番外 goto レイジタウン
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
さてさて、パパ兼護衛のヴォルフ、通訳のシャリムと子守のウィル、そして現場監督のアーニーを引き連れてやって来たのはレイジタウン。因縁のあの地だ。
因縁…と言ったところでその名残はどこにもない。一度真っ白なマップとなったここは僕のシーワールドとしてすでに一から構築されている。
アルバートに管理運営を丸投げしたここは、都市計画、そして設計建築だけをお値打ち価格で請け負ったのだが…なかなかいい感じの港町が出来上がりつつあるんじゃないだろうか。これは決して自己満ではない。
「ほら見てごらん、立派な門でしょ」
「ウエストエンドの領門とはかなり違うんだな」
「ここは観光用だからね。金の装飾がキレイでしょ」
ウエストエンドの南北にある領門、通称『審判の門』はインドゲートを参考にした非常にシンプルな作りだ。なにしろ更地のウエストエンドにいきなり立ち上げた立ち入り禁止の門だけに、当時装飾に凝るという発想が無かったのだ。
だがゲスマンのテロ事件後、有志によって白狼を横に従えた僕が肩に黒猫を、そして右腕に梟をのせ門の頭上に設置された時には思わず膝から崩れ落ちた…。いや、せめて一言本人に聞こうよ…
それは置いとくとして、トラキア、そしてエトゥーリアからの出入りには非常に大きくて豪華な門をくぐる仕様だ。
ここはポーランドにある黄金の門からデザインをパクった、通行税を徴収するためのいわゆる関所である。
レイジタウンでは関所すらも観光名所にしてしまおうってわけだ。
そこから真っすぐに伸びた、街の中心となる大通りの両サイドにはセザールが思う存分意匠にこった美しい建物が立ち並んでいる。
色目は揃えてアンバー、ブラウン、ベージュ、アイボリー。
ルネッサーンス溢れる建物群はまだ建築中だったりするが、その先には大きな広場があり、中央には噴水を設け、噴水の真ん中では海の神様、ポセイドンの像が凛々しく雄々しく三叉槍を空に掲げて水しぶきを上げている。
自分で言うのもなんだが渾身の作だ。…発注しただけだけど。
「この広場はね、業者向けの朝市が一足先に開かれてるんだよ」
「へぇ?クラレンスに運ぶのか?」
「クラレンスに吸収された元トラキア部分にね。馬車列車の王都駅にも卸してくれてる」
「トラキア…キレイな丸い神殿がいっぱいあった…」
「モスクね。ああ、シャリム魅入ってたっけ。でももうあまり残って無いよ。僕が運んじゃったから」
「…はぁーザラキエルが怖い…ね。それで領土を捨てるとか…理解出来ねぇな」
全く以って同感だ。僕にも意味が分からない…
その疑問に答えたのは意外にもシャリム。
もとゲスマンの民だったシャリムは、地下に居たとは言え母親のおかげでゲスマンやトラキアの文化や背景には一定の知識がある。
「ゲスマンとトラキアは同じ神様を信仰してる…。『マリク』死の天使のエトゥーリア名がザラキエル…」
「へー?」
シャリム曰く、死の天使『マリク』はその昔一夜にして国を壊滅させ、何万もの命を一瞬で奪ったのだとか。
「だからみんな怖がる…」
「どこかで聞いた話だな…」
「!」
…これってもしかしたら過去の狂魔力さんのこと?クラレンス王都を壊滅させたって言う…?あの有名な?
若干話がデカくなっているが、時間とともに盛られる事など往々にしてあることだし、ゲスマン王家も200年かけて狂魔力対策してたんじゃなかったっけ?あ、あれ?
…僕には関係ない話だ…。
とにかくトラキアは東の果てに逃げたゲスマンとクラレンスの辺境領に挟まれた小さな未開地に相も変わらず中立国として新たな国を興した。
これはクラレンス王からの提案だ。つまりその…、万が一(多分無いだろうけど)に備え対ゲスマンの盾になれってことだね。
その代わりクラレンス王国からは民族大移動にかかる経費に対し多額の支援金を得ているし、建築インフラに関しては僕も協力を惜しまなかった。つまりモスクを含めた大切なモノは大魔法で運んで差上げたってことね。これはある意味広義のM&Aと言えるだろう。
ゲスマン、ナバテアに挟まれ、それでも比較的温厚かつ友好的だった彼らのうち、ザラキエルを恐れない一部のトラキア民はそのまま自由民として現地に残った。
その彼らをも受け入れ、元々農業国だったトラキアはクラレンス王国の一部として独特の文化を築き始めている。そんなわけでいくつかの貴族家が領地替えと称し既に元トラキアの地へ入ったとも聞いている。
そんな話をしながら街中をブラブラと見て歩く。明日の朝市が楽しみでしょうがない。シャリムは起きないだろうから早起きのアーニーを誘って見にこようかな。フィンはヴォルフに任せて。
広場を突っ切り更に進むと突き当りが僕のお目当て、港である。
ここもいわゆる海水浴リゾート系ではないが、岩場の多いエトゥーリア港と違い更地から観光名所を意識し構築しただけあって、美しいマリーナがあり、海岸沿いに遊歩道を備え、洒落た店が並び、通り沿いには外観の良いリゾートホテルが何棟も建築中で、まさに映えスポットとも言うべき整えられた景観を誇っている。
そのマリーナから少し離れた商港には漁に出る漁船の他に、遊覧船、そして海路を利用してクラレンスの辺境地にも海魚を流通できるよう大型商船を造船中である。
これらの建築事業、造船事業は多くの雇用を生み出し、アルバートの進める貧民政策に一役買っている。
それだけでなく、出店やホテルの多くは商機とみた参入業者によるもの。彼らは熾烈な企画入札を経てこの大きな仕事を勝ち取ったのだ。おめでとう。勝者にはバラ色の未来を約束しよう。
僕たちは海産物に舌づつ、…じゃなくて仕上がりつつあるレイジタウンの進捗を視察しがてら電波塔建築の為の下見にやってきたのだが、レイジタウンを皮切りにその後エトゥーリア、ウルグレイス、最後エンマとまわっていく予定である。
「ここが僕たちの宿泊する官舎だよ」
「港沿いのホテルに泊まるんじゃねぇのか」
「あそこはまだ完成してないの。役人が常駐するここだけは真っ先に完成させたんだよ。ちゃんと僕の部屋も用意してあるから問題なく宿泊できる」
「海行きたい…」
「荷物置いたら行こうね」
「うみー!」
「だ、だめですよフィン様!」
「危険な予感…、ヴォルフ、フィンから絶対目離さないでね!」
「当然だ」
現在フィンは絶賛暴れん坊期に移行中である。ヴォルフの血を引くフィンは誰よりも体幹が良く、一歳に満たないのにすっかり走り回る。
でもルカやラシエール、グリージオも順調に生後半年程度の成長中。はいはいをはじめ、あーうー程度の喃語を話し始めている。
ハーフのフィンとハイエルフのエルウィンがおかしいんだって…
毎日更新を目指しています。
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




