156 18歳 on 国境の橋
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
ここで少し説明しよう。
白い肌と長い金の髪を持ち、自然を司り自然と共存するのが不老長命の妖精エルフだ。
気難しいところはあれど基本陽気なエルフと違い、彼らドワーフはかなり扱い辛い、けれどかなり人間寄りの亜人種である。
二百年から三百年ほどの寿命を持ち、ずんぐりむっくりした体型と髭面がチャームポイントな頑固者。それがこの世界のドワーフ族だ。
ごく一般的な鍛冶や工芸品のみならず、武具や魔道具造りにも長けたプロフェッショナルの集まり、それが今から行こうとしているドワーフの国である。
彼らは口数の少ない偏屈者が多く、どちらかと言うと人嫌い、というのが広く知られる特徴であり、そのため他種族と交わらず非常に閉鎖的な暮らしをしていると聞く。
けれど時折山を越え、近隣小国へ武具や魔道具を売りに行ってお金を稼ぎ、代わりにキャラバンから塩や砂糖、自分たちでは賄えない何某かを仕入れて帰ることがあるという。
と言う事はだ。全く〝寄るな触るな近づくな!”って言う訳でもないのだろう。
そんな彼らが住むのは岩場の多い山間部。そこでは鍛冶資材となる魔石を含めた鉱石が採れるから…と言う話だ。
その山間部とはエトゥーリアからさらに南に進んだ奥地である。
エトゥーリアの南向こうに大国はない。と言うか、ゲーム内に存在しなかった以上、その存在は曖昧である。
そんな名前も無いような境界線さえ曖昧な小国…小国?…集落が、山間を縫って幾つもあるというのが、クラレンスの世界地図で確認できた精一杯である。
エルダーから聞いた話では、彼らの住む国は人間の馬車でエトゥーリアから九十日ほど進んだ、そしてエルフの里からは百二十日ほど離れた位置だという。(なんちゅー表現)
エトゥーリアとウエストエンド間が、街道を整える以前はおよそ二~三か月ほどの距離だったことを考えるに、あの距離とどっこいどっこいでエルフの里からはかなり西ってことだろう。
その辺りにある鉱物の採れる山間部の中で、『その橋を超えるとそこに見えるのは急勾配』の描写に合った場所…。つまりそこは多分標高が高く、近くに川が流れているはずだ。
うん。これだけヒントがあれば後は僕のサーチとヴォルフの鼻でイケル気がする。
と思ったが…
「ふーやれやれ。四方八方山しかない」
「ドワーフの国だからな」
「結構高地まで来たよね?空気が薄い」
「澄んでるって言えよ」
「…アーニー、もしかして気に入った?」
「まあな。こういうのも悪くねぇ」
初めて見る光景に一人遊山気分でキョロキョロしながらビーフジャーキーをかじるアーニーが微笑ましい。
「じゃあ僕は鉱石をサーチするからヴォルフは人の匂いがしないか探してくれる?」
「いいだろう」
『ワープゲート』でやって来たここは、酪農で生計を立てる集落からさらに離れた、山…と言うより山岳地帯と言ったほうがピンとくる、木々と岩肌に囲まれたかなり硬派な場所である。
因みに今僕はヴォルフの背上で、アーニーはさっき捕まえた野生のヤクに騎乗している。
ヴォルフはエルフの里から戻って以来、日々獣の統率を可能にするため、こうして草食の大人しい動物から制御を試みている。
そのおかげでこうしてアーニーがヤクの背に乗れているわけだが、未だウサギなどの小動物しか完全な制御ができないヴォルフでは、このサイズだと時々命令を無視してアッチの方向に行ってしまうのがちょっとしたご愛敬だ。
「シュバルツの遠縁のご先祖は、牧草地のある小さな国から川沿いに海へ出ようとして、それでうっかり反対に進んでその山に迷い込んだんだって書いてあった」
「それがこの川か?」
「エトゥーリアからの距離、エルフの里からの距離、それにこのヤクを見かけた牧草地…それらを総合してこの川だと思うけど…、あとは橋さえあれば」
僕とヴォルフは力を総動員してさらにその場所を絞り込んでいく。
どれくらいウロウロしただろうか。
ヤクの背上で少しばかり動線を外れていたアーニー。彼は何かを発見したのだろう、少しばかり得意気な顔で戻ってくるなりある方向を指さした。
「その橋ってのはあれじゃないか?ほらその向こうだ。木々に隠れて見にくいけどな。ありゃ橋だろ」
「アーニーそうだよ!あれだ!間違いない!」
『ワープゲート』で到着してから苦節…半日。魔法で隠匿されていたエルフの里よりうんと早い発見。
…には違いないけど、これだけの下調べをして挑んだ捜索である。ヒントもあるし、もっと早く見つかるかと試算したのはとらぬ狸の何とやら、だ。
あー、疲れた。
「橋を渡ったその先を見てよ」
「急勾配だな…」
「ビンゴだ。取り合えず日が暮れるまでに人里へ出たいな…。さっさと橋を渡って山を抜けちゃおっか」
「そうだな。それがいい」
何も分からないアーニーは先行するヴォルフと後ろを警戒する僕に挟まれ黙ってヤクに身を任せている。
そうして橋の中央辺りに差し掛かった頃だろうか…
「この曲者が!余所者がわしらの里に何の用だ!」
言うが早いか、その男は威嚇のために小脇に抱えた何か筒状の武器を空に向けた。何だあれ!手筒花火?え?え?
ドドン!
「うわっ!」
その男の武器は威嚇用の空砲を打ち鳴らすモノ。言うなればエアーランチャー?
その山中に響き渡る大きな音に、一瞬とは言えその場にいた全員が度肝を抜かれた。
アーニーを乗せたまま混乱して暴れ出すヤク。それを見て舌打ちしたのはアーニーではなくヴォルフのほう。甘い!制御が甘いよ、ヴォルフ!まだまだだね。
決して広くはない橋の上で邪魔者を振り落とそうと暴れるヤクに、鞍も手綱もないアーニーはしがみつくのが精いっぱい。そして遂に…
「う、うわっ!」
「危ない!」
バランスを崩したアーニーはそのまま欄干から放り出された。驚いた僕は咄嗟にアーニーを追ってその橋から飛び降りていて…
冷静に考えれば、僕はこの地に着いた瞬間から常時シールドを展開している。アーニーに落下による怪我の心配はない。
けど考えるより先に身体が動くってこういう事。
異世界転生のきっかけになったあの運命の日もまさにそれ…!僕ってつくづく学習能力無いな…
ものは考えようである。どうせアーニーが一人でこの断崖を登ってくるのは至難の業。一緒に降りて魔法で浮かんだ方が手っ取り早い。うん、計画通り。
僕は自分自身にそう言い訳をしながら春の渓谷へとダイブした。
ヤクとヴォルフ、そして一人の厳ついドワーフを橋に残して…
毎日更新を目指しています。
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




