埋まってる…」

「地中じゃないけど埋まってる…」

「狭い暗闇に大勢いる…」


狭い…暗闇…地中じゃないのに埋まって…、それってもしや…


「ドンキーさん、ここの他にも採掘場って近くにあるの?」

「ああ。樹海から少し離れたところに小さな魔石の採掘場がある」

「そこにはもしかして普通の人が…?」

「あそこは犯罪奴隷の強制労働場だ」


間違いない。落盤事故だ。


「ヴォルフ。地下道を通って先に進んでて。ここで待ってても良いけど出来たら早く離れたい」

「お前はどうする」


「決まってる。助けに行くよ」

「事故と決まったわけじゃないだろうが!」

「それならそうで確認する。じゃなきゃ落ち着かない!」


「レジナルド!」

「すぐに追っかけるよ!心配要らない。なんたって僕は」

「『狂魔力の継承者』か…。どうせ止めても聞かないんだろう…シャリム!」

「なに…」


「何かあったら身を挺してあいつを守れ!分かったな!」



あ、シャリムは一緒に来る前提なんだ…





毎日更新を目指しています。

お星さまをぽちっとしていただけると大変大変嬉しいです。作者の励みでございます(;^ω^)


この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)

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