番外 in 帆船
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
電波塔建設予定地の視察も終え、ようやく今回のメインイベントであるクルージングをする日だ。
クルージングと言ってもレイジタウンの港からお隣エトゥーリアの北側に位置する港まで、たった二日足らずの船旅なんだけどね。
このエトゥーリア入りに際し、僕はシュバルツとビルさんを同行するつもりで『ワープゲート』を起動した。
エトゥーリアへの同行については一応事前に了解済だが、シュバルツは母国での滞在先が気になったようだ。
シュバルツはクラレンスに大使として領地替えする際、エトゥーリア国内の屋敷は全て手放している。
全てを捨てて一からやり直したい、そう言って。先祖代々伝わる歴史ある屋敷をあっさり手放す潔さこそがまさにシュバルツっていう感じ。ちょっと男前。
そんな訳なので彼にはエトゥーリア王都での別邸として、テラス型タウンハウスを用意しておいた。ふっ、僕のポケットマネーでね。
テラス型とは言っても敷地内には馬車用の路地と馬小屋、パテオまで完備されていて、地下から地上三階まで、全部で5LDK、他1遊戯室4倉庫2使用人部屋付きの豪華さである。クローゼットもパンパンにしといたし…気に入ってくれるかな?
「さあ、ここから二日間船に乗ってエトゥーリア入りするよ」
「…わしがエトゥーリアを訪れる日がくるとはな…」
「ビルさんはエトゥーリアに行ってみたいって言ってましたよね」
「わしらドワーフと子を生した人間の女…、その子孫がエトゥーリア人だからな」
感慨深げなビルさん。彼はドワーフに伝わる古い文献で読んだエトゥーリアに少しばかり憧れがあるのだ。
が!もしかしたら憧れはロマンスのほうかもしれない…
なんにせよ普通なら他者を警戒するドワーフたちだが、ビルさんはあの偏屈王ビフさんを弟に持った苦労人だ。他のドワーフに比べてかなり許容範囲が広がっているのは間違いない。ぜひ初めてのエトゥーリア旅行を楽しんでいただきたい。
「なんだシュバルツ、グリージオは一緒じゃないのか」
「ヴォルフ殿…、グリージオはフィンほど成長が早くは無いのだよ。まだ満足に歩けはしないし食事も柔らかいものしか食せないのだ。まだ船旅は…」
「フィンが残念がる」
「ふふ、クーデンホーフでまたお待ちしよう」
気が付いたらパパトークを展開するヴォルフとシュバルツ。この二人には今までと違う連帯感が生まれているようだ。
「おいフィン、二日前の灯台みたいにチョロチョロすんじゃねぇぞ。海の上はあぶねぇ、分かったか」
「ラジャ!」
「よし。いい返事だ」
さすが孤児たちをまとめあげてたアーニー。子供慣れしている。
「フィンは軽いから海鳥に捕まる…」
「そうならないように、シャリム、頼んだよ」
「頼まれた…」
サクっと闇魔法がリード代わりにフィンをつかまえる。フィンはそれが嫌で大暴れだ。
「やー!もうやー!はなせシャル!ぷぎゃ!」
お口の悪さに鼻の先っぽをひとつまみ。
「放してください、でしょ。ヴォルフ!フィンの前で乱暴な言葉使いしないでね!教育に悪い!これでも公爵子息だよ」
「…知るか…」
と言いつつバツの悪い顔。
そりゃあね、ウエストエンドのご嫡男様がガキ大将みたいな言葉使いじゃちょっと困る。大体フィンのお行儀が悪いと僕がジェイコブに叱られるんだから。
そうこうしている間に、船は汽笛をあげてとうとう大海原へと出航した。
「しゅごい!ママ!うみしゅごい!」
「そうだねすごいねー」
「フィンおよぐ!」
「…それはどうかな」
…フィンの成長速度がコワい…
「すげー、本当に海の上だ…」
「しぶきが塩っ辛い…スゴイ…」
「巨大な造形が浮いて動いておる…凄いことだ」
はい、凄いの連続コールいただきました!
反応がいちいち微笑ましい。なんかひげ面のずんぐりむっくりが一人混ざってるけど。
「はー、良い風。気持ちいい…」
「イソヒヨドリ、あれは?」
「カモメだよ。…そう言えばシャリムはニコと海上飛んだよね」
「海の底にある島しか覚えてない…」
「あ…いっぱいいっぱいだったかな」
「ニコがいっぱい助けてくれた…」
「おいレジナルド、シャリムにあまり無茶させるな。こいつはお前の為なら何でもする。分かってるだろうが」
「ご、ごめん…」
さっきのリベンジかな?デッキでシュバルツとほろ酔い気分のヴォルフがここぞとばかりに。けど自覚がある。素直に反省しよう。
「平和な海だ。数年前には考えられなかったことだ」
「色々あったけど結果オーライってね。そうだ、エトゥーリアで夜会に出席するって?」
「友人から招待状を貰っていたのでね。ほら、わが家の家宝を買い叩いた…」
「ああ!仲直りしたんだ?」
「…エトゥーリア入りするなら丁度良い機会だ…」
確かにあの男はセコくてケチかもしれない。だけど困るカールに一応手を差し伸べたのにかわりはないし、パウルを弱みに付け込んだ下衆から助けた人物でもある。
ここは例え一人でも友人関係を戻す気になった、シュバルツの大きな変化に対し素直に喜ぶべきなんだろう。
「レジナルド、夜会に付き合ってもらえると嬉しいのだが…」
「いいよ。でもちょっとだけね。フィンが待ってるから長居はしないよ?」
「無論だ」
来年の今頃はグリージオも一緒にこれると良いな。
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




