21 12歳 in 独房
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
「支配人、彼は昨日表の店に居た子だろう?何故ここに?」
「ああ。こいつは借金持ちの母親を最近亡くしましてね。ところがその母親ときたら主家で盗みまで働いたって話でして…、それでまぁ…主家のほうで色々とこう…すったもんだありまして売られて来たっていう…、ついてない奴ですよ」
「彼は何もしてないのに?」
「それは我々には関係無い話でして。そうは言っても私も鬼じゃないんでね。どうせ買い手は決まってるってんで、引き渡しまで温情をかけて表に置いてやってたんですがね、どうにも手がかかるんで躾直しにつれてきたって訳でして」
「彼はとても大人しい様子に見えるんだけど…」
「逆らわない代わりに飯も食わないんですよ。餓死でもされちゃぁ困るんでね」
躾直しだと?ヘドが出るな…
「店主、彼と話したい。少し二人にしてもらえるだろうか」
「え?いやぁ坊ちゃんそれは…」
「レジー様。危険ではございませんか?」
「隷属印がかかってるんでしょう?なら世界で一番安心じゃない」
大金貨の山を受け取った後では多少の無理も聞くしかないだろう。店主は渋々だが僕をここにおいて、マラジーとダノワを連れて獣人族の移動に行った。
昨日見かけただけの少年…。だけどどうしても話してみたかった。
前世で飼ってたフクロウ、クーと同じオレンジ色の瞳の彼。どうにも気になる少年。だって色々と腑に落ちない。
支配人の言い草じゃ最初から買い手が決まってたみたいじゃないか?それに親の罪だって…?この国では子供が肩代わりするっての?いや無いだろ。
仮に百歩譲ったとしても罪と罰のバランスが合ってない!表の犯罪奴隷より酷い闇奴隷商に堕とすだって?
あの口ぶり…色々とモヤる…
…整った顔立ちの年若い少年。…こんなところで隷属印を刻まれてどんな目に合うのかなんて…相場は決まってる。
表じゃなく裏に売られた理由…、そんなの一つしかないじゃないか。胸糞悪い…
「印を刻まれても話は出来るよね?」
「……」
「名前は?」
「シャリム…」
「じゃあシャリム。君の母親は本当に盗みを働いたの?」
「…違う…」
「嵌められたんだね。君を奴隷におとすために…」
言葉の少ない彼は多くを語らない。そのほとんどが僕の示した推測にイエスかノーを答えるだけ。
その間も常に彼の目は薄暗い空を見つめ続ける。それでもなんとかその切れ切れの言葉を繋いで見えてきた事実とはこうだ。
彼の母親はある大富豪のもとで働く借金奴隷だった。
その女性はある日主人の毒牙にかかり、そうして出来たのが彼だという。
富豪の妻はとても嫉妬深く、夫の子を身ごもった彼女をがれき置き場の地下へと追いやった。
「僕はそこで生まれた…」
「酷いな…」
それでもなんとか出産を終えた彼女は、幼い彼に繰り返し何度もこう言い聞かせたそうだ。
大きな声を出さない事。主人とその妻の目につかない事。そして決して地下から出ない事。
「食事とかは貰えたの?」
「…」フルフル
「じゃぁどうやってこの歳まで…、あ…お母さんの食事を分け合って?」
「…」コクリ
「二人でだと足りないでしょう?」
「母さんには時々主人が菓子を…」
主人が菓子…。その意味を考えるだけで気分が悪い。
恐らく母親の死因は過酷な日々と栄養失調による衰弱死だろう…。…可哀そうに…。目の前の彼だってガリガリじゃないか…
「母さんに似た僕を…主人は…」
「それを見て嫉妬深い妻が君を罠に嵌めたんだね。お母さんが何を盗んだって言って来たの?」
「本…」
「本を…?」
「母さんがどこからか…。一冊づつ…。読み終わるとまた別の本を…」
「読み書きはお母さんが?」
「…」コクリ
何となく見えてきた気がする。
母さんに似た僕。つまり彼の母親もまた整った顔だちの人だったんだろう。
この識字率の低いゲスマン皇国において読み書きのできる女性。きっと本当なら借金奴隷になるような人では無いんだろう。
そうなってくると彼女の借金というのも怪しいもんだ…裏がある気がする。今となってはもう真実を聞くことはできないけれど…
「なんて汚い…」
「どうでもいい…。僕も…主人も…、…全部滅びればいいっ!うあぁ!」
「もう黙って…『ヒール』」
真っ赤な流血、〝奴隷の怒り”か。けれどこれは怒りと言うより絶望だ。
「大丈夫。大丈夫だよシャリム。…あと少しの辛抱だ。君は僕が連れていく」
始めて見せた彼の激高。でもそれに続く言葉によって今度は僕自身が激高することになった。
「無理…。僕の買い主はも…決まって…富豪の主人…彼はどこかで…僕を飼うつもり…」
ここにも居たよ!まったくどいつもこいつも!
エロジジイは万国共通かっての!!!
ドカドカドカ バン!
「ど、どうされた坊ちゃま!」
「店主!あの少年は僕が買う!言い値はいくらだ!倍でも三倍でも払ってやる!」
「坊ちゃま…。先ほど言ったようにあの子供にはもう買い手がついておりまして…、こうしてほら、売買契約もすでに交しておるのです。非常に残念なことですが…」
「へぇ?やり手の奴隷商がこんな商機をみすみす逃すって?」
「やり手なればこそ、顧客からの信頼は大切なのです」
「ふぅん?じゃあ直接話す。そいつを呼んで」
「ですが…」
ええい、まどろっこしい!
「僕のもう一つの名を教えていなかったね。僕はクラレンス王国ランカスター公爵家の第一子、狂魔力の後継者だ!」
「な、なに!」
「目の前で見せてやろうかその威力を!店ごと吹き飛ばされたくなければすぐに呼べ!」
毎日更新を目指しています。
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




