158 18歳 First phase ドワーフの国
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
どうやらビルとビフは双子のドワーフで(そもそも人間と同じように生まれるかどうかも不明だが…)、ビフと呼ばれた怒りんぼうが弟で、ビルと呼ばれた話の通じる方がお兄さんだ。
お兄さんであるビルから提案を受け、僕たちはそのまま彼らの家に泊まることにした。
意外な展開…
けど日が暮れかかるこの時間から子供の僕(そう見えるらしい)を山には入れられないと彼が主張するので、ご厚意に甘えることにしたのだ。
「こんな得体の知れん奴らを泊めるとはな!ビル!お前はとんだお人好しだ!」
「ビフ、お前は何にでも噛みつく癖を止めんか。その調子でお前が誰彼構わずケンカを売るからわしらはこんな外れに追いやられているんだぞ!」
「あれは村の不器用者どもがわしの言うように仕事をせんから悪いのだ!」
「ビフ、お前が非凡なのは兄弟であるわしが一番分かっておるわい。だが誰もがお前のようには出来ん、それも仕方ないこと、そうは思わんのか!」
「ふん!せいせいしたわい!」
大体理解した。
つまりこの怒りん坊は偏屈なドワーフの中でも際立って偏屈な質で、仲間と上手くいかずにハブられた、ってとこか。
そしてお兄さんのビルはそんな弟を放っておけずについて来た、と。
ここは急勾配を登り切った辺りから、恐らくは村に向かうんであろう道から細い側道へと分け入った先にある、ひっそりと建つ丸太小屋であり隣には小さな鍛冶場が隣接されている。
このドワーフの国は厳密に、と言う訳ではないが基本的には余所者に対しかなり閉鎖的である。
必需品の仕入れや製作した武器や魔道具の卸といった事でさえ、村の係が月に一度、近隣の集落まで足を運んで定期的にやってくるキャラバンと取引するのが普通だとか。
そんな閉鎖的な国にあってさらに閉鎖空間で暮らす二人。
そこにいきなりお邪魔した荷物も持たない人間二人とデカい狼。そして我関せずと草をムシャムシャする呑気なヤク…
確かに何処から見ても不審者以外の何者でもない。
「まずはこれを飲め」
「何だこりゃ?言っとくけど俺はこう見えて味にはうるさ」バシィ!
「あーごめんなさい。この子ってばいつも口が悪くて。ありがとう。いただきます!」
「痛てぇな…」
「馬鹿かお前は」
アーニーと旅する時にはハリセンを持参しようかと考えた瞬間だった。
「それで子供がこんなところまで何しに来た。道にでも迷ったのか?」
「えっと…、まず初めに僕とアーニーは成人した大人です」
「こっちの黒いのはそうだろうが…お前さんは違うだろうに」
「童顔ですがこう見えて成人です。そんなことは置いといて…、僕達はあなた方ドワーフに仕事を依頼したくてここまでやってきました。遠路はるばる」
「それならば橋向こうのキャラバンを通せ!話は終わりだ!帰れ!」
「黙らんかビフ!いいか、今夜は泊めてやる。だが明日には出ていけ。我らドワーフは余所者と慣れ合わん。村に連れて行ったところで同じ事だ」
にべも無し…
「いや待てよ…。そっちの…ビフって言ったか」
「何じゃ!」
「どうやらお前は腕のいい職人ってとこか。分かるぜ。うちにもお前みたいなやつは大勢居る。完璧主義で融通がきかねぇ、へそ曲がりの大工がな」
「何のことだ」
「お前腕には自信があるんだな?じゃあこれをどう思う」
口を挟んだアーニーが取り出したのは一枚の紙。
それは僕がカメラや電話を作ってもらうのに理論を書き出した、まだ設計図とも呼べないメモ書きである。
何故そんなこカメラや電話の仕組みをエンジニアでもない僕が知っているか…
実は何を隠そう中学受験の時に理科の科目で勉強したからである。まさか異世界で生かせる日がくるなんて夢にも思わなかったけど。
「…なかなか難解な魔道具だな…」
「職人心をくすぐられるだろ?」
おおっ!
思った通りだ。職人肌のドワーフとアーニーは上手くやると思ったんだよね。僕ってはグッジョブ!
「ビフ、ここはどうなると思う」
「ここに魔石を配置してはどうだビル」
「その…、具現化の方法についてはお任せしたいと思っています。何とかなりそうですか?」
「まあな。だがここでは無理だ。こんな山奥の小さな鍛冶場しかない掘っ立て小屋じゃあ何もかもが足りん」
「素材のこと?」
「いいや。道具類も含めてだ。大きな工具などは村のでかい工場に置いてあっての、必要に応じて皆で使う」
「え?じゃあお二人は…」
「今わしらは剣先を専門に作っておる。それならあの鍛冶場で十分だからな。興味深い仕事だがこれは村で頼むがいい」
「だがそれだけの魔道具となると、相当高濃度の魔石が必要になるな…」
「どのみち貴重な魔石を使うのにお前たちばかりを優先は出来んだろうよ。付き合いの長い取引先もあるんでな」
ふっふっふっ、そう来ると思ってたよ。でも大丈夫、抜かりは無い。
何故ならベルト地帯に隣接しているウエストエンドの西山には、封印前に瘴気を浴びて出来上がっていた未採掘の魔石、それも相当濃度の高いのがゴロゴロしているからだ。
それらの石は、山のパトロール部隊である獣人さんによって全て採取し保管され、その量すでに前世の一軒家(5LDK)が埋まるくらいに達している。
それでも足りなければ僕が直接採りに行ってもいい。ベルト地帯内部まで。
え?魔石を売り物にしないのかって?
しないよ。必要ない。
何故なら科学技術(この場合魔道具ね)の発達しすぎた国に僕は美学を感じない。クラレンスに強力な魔法の力がある以上、魔道具に頼るのはほどほどがいいんじゃないかと、僕はそう思う。
けれど電話とカメラは別の話だ。
三か国が繋がりますます流通や国交が密になった今、タイムラグの無い通信手段は必要である。じゃないと何かにつけ呼び出される…面倒な。
それに何より僕の住環境…
あの右を向いても左を向いてもケモ耳に囲まれたウエストエンドに居て、その姿を脳裏にしか刻めないなんて…、辛すぎる!あ…涙が…
「そうか…。お前の国にはそれほどの魔石が…。それならば可能かもしれんな」
「ここまでどうやって運ぶ?少しばかりでは話にならんぞ。何度も試作が必要になるだろうからな」
「それなんですけど…、いつ完成するとも分からないのにその都度魔石を運ぶのは非効率的です。それに何かあった時に理論を知る僕と都度議論出来ないのも痛い…」
「ふむ」
よし!話を聞く姿勢は出来上がった。ここからが勝負だ!
「出来たら僕の領地、正確には身内の領に来ていただきたい。移住してその開発に従事して欲しい。そう思ってます」
「何だと!」
「あり得ん!」
思った通りの反応…
「僕の領には魔石の他にも希少な鉱石がいくらでもあります。ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンまで」
アーニー、びっくりすんな!だがドワーフ兄弟は揺れている!
「そして鍛冶場から溶接場、焼き窯まで完備した完璧な工房の準備も進めているところです。他に足りないものがあれば何でも用意します。いかがでしょうか?」
しばしの間。
「…明日村長に会わせよう…。何と言うかは分からんがな」
第一関門…突破?
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




